エレガントな毒の吐き方②(中野信子 日経BP社)
このような本に需要があるということは、日本中が難しい人間関係のなかに入っていることを露呈している。京都の上京中京の近所付き合いの処理は大変難しくてよそから入り込むことは至難の業と聞き及ぶ。その難しいところで用いられている技法が紹介されているのである。日本中の会社などが京都もどきに都市化されたということであるからこの本の売れることは日本社会にとって実は由々しき事態ではないのか。
どうやら日本人の心性は、地域共同体のような丸抱えしてくれる集団に属しているときに一番安心できて仕事のパーフォーマンスも宜しいようだ。知る人は少なくなったが昭和の会社などは、地域共同体もどきの作用を果たすように心がけたのである。社員運動会とか会社が行う祭りまであったところがある。人事異動は、社員全体の娯楽になって居てだれが出るか残るかでダービーみたいに賭けが行われていた。
こんなことではいけないと、最近会社などは仕事だけの場にしたのはいいが所属している人々は安心して所属したい欲求の持って行き場がなくなって困ることになる。さらにその今所属している集団から毒のある言葉を投げかけられて心がへこむことがあってはもう立ちいかなくなる。なんとか、あまり波風の立たぬ程度のそれでも十分に毒ある言葉を投げ返さねばならない。そんな人が爆増していることが、この本の売れる背景だろう。
今 会社に「単属」である人は都市部では女性を含んでほとんど全員である。その唯一単属している会社の中で、毒を吐かれたらどんな気分になるか会社などを経営しているヒトは、お考えになったことがおありだろうか。毒を吐かれた人は、対抗上毒を吐かねばならない、そのために従業員はこの本を買って読んで研究をせねばならない。そのために仕事の効率が悪くなっていることにお気づきだろうか。
今 私がジョージソロスのような大投資家であったとする。空港を降りたって人々がなんとかあいつに仕返しをしてやろうと考えている眼をしている国と、仕事が欲しいとギラギラした眼をしているヒトがいる国どちらに投資するかはもう明らかである。
そこで中野信子氏に是非次の題で、一冊書いていただきたい。売れることは保証する。出版は同じく日経PP社が宜しいと思う。
「経営者に読んでほしい、従業員が毒を吐かなくてもすみ、また吐きかけられることのない会社の作り方」