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満州国と日中戦争の真実(PHP新書)を読む

2023-02-01 13:50:30 | 日記

満州国と日中戦争の真実(PHP新書)を読む

 雑誌を新書にしたような造りで、いくら何でも粗製だと思う。紙とインクを燃やして暖をとり出版社が露命をつなぐ感がある。最近は人々が本を読まなくなったので出版社も取次も本屋も本を書く作家もみな苦しいらしい。だからと言ってお粗末な本を出すともっと苦しいことがおこる。ネットでもテレビでもあまりに知識の押し売りがひどいので自分の頭で考えたいとする人は活字の世界を手放さないはずである。テレビにおされて斜陽だとされた映画が決して倒れなかったように、出版業界ももっと工夫して今少し安価にそれでも中身の充実に心がけてもらいたい。やらずぼったくりするとお客に逃げられますぞ。

今回は本を手に取ってみることなく買った。本を見ないで買うのは危険である、つくづくアマゾンで買うというのはやめにしようと誓いを立てた。しかしそれでは千円ほどが勿体ないので読みながらつぎのようなことを考えた。

 いままで満州国は日本史では滅茶苦茶評判が悪い。失敗したからだけど、もう少し公平な目で評価してあげるべきだと思う。例えば、満州開拓は棄民政策だとする説を聞いたことがある。それはソ連参戦後に開拓団の人々を関東軍が保護せずに惨事を引き起こした事件を見て棄民であったという印象を持っているのであって、開拓団を送り込んだことそのものが棄民であったかどうかの評価はまた別のことからやらないといけないはずだろう。長期にわたる政策は、その一番初めの段階ではちゃんとしたものだったとみるのが当然だろう。政策立案者がはじめからこの案に乗ったやつにはあとでえらい目にあわせてやろうなんてことは考えないだろう。

 私の考えは、次のようです。大恐慌か関東大震災かまたはその両方かもしれないが、金融を大幅に緩めた時期に発生した信用を資本家が丹念に集めて回って自分の手中に収めた。(こうするのに10年とか20年とかかかったと思われる)これを日本国内には投下するところがないので中国東北部に国を作って世界から何言われようがここを死守する必要があった。個人が何十兆という金を手にすると、毎日うまいものを食べてそれで終わりであるが資本家が手にするとこれをお互いに競争して増やすことばっかり考える。その競争する場としてどうしても満州帝国が必要だった。ちょうど何かの選手が競技場を必要とするのと同じである。

 しかも、役所でも会社でも上がツカエて下から入った優秀な人が腕を振るえないで不満を募らせることが始まる時期でもあった。この人材を帝国建設に使える。日本国内からは若くてうるさい面倒くさい人が居なくなるから感謝される。こんな各方面にとっていいことはない。中央銀行が信用を創設したことが問題なのではなく、こういう競技場の建設が周囲の迷惑になることが問題なのである。

 または競技場の建設に連れて行った用心棒が前面に出過ぎたことが問題であったのかもしれない。中国の王朝でもローマ帝国でも大抵危機の際に頼りにした用心棒にえらい目にあわされるというのがお決まりのストーリーになっている。わが国では、戦国時代にぼんやりしていた守護大名がその手下に喰われてしまうということに現れている。

 今も中央銀行が信用創設をやっていて果たしてこれはまた昔と同じことが起こるのではないかと皆が気をもんでいるけど、こういう競技場が建設されそうな気配がない。それはそうでもう開拓する場所がなくなったのではないか。それに上がつかえて不満な人もいなくなったのでいわゆる人事圧力でこうしないといけないということもなくなった。

 競技場の建設は宇宙とかネット上とか海底とかで行われているのかもしれないが、そうだと書いてある本にはまだ巡り合っていない。