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崖上のスパイ(張 芸謀監督作品)を見る②

2023-02-16 13:08:21 | 日記

崖上のスパイ(張 芸謀監督作品)を見る②

 ストーリーは複雑でややこしくて私のような単純な頭では理解できない。家に帰って一晩寝て明け方にそういうことかなとやっと理解したつもりになる。こういうややこしいのはヨーロッパ映画の特色でハリウッドの映画には少ないしイギリス映画にも少なそうな気がする。日本映画にはまずない。中国はヨーロッパと同じ大陸国家であることがこのことから分かる。同じ漢字を使って筆談できるからと言って両者同じ文化では絶対にないだろう。

 大陸では複雑に入り組んだ集団があってかつ外部からいくらでも異民族が入ってくるともう何でもありの争いになる。島国でも複雑に入り組んだ集団があるけどまず外部からいくらでも面倒なのが入ってくるという心配がない。そうするとお互い争いはなんでもありにはしないで相手側に秘密のスパイを送り込むのはやめときましょうという騎士道を暗黙の裡に認めてしまうということか。

 だから日本では、せいぜいが松尾芭蕉や世阿弥が敵情を探りに行く(噂だけど)程度のスパイになってしまう。大陸ではどうやらナンバー2が敵のスパイであるというようなことが一杯あるらしい。ハリウッドの映画を見てもヨーロッパほどややこしいにはあまりお目にかからない。ハリウッドはいざとなるとええい面倒くさいと腕にものを言わすタイプが多い。

イギリスの映画は極めて特色があってアラビアのロレンスや007に見られるように遠く海外の集団に生涯をかけて潜り込むのが特色である。国内集団の中でややこしいことをする映画もあるのかもしれないがあまりお目にかかったことがない。昔アラビアのロレンスの映画を見ながら三浦按針(ウイリアム・アダムス)はきっとロレンスの先輩にあたるんだろうと思ったことがある。家康は老獪な人であるから当然それを見抜いて利用したのだろう。このあたりの機微は面白そうなのに映画にも小説にもなっていないのは不思議なことだ。日本はイギリスと同じ海洋国家だから007を作ってもいいのじゃないかと思っていたら思い出した、もう何十年も前の快傑ハリマオというのがそれにあたるかもしれない。多分最初の原作快傑ハリマオは戦意高揚のための映画であっただろう。ならば007もそうなのかなど疑うところは尽きない。

ただ、崖上のスパイがヨーロッパの映画と異なるのは母親と子との場面を取り入れているところにある。ここは東洋文化圏であるとわかって全編サスペンス仕立てだけどホッとするところでもある。この母親役の女優さんの演技は名演技である。他にも脇役に名演技のヒトを配置している。この演技は多分京劇の時代から磨き抜かれてきた舞台芸術が今の映画に生かされているということか。

 映画の質は国力の反映であると聞いたことがある。ならば日本も近頃GDPが伸びないのなんだのと元気がないので、そうでもないとハリマオでも何でもいいからCGを駆使してまたはしなくてもいいから、凄いのを作ってほしいもんだ。最近の日本の映画は安手に作って薄い利益を上げていこうというまるで麻雀のピンフ上がりばっかり狙う作品が多いのでさっぱり面白くない。