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日本史を暴く (磯田道史著 中公新書)を読みながら考えたこと。

2022-12-18 14:10:19 | 日記

日本史を暴く (磯田道史著 中公新書)を読みながら考えたこと。

 お金儲けのためには、哲学書と歴史書を読めという教えがあります。私は哲学とは小さいころから相性が悪くて読む気がしないけど歴史書は大好きでよく読みます。しかしお金儲けに関係しない歴史書の方が圧倒的に多くてこの本ももちろん関係しないほうの本です。だからこれを読むことは私の信奉する教えには少々反するんですけど読んで面白かった。

 例えば、最近は歴史文書の解読も進歩してきたと見えて豊臣秀頼のお父さんは秀吉ではなく別の人物で、かつその人物の名前までかなりの精度で確定しているそうです。むかし秀頼さんの絵図というのを見た時誰もがそう思うでしょうが、秀吉さんとは似ても似つかぬ美男子でこれは実の子ではないでしょうと思った。証拠になる文書があるんだそうで、これはなかなか面白い話です。当時の人も当然知っていたはずであるのになぜあたかも皆がこれは秀吉の実子であるかのように振る舞ったのか。案外実の父親にはこだわらないという時代風潮だったのかとも思う。だったら今は実の父親にはかなりの人がこだわっているけどそれは何時頃からどんな事情で始まったのかとか疑問はどんどんわいてくる。この話から、家族間の相続の話にまで広がるとトマ=ピケティーさんの得意の分野に移って途端にお金儲けに関係する歴史の分野にまで広がるんだけど遺憾ながらこの本では雑学面白話で終わっている。面白話からでも教訓は引き出せるでしょうしそれは読み手の腕であるとも思うけど、もう少し教訓につながるところまで調べて書いてほしいというのが感想です。

 多分お金儲けに関係するだろう「ローマ帝国盛衰記(ギボン)」とか「交易の世界史(ウィリアム・バーンスタイン)」とかはずいぶん前に買って、読もうとはしているんですけどいまだに本箱で埃をかぶっている。そう難しい本ではないが登場人物が長い長いカタカナで、翻訳をする人が原作に忠実に訳するために却って読みにくくなってる感があります。ちょうど岩波の専門書みたいなものです。専門書なら汗をかいてでも読まねばなりませんが、そこまでしたくないとの思いからなかなか読みだせないのです。

これでは、兼好法師に「この人富まんとして読むべき本のあんこの部分のみを舐めて、肝心の餅の部分を打ち捨てたりければついに富むことなく終わりける。」と悪態をつかれそうな雲行きです。