独り合点(ひとりがてん)

きもの業界をステージとした、ビジネスと生活スタイル、および近況。

蛙印の藍染め(1)

2007-06-24 | 月刊アレコレ

工房見学、午後は藍染めの蛙印染色工芸㈱へ。草加駅からタクシーで10分ほどのところにある。タクシーを降りて、先ず屋号をナンテ読むのかで、全員が???文字通り「かえるじるし」と読むのだそうです。工房がある場所が「柳之宮」という地名なので、先代が小野道風の柳に何度も飛びつく蛙を見て発心し、書道を極めたとの故事にちなみ、柳に蛙で、そのまま「蛙印」としたんだそうです。

ここは江戸時代のほぼそのままの技法で、長板中形染を行い、かつ全国でもたった16人しかいない、藍甕をそなえた藍染めの工房の1つ。工房を見学する前に社長さんから藍染めの歴史や工程をお聞きしたが、当たり前とはいえ専門家の博識さには驚かされた。藍の発酵の難しさやデリケートさを藍を生き物として、人間と同格に「機嫌をとる」「やすませる」などと表現していたのが印象的。

土曜日でお休みのところを我々のために職人さんに出ていただき、感謝です。一枚板に張った白生地に精緻な江戸小紋の型紙を置き、防染糊をヘラの加減を微妙に動かして伏せてゆく工程は、おもわず息を飲んでしまいました。型紙の大きさは約60センチ大ですから、1反の生地に模様をつけるには、型紙を20回以上繰り返してようやく仕上がり。連続模様だけに型紙の左右にある小さな柄合わせ用の穴、「星」というんだそうですが、この星を頼りに、あとは勘で柄を合わせして、連続模様を作ってゆくのですが、この星がどうしても生地に模様の1部として残ります。しかし、最近はこれを「汚れ」として嫌うとか。「印刷のようなきれいさ」を求める消費者の完璧さは、職人泣かせで、この「星」がなければ、できないんですが…」といいながらも、要望の応えようと、中には模様の加減でどうしても消せない星もあるんですが、なんとか星が残らないようにしようと、様々に工夫しているそうです。注染でもそうでしたが、手作りならでのはの「かすれ」や「濃淡」を味ではなく、不良品としてしまういまどきの消費者の要望には、型染めのように江戸時代の技法を守りながら、江戸の色や味を出してゆこうというこだわりの会社には、いまどきの消費者の高いレベル?の要望は悩ましい問題のようです。