
STAP 細胞の論文問題で、中間報告をする理化学研究所の野依良治理事長 (14日午後)。 小保方晴子博士 (1月28日 神戸)。 STAP 細胞由来の細胞だけで形成されたというマウス胎仔 (小保方晴子/理化学研究所/Nature/AP/アフロ)。
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1月の STAP 細胞発表から一躍 “時の人” になった感のある小保方さんだったが、2月になってマウス胎児の写真が不自然との指摘を受けてから論文の信用性に疑問符が付き始めた。
小保方さんが所属する組織のトップが、「未熟な研究者が膨大なデータを集積し 極めてずさんな取り扱いをして 責任感に乏しかった」(記事1) と発表したが、その組織の上層部は発表前にしかるべき検証を十分に行っていなかったといっているのに等しい。
また、「研究倫理を学ぶ機会がなかったのか」「論文の体をなしていない」(記事1) と同組織の人たちがいっているが、今更 そんなことを他人事のようにいうのもおかしいとしかいえない。
「論文作成は小保方さん、(論文を指導した) 副センター長の共同作業だった」(記事1) ともあるが、指導する立場の認識はどうなのか__早くいうと、指導する力量が充分でなかったといわれても仕方のないことではないだろうか?
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「小保方さん『いけないと思わず』=『未熟な研究者』理事長は批判-会見4時間・理研」(3月14日 時事通信) _ ※追加1へ
「STAP 細胞事件から見えてきた現代の科学研究の死角」(3月12日 池田信夫/ニューズウィーク日本版) _ ※追加2へ
「STAP細胞騒動に理研と小保方氏 “ダンマリ” 取材応じない姿勢にマスコミから批判も」(3月11日 J-CAST ニュース) _ ※追加3へ
「別の論文と記述が酷似 STAP 細胞の論文」(2月28日 日経/共同)
「STAP 論文、英科学誌も調査 画像に不自然な点指摘」(2月18日 日経)
「STAP 細胞: “不自然な画像” 指摘受け理研が論文を調査」(2月15日 毎日新聞)
ウィキペディアから__ 小保方 晴子 (おぼかた はるこ 1983~) は、日本の細胞生物学者。 1月28日、「外からの刺激で体細胞を初期化することにより、全ての生体組織と胎盤組織に分化できる多能性を持った細胞 (STAP 細胞) を作製する方法を世界で初めて確立した」と発表した。
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致命的なのは、「Nature 論文が発表された1月29日から6週間たっても 全世界で行なわれた追試で STAP 細胞が再現できたという報告が1例もない」(記事2) 「小保方さん以外 誰も再現実験に成功していない」(記事3) ことだろう。 “再現例が相次げば、論文に多少の疑問点があっても容認されるだろう” (私の独断です) が、”再現ゼロ状態では論文そのものが疑わしい” ということになるのは避けられないだろう。
このままでは、既に発表した論文を取り下げて 小保方さん以外の研究者による再現例を示すことができるような研究手法を確立した上で 改めて所属組織による充分な検証を経た上で発表し直す以外に方法がないだろう。 勿論 その過程で (力量のある) 論文指導教官を張り付かせて、360度 どこからどう見ても疑問の余地がないくらいに徹底的に検証し尽くすべきだ (※)。
…………………………………………………………
更に もう1つ、「小保方氏が2010年に早稲田大学に提出した博士論文には、20ページ以上にわたって別の論文の丸ごとコピーがあり、参考文献も無関係な論文のコピー」(記事2) があったことも、問題だろう。 コピペ論文で博士になるならば、こんな楽な作業はない。 と同時に 早大の博士論文の審査は問題ないのだろうか、という疑問も浮かぶ。
世界を驚かすような名誉ある論文内容ならば、上記 (※) のような人手、手間ひま、情熱、カネを掛ける心づもりも必要だろう。 私は論文を発表したことはないが、それくらいの段取りを踏んで発表すべきものだろうということは簡単に想像できる。「いま指摘されている捏造疑惑が事実だとすれば 小保方氏は理研を解雇されて博士号も剥奪されるだろう」(記事2) という結末が見えるようだ。 “時の人” から一転、小保方さんは “学者生命を失うかどうか” の淵に立っている。
以上
※追加1_ 疑惑が相次いで浮上した新たな万能細胞「STAP (スタップ) 細胞」。 理化学研究所が14日、東京都内で開いた記者会見は約4時間に及んだ。 ノーベル化学賞の受賞者でもある野依良治理事長は冒頭で深々と頭を下げ、今回の問題を陳謝。 小保方晴子研究ユニットリーダー (30) について、「1人の未熟な研究者が膨大なデータを集積し、極めてずさんな取り扱いをして、責任感に乏しかった」と厳しく批判した。
理研の石井俊輔調査委員長は、小保方さんが論文の見栄えを良くするため画像を加工したことを認めたと説明。 聞き取り調査に「やってはいけないという認識がなかった」と話したという。 石井委員長は「研究倫理を学ぶ機会がなかったのか」と首をかしげた。
STAP 細胞の万能性を示すとされた重要な画像が、小保方さんの博士論文の画像と同一とみられる点について、竹市雅俊理研センター長は「論文の体をなしていない」とばっさり。 現職に採用したことに関しては、「過去の (研究ぶりの) 調査が不十分だったと深く反省している」と述べた。
小保方さんは聞き取りやデータの提出要請に協力的で、「自分の気持ちを申し上げたい」と記者会見に応じる意向も示しているという。 ただ 石井委員長は、「今週は小保方さんの心身の状態があまり良くない」と述べ、最近聞き取りができていないことを明かした。
一方 論文を指導した笹井芳樹理研副センター長について、石井委員長は「論文作成は小保方さん、笹井さんの共同作業だった」と役割の大きさを指摘。 野依理事長も「責任は非常に重い」と批判した。
STAP 細胞を作成したとする論文の結論について、小保方さんらは現在も正しいと考えているという。
…………………………………………………………
※追加2_ 理化学研究所の小保方晴子氏などのチームが発見したとされる「STAP 細胞」について、多くの疑惑が出ている。 “Nature” に発表された論文の共著者である山梨大学の若山照彦教授が論文の撤回を呼びかけ、理研は撤回を検討し始めた。 まだ本人から説明がないので事実関係が確認できないが、論文に重大な欠陥があることは明らかだ。
STAP 細胞は、体細胞に弱酸性の液などの「刺激」を与えるだけで初期化され、幹細胞 (すべての体細胞に分化できる細胞) になるという驚くべき発見である。 幹細胞は受精卵の中にある初期の細胞で、それが分化していろいろな体細胞になるが、特定の部位に分化した体細胞は他の体細胞にはならない。
体細胞から幹細胞をつくって同じ個体を複製するクローンの技術は、1990年代から進んできた。今まで受精卵の胚細胞から幹細胞をつくる ES 細胞や遺伝子組み換えで幹細胞をつくる iPS 細胞はあるが、普通の体細胞を刺激するだけで幹細胞になるとすれば、再生医学などへの応用が広がるとして注目された。
ところが その論文で証拠とされている写真が、小保方氏の博士論文などからコピーされた まったく別の細胞であることが指摘され、実験データの一部も他人の論文の丸ごとコピーであることが判明した。 これらについては若山氏も理研も認めている。
さらに深刻なのは、Nature 論文が発表された1月29日から6週間たっても、全世界で行なわれた追試で、STAP 細胞が再現できたという報告が1例もないことだ。 理研で小保方氏らの行なった追試でさえ、STAP 細胞からつくったはずの幹細胞に、その証拠 (T 細胞受容体遺伝子の組み換え) が見つからない。
多くの研究者から「STAP 細胞は本当に存在するのか」という疑問が相次いだが、理研は「写真やデータにミスはあったが論文の根幹はゆるがない」という説明を繰り返し、小保方氏は普通に出勤して「再現実験」をやっていた。 しかし 写真の改竄や実験データの丸ごとコピーが「単純ミス」とは考えられない。
ここに今回の事件の原因が暗示されている。 科学の世界は、基本的に性善説である。 特に多くの研究者が分業して研究を行なう場合は、誰かがデータを捏造しても、他の研究者は元のデータを確認できない。 若山氏は STAP 細胞から幹細胞を複製する役割だったので、「小保方氏から受け取った細胞が STAP 細胞かどうかは知らない」という。
実験方法が公開されていれば 他の研究機関で追試が行なわれるが、再現できなくても「自分の実験装置が不十分なのだろう」とあきらめることが多い。 ベル研究所の論文捏造事件では、偽造されたデータをもとにして20人の共著者が63本も論文を書き、データがすべて捏造だと判明するまでに3年かかった。
ちょっとした研究なら、疑問があっても放置される。 小保方氏が2010年に早稲田大学に提出した博士論文には、20ページ以上にわたって別の論文の丸ごとコピーがあり、参考文献も無関係な論文のコピーであることが指摘されたが、今まで誰も気づかなかった。
彼女は同様の研究成果を今まで何度も発表しており、一度も問題にはならなかった。 この分野は国際競争が激しいので、本人は「とりあえず早めに発表して後から確認しよう」と考えたのかも知れない。 同時に特許も出願しており、成果をアピールして「特定国立研究開発法人」になろうという理研の戦略もあったのではないか。
ところが権威ある Nature に掲載されたため、過去の論文との類似が世界のソーシャルメディアで検索された。 今回の事件の発端になったのは海外の査読サイトの指摘で、日本でもまとめサイトが第一報を出し、マスメディアがそれを追いかけている。
もちろん 最終的に捏造が確認されたら、学者生命を失う。 それは彼女の自己責任だが、ここまで問題に気づかなかった理研と早大の罪は重い (特に本文と参照文献がリンクしていないのは査読で気づくはずだ)。 データの捏造をすべてチェックすることは困難なので、今後の教訓にするためにも彼女を徹底的に査問し、きびしく制裁すべきだ。
このような論文捏造は海外ではよくあり、日本の管理体制は甘かった。 いま指摘されている疑惑が事実だとすれば、小保方氏は理研を解雇されて博士号も剥奪されるだろう。 性善説を捨てて信賞必罰を徹底し、情報管理体制を整備することが、同様の事件の再発を防ぐために不可欠である。
…………………………………………………………
※追加3_ 新型万能細胞「STAP 細胞」の論文を巡り、続々と疑惑が指摘された問題は、共著者のひとりが「確信が持てない」と、取り下げを訴える事態にまで発展した。
STAP 細胞の作製を発表した理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーは騒ぎが起きて以来、表舞台から姿を消したまま。 理研は「調査中」を繰り返すものの明確な説明が不足しており、疑念が晴れないまま1か月が過ぎてしまった。
渦中の小保方さんは「淡々と研究中」?
発端は、英科学誌「ネイチャー」に掲載された論文に使用された画像に不自然な点があるとの指摘だった。 別の実験画像と類似しているといわれ、当初は「単純ミスによる掲載と思われるが調査をする」という説明があったが、あやふやなまま時が過ぎる。 その後 他の論文を無断で引用したのではないかという疑問が噴出、さらに論文上の別の画像が、今度は小保方さんの博士論文に使用された画像と酷似していることがわかった。「簡単につくれる」と説明していた STAP 細胞が、実際は小保方さん以外誰も再現実験に成功していないことも分かってきた。
共著者のひとりである山梨大学の若山照彦教授は3月10日、報道陣に対して、小保方さんを含む共著者に論文の撤回を呼びかけたことを明かした。「確信がもてなくなった」のが理由だ。 画像の使い回しの疑いや、「報告を受けていたことと違う」点が見つかったという。 共著者でありながら、自身の手のみで STAP 細胞の再現は1度も成功していない。「いったん取り下げて修正し、正しい論文として発表し直した方がよい」との主張だ。
理研の広報担当者は3月11日放送の「朝ズバッ!」(TBS 系) の取材に対して、小保方さんの動向について「淡々と研究中」と述べるにとどめた。 また若山教授から論文撤回の提案があったことは承知しており、対応については「現在協議中」とだけ告げた。
番組に出演した毎日新聞科学環境部の元村有希子記者は、「どうしてこういう騒ぎになっているか、誰も説明していない」と理研の対応を疑問視。 画像や論文の引用に対する指摘は「ささいなミスと受け止めていたかもしれない」とみる。 次々に問題が浮上してきたため対応に追われていたのは事実だろうが、「1か月間何もいわない、取材にも応じない、では不信感が膨らむ」と批判した。
「論文の信頼性、研究倫理の観点」から論文の取り下げを視野
確かに理研は、画像と引用の疑惑には「調査中」のまま明確な回答をしてこなかった。 一方、STAP 細胞を誰もつくれないとの声には3月5日、その詳しい作製手順をウェブサイト上で公開した。
騒動が長引いているためか、政府も動きを見せた。 菅義偉官房長官は3月11日の会見で、文部科学省を通じて理研に調査の実施と速やかな事実解明を求めたと話した。 下村博文文科相は、いくつもの疑問が浮かび上がっている論文について「出し直した方がいいのではないか」と述べた。
こうした流れを受けて、理研は3月11日に「STAP 細胞論文の調査について」と題したコメントをウェブサイト上で発表した。 ただ現時点では、疑惑を拭い去るには程遠い内容といわざるを得ない。
まず 小保方さんの博士論文の画像が STAP 細胞論文に「転用」されたとの指摘は「調査を開始した」段階だという。 これ以外の疑義についても調査が継続中で、「最終的な報告にはまだしばらく時間を要する予定」だ。
その一方で「論文の信頼性、研究倫理の観点」から、論文の取り下げを視野に入れて検討している点も明らかにした。 ただ複数の疑惑があるとはいえ、今はあくまでも調査中で「シロクロ」の決着はついていない。 具体的な説明や調査結果の公表がない段階での「取り下げ検討」は、どうも釈然としない。
「朝ズバ!」の中で元村記者は、一度発表した論文を撤回するのは研究者にとって相当のダメージになると説明した。 小保方さんをはじめ共著者の経歴を大きく損なう恐れがある。 共著者の間でも、若山教授は取り下げを望んでいるが、米ハーバード大学のチャールズ・バカンディ教授は「撤回する理由はない」と反対の構えで、意見が割れているようだ。
理研では3月14日、メディアに向けた経過報告会を開く予定だ。 その席で詳しい調査結果が発表されるかもしれない。 いまだに「雲隠れ状態」の小保方さんの口から、疑惑を打ち消す説明が出てくるだろうか。
以上
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1月の STAP 細胞発表から一躍 “時の人” になった感のある小保方さんだったが、2月になってマウス胎児の写真が不自然との指摘を受けてから論文の信用性に疑問符が付き始めた。
小保方さんが所属する組織のトップが、「未熟な研究者が膨大なデータを集積し 極めてずさんな取り扱いをして 責任感に乏しかった」(記事1) と発表したが、その組織の上層部は発表前にしかるべき検証を十分に行っていなかったといっているのに等しい。
また、「研究倫理を学ぶ機会がなかったのか」「論文の体をなしていない」(記事1) と同組織の人たちがいっているが、今更 そんなことを他人事のようにいうのもおかしいとしかいえない。
「論文作成は小保方さん、(論文を指導した) 副センター長の共同作業だった」(記事1) ともあるが、指導する立場の認識はどうなのか__早くいうと、指導する力量が充分でなかったといわれても仕方のないことではないだろうか?
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「小保方さん『いけないと思わず』=『未熟な研究者』理事長は批判-会見4時間・理研」(3月14日 時事通信) _ ※追加1へ
「STAP 細胞事件から見えてきた現代の科学研究の死角」(3月12日 池田信夫/ニューズウィーク日本版) _ ※追加2へ
「STAP細胞騒動に理研と小保方氏 “ダンマリ” 取材応じない姿勢にマスコミから批判も」(3月11日 J-CAST ニュース) _ ※追加3へ
「別の論文と記述が酷似 STAP 細胞の論文」(2月28日 日経/共同)
「STAP 論文、英科学誌も調査 画像に不自然な点指摘」(2月18日 日経)
「STAP 細胞: “不自然な画像” 指摘受け理研が論文を調査」(2月15日 毎日新聞)
ウィキペディアから__ 小保方 晴子 (おぼかた はるこ 1983~) は、日本の細胞生物学者。 1月28日、「外からの刺激で体細胞を初期化することにより、全ての生体組織と胎盤組織に分化できる多能性を持った細胞 (STAP 細胞) を作製する方法を世界で初めて確立した」と発表した。
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致命的なのは、「Nature 論文が発表された1月29日から6週間たっても 全世界で行なわれた追試で STAP 細胞が再現できたという報告が1例もない」(記事2) 「小保方さん以外 誰も再現実験に成功していない」(記事3) ことだろう。 “再現例が相次げば、論文に多少の疑問点があっても容認されるだろう” (私の独断です) が、”再現ゼロ状態では論文そのものが疑わしい” ということになるのは避けられないだろう。
このままでは、既に発表した論文を取り下げて 小保方さん以外の研究者による再現例を示すことができるような研究手法を確立した上で 改めて所属組織による充分な検証を経た上で発表し直す以外に方法がないだろう。 勿論 その過程で (力量のある) 論文指導教官を張り付かせて、360度 どこからどう見ても疑問の余地がないくらいに徹底的に検証し尽くすべきだ (※)。
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更に もう1つ、「小保方氏が2010年に早稲田大学に提出した博士論文には、20ページ以上にわたって別の論文の丸ごとコピーがあり、参考文献も無関係な論文のコピー」(記事2) があったことも、問題だろう。 コピペ論文で博士になるならば、こんな楽な作業はない。 と同時に 早大の博士論文の審査は問題ないのだろうか、という疑問も浮かぶ。
世界を驚かすような名誉ある論文内容ならば、上記 (※) のような人手、手間ひま、情熱、カネを掛ける心づもりも必要だろう。 私は論文を発表したことはないが、それくらいの段取りを踏んで発表すべきものだろうということは簡単に想像できる。「いま指摘されている捏造疑惑が事実だとすれば 小保方氏は理研を解雇されて博士号も剥奪されるだろう」(記事2) という結末が見えるようだ。 “時の人” から一転、小保方さんは “学者生命を失うかどうか” の淵に立っている。
以上
※追加1_ 疑惑が相次いで浮上した新たな万能細胞「STAP (スタップ) 細胞」。 理化学研究所が14日、東京都内で開いた記者会見は約4時間に及んだ。 ノーベル化学賞の受賞者でもある野依良治理事長は冒頭で深々と頭を下げ、今回の問題を陳謝。 小保方晴子研究ユニットリーダー (30) について、「1人の未熟な研究者が膨大なデータを集積し、極めてずさんな取り扱いをして、責任感に乏しかった」と厳しく批判した。
理研の石井俊輔調査委員長は、小保方さんが論文の見栄えを良くするため画像を加工したことを認めたと説明。 聞き取り調査に「やってはいけないという認識がなかった」と話したという。 石井委員長は「研究倫理を学ぶ機会がなかったのか」と首をかしげた。
STAP 細胞の万能性を示すとされた重要な画像が、小保方さんの博士論文の画像と同一とみられる点について、竹市雅俊理研センター長は「論文の体をなしていない」とばっさり。 現職に採用したことに関しては、「過去の (研究ぶりの) 調査が不十分だったと深く反省している」と述べた。
小保方さんは聞き取りやデータの提出要請に協力的で、「自分の気持ちを申し上げたい」と記者会見に応じる意向も示しているという。 ただ 石井委員長は、「今週は小保方さんの心身の状態があまり良くない」と述べ、最近聞き取りができていないことを明かした。
一方 論文を指導した笹井芳樹理研副センター長について、石井委員長は「論文作成は小保方さん、笹井さんの共同作業だった」と役割の大きさを指摘。 野依理事長も「責任は非常に重い」と批判した。
STAP 細胞を作成したとする論文の結論について、小保方さんらは現在も正しいと考えているという。
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※追加2_ 理化学研究所の小保方晴子氏などのチームが発見したとされる「STAP 細胞」について、多くの疑惑が出ている。 “Nature” に発表された論文の共著者である山梨大学の若山照彦教授が論文の撤回を呼びかけ、理研は撤回を検討し始めた。 まだ本人から説明がないので事実関係が確認できないが、論文に重大な欠陥があることは明らかだ。
STAP 細胞は、体細胞に弱酸性の液などの「刺激」を与えるだけで初期化され、幹細胞 (すべての体細胞に分化できる細胞) になるという驚くべき発見である。 幹細胞は受精卵の中にある初期の細胞で、それが分化していろいろな体細胞になるが、特定の部位に分化した体細胞は他の体細胞にはならない。
体細胞から幹細胞をつくって同じ個体を複製するクローンの技術は、1990年代から進んできた。今まで受精卵の胚細胞から幹細胞をつくる ES 細胞や遺伝子組み換えで幹細胞をつくる iPS 細胞はあるが、普通の体細胞を刺激するだけで幹細胞になるとすれば、再生医学などへの応用が広がるとして注目された。
ところが その論文で証拠とされている写真が、小保方氏の博士論文などからコピーされた まったく別の細胞であることが指摘され、実験データの一部も他人の論文の丸ごとコピーであることが判明した。 これらについては若山氏も理研も認めている。
さらに深刻なのは、Nature 論文が発表された1月29日から6週間たっても、全世界で行なわれた追試で、STAP 細胞が再現できたという報告が1例もないことだ。 理研で小保方氏らの行なった追試でさえ、STAP 細胞からつくったはずの幹細胞に、その証拠 (T 細胞受容体遺伝子の組み換え) が見つからない。
多くの研究者から「STAP 細胞は本当に存在するのか」という疑問が相次いだが、理研は「写真やデータにミスはあったが論文の根幹はゆるがない」という説明を繰り返し、小保方氏は普通に出勤して「再現実験」をやっていた。 しかし 写真の改竄や実験データの丸ごとコピーが「単純ミス」とは考えられない。
ここに今回の事件の原因が暗示されている。 科学の世界は、基本的に性善説である。 特に多くの研究者が分業して研究を行なう場合は、誰かがデータを捏造しても、他の研究者は元のデータを確認できない。 若山氏は STAP 細胞から幹細胞を複製する役割だったので、「小保方氏から受け取った細胞が STAP 細胞かどうかは知らない」という。
実験方法が公開されていれば 他の研究機関で追試が行なわれるが、再現できなくても「自分の実験装置が不十分なのだろう」とあきらめることが多い。 ベル研究所の論文捏造事件では、偽造されたデータをもとにして20人の共著者が63本も論文を書き、データがすべて捏造だと判明するまでに3年かかった。
ちょっとした研究なら、疑問があっても放置される。 小保方氏が2010年に早稲田大学に提出した博士論文には、20ページ以上にわたって別の論文の丸ごとコピーがあり、参考文献も無関係な論文のコピーであることが指摘されたが、今まで誰も気づかなかった。
彼女は同様の研究成果を今まで何度も発表しており、一度も問題にはならなかった。 この分野は国際競争が激しいので、本人は「とりあえず早めに発表して後から確認しよう」と考えたのかも知れない。 同時に特許も出願しており、成果をアピールして「特定国立研究開発法人」になろうという理研の戦略もあったのではないか。
ところが権威ある Nature に掲載されたため、過去の論文との類似が世界のソーシャルメディアで検索された。 今回の事件の発端になったのは海外の査読サイトの指摘で、日本でもまとめサイトが第一報を出し、マスメディアがそれを追いかけている。
もちろん 最終的に捏造が確認されたら、学者生命を失う。 それは彼女の自己責任だが、ここまで問題に気づかなかった理研と早大の罪は重い (特に本文と参照文献がリンクしていないのは査読で気づくはずだ)。 データの捏造をすべてチェックすることは困難なので、今後の教訓にするためにも彼女を徹底的に査問し、きびしく制裁すべきだ。
このような論文捏造は海外ではよくあり、日本の管理体制は甘かった。 いま指摘されている疑惑が事実だとすれば、小保方氏は理研を解雇されて博士号も剥奪されるだろう。 性善説を捨てて信賞必罰を徹底し、情報管理体制を整備することが、同様の事件の再発を防ぐために不可欠である。
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※追加3_ 新型万能細胞「STAP 細胞」の論文を巡り、続々と疑惑が指摘された問題は、共著者のひとりが「確信が持てない」と、取り下げを訴える事態にまで発展した。
STAP 細胞の作製を発表した理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーは騒ぎが起きて以来、表舞台から姿を消したまま。 理研は「調査中」を繰り返すものの明確な説明が不足しており、疑念が晴れないまま1か月が過ぎてしまった。
渦中の小保方さんは「淡々と研究中」?
発端は、英科学誌「ネイチャー」に掲載された論文に使用された画像に不自然な点があるとの指摘だった。 別の実験画像と類似しているといわれ、当初は「単純ミスによる掲載と思われるが調査をする」という説明があったが、あやふやなまま時が過ぎる。 その後 他の論文を無断で引用したのではないかという疑問が噴出、さらに論文上の別の画像が、今度は小保方さんの博士論文に使用された画像と酷似していることがわかった。「簡単につくれる」と説明していた STAP 細胞が、実際は小保方さん以外誰も再現実験に成功していないことも分かってきた。
共著者のひとりである山梨大学の若山照彦教授は3月10日、報道陣に対して、小保方さんを含む共著者に論文の撤回を呼びかけたことを明かした。「確信がもてなくなった」のが理由だ。 画像の使い回しの疑いや、「報告を受けていたことと違う」点が見つかったという。 共著者でありながら、自身の手のみで STAP 細胞の再現は1度も成功していない。「いったん取り下げて修正し、正しい論文として発表し直した方がよい」との主張だ。
理研の広報担当者は3月11日放送の「朝ズバッ!」(TBS 系) の取材に対して、小保方さんの動向について「淡々と研究中」と述べるにとどめた。 また若山教授から論文撤回の提案があったことは承知しており、対応については「現在協議中」とだけ告げた。
番組に出演した毎日新聞科学環境部の元村有希子記者は、「どうしてこういう騒ぎになっているか、誰も説明していない」と理研の対応を疑問視。 画像や論文の引用に対する指摘は「ささいなミスと受け止めていたかもしれない」とみる。 次々に問題が浮上してきたため対応に追われていたのは事実だろうが、「1か月間何もいわない、取材にも応じない、では不信感が膨らむ」と批判した。
「論文の信頼性、研究倫理の観点」から論文の取り下げを視野
確かに理研は、画像と引用の疑惑には「調査中」のまま明確な回答をしてこなかった。 一方、STAP 細胞を誰もつくれないとの声には3月5日、その詳しい作製手順をウェブサイト上で公開した。
騒動が長引いているためか、政府も動きを見せた。 菅義偉官房長官は3月11日の会見で、文部科学省を通じて理研に調査の実施と速やかな事実解明を求めたと話した。 下村博文文科相は、いくつもの疑問が浮かび上がっている論文について「出し直した方がいいのではないか」と述べた。
こうした流れを受けて、理研は3月11日に「STAP 細胞論文の調査について」と題したコメントをウェブサイト上で発表した。 ただ現時点では、疑惑を拭い去るには程遠い内容といわざるを得ない。
まず 小保方さんの博士論文の画像が STAP 細胞論文に「転用」されたとの指摘は「調査を開始した」段階だという。 これ以外の疑義についても調査が継続中で、「最終的な報告にはまだしばらく時間を要する予定」だ。
その一方で「論文の信頼性、研究倫理の観点」から、論文の取り下げを視野に入れて検討している点も明らかにした。 ただ複数の疑惑があるとはいえ、今はあくまでも調査中で「シロクロ」の決着はついていない。 具体的な説明や調査結果の公表がない段階での「取り下げ検討」は、どうも釈然としない。
「朝ズバ!」の中で元村記者は、一度発表した論文を撤回するのは研究者にとって相当のダメージになると説明した。 小保方さんをはじめ共著者の経歴を大きく損なう恐れがある。 共著者の間でも、若山教授は取り下げを望んでいるが、米ハーバード大学のチャールズ・バカンディ教授は「撤回する理由はない」と反対の構えで、意見が割れているようだ。
理研では3月14日、メディアに向けた経過報告会を開く予定だ。 その席で詳しい調査結果が発表されるかもしれない。 いまだに「雲隠れ状態」の小保方さんの口から、疑惑を打ち消す説明が出てくるだろうか。
以上