大島の空の下で

伊豆大島在住の中年のおっさんのブログです.日々の出来事を綴っていきます.一部は mixiとマルチポスティングしています.

終の住処

2009-08-15 20:40:23 | Weblog
以前,芥川賞はどう書くか,直木賞は何を書くかだという文章を読んだことがあります.両賞の性格の違いを端的に表しているうまい表現だと思ったものです.
その伝で行けば本作品は大手製薬メーカーの営業マンの30歳過ぎての結婚から20年間にわたる夫婦生活の変遷を主観的観念論的に綴った物語ですので時々の内的世界が第三者にも既視感を伴う表現で書ききれていれば成功なのでしょう. 現実に古女房が身近に存在する身としてはうかつに同感を表明できない内容ですが (^^) けっしてアツアツ・ウキウキだけではない新婚生活やおおやけには最も身近な人物に対するとてつもない距離感などの表現に普遍性を感じることができると思います. ただし,前半部分で心象風景である満ち欠けのない月や水を自由に操る老人,おまけに自衛隊のタンデムローターヘリまでが唐突に現れるのですが一読した限りでは何のメタファかわからずじまいでしたし,全体を通して表現があまりに散文的で少々退屈です.何かが違うと感じながら結婚にいたる冒頭部分にはかつて吉行淳之介氏が自らの結婚に至った過程を自伝的に述べた小説(題名失念)に類似を感じました.

第141回芥川賞受賞作

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