ちょうどお風呂に入ろうと思ったとき、
つけっぱなしにしていたテレビジャパンでは、
NHKスペシャル「カラーでよみがえる東京―不死鳥都市の100年」が始まり、
すぐに釘付けになってしまった。
白黒映像がカラーになって蘇り、
遠い昔と思っていた過去がいきなり現実味を帯びて迫ってきて、
映像で見る人々の顔が生き生きと身近に感じられたことに衝撃を受けた。
そして、1943年10月21日の出陣学徒壮行会のカラー復元映像と、
20年後の1964年10月10日の東京オリンピック開会式のカラー映像が映し出され、
「国立競技場」という同じ場所で開催された
この2つの行事に居合わせるという稀な経験をされた
作家杉本苑子さんの言葉を、八千草薫さんが朗読していた。
「オリンピックの開会式の興奮に埋まりながら、
20年という歳月が果たした役割の重さ、ふしぎさを、私は考えた。
同じ若人の祭典、同じ君が代、同じ日の丸でいながら、なんという意味の違いであろうか。
あの雨の日、やがて自分の生涯の上に、同じ神宮競技場(明治神宮外延競技場)で、
世界94カ国の若人の集まりを見るときが来ようとは、
夢想もしなかった私たちであった。
夢ではなく、だが、オリンピックは目の前にある。
そして、20年前の雨の日の記憶もまた、幻でも夢でもない現実として、
私たちの中に刻まれているのだ。
きょうのオリンピックはあの日につながり、あの日もきょうにつながっている。
私にはそれが恐ろしい。
祝福にみち、光と色彩に飾られた今日が、いかなる明日につながるか、
予想はだれにもつかないのである。
私たちにあるのは、きょうをきょうの美しさのまま、
なんとしてもあすへつなげなければならないとする祈りだけだー」