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Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「オランダ紀行」

2014-08-07 10:38:16 | Book
司馬遼太郎著「オランダ紀行」(街道をゆく35)を読了。
司馬遼太郎の本を読むのは初めてでした。
最初のほうで、フローニンゲンはフローニンゲン州の州都なのに、フリースラント州の州都であるような記述や、オランダ語の発音のカタカナ表記の間違いなどが目につき、オランダについて知識のある人が原稿に目を通していないのかなと思いました。
オランダ紀行というタイトルですが、ベルギーのアントワープの話もかなり入っています。
4分の1くらいがゴッホについての話で、ゴッホの人生がよくわかり、面白かったです。ゴッホの生まれたニューネン(ヌエネン)村に一度行ってみたいなと思いました。ゴッホって狂人というイメージが私にはあったのですが、変人ですが、かなり理性的な人だったことがこの本からわかりました。
また、オランダがいかに16世紀に黄金期であったか、彼らの商業主義が文化や芸術の発展にどういう影響を与えたか、また鎖国時代にオランダが与えた影響などについて、再考でき、とても良かったです。
紀行文なので読みやすく、楽しく読めました。
体調は良好です。

本「Het Puttertje」

2014-07-30 10:28:20 | Book
Donna Tartt(ドナ・タート)著「Het Puttertje」を読了。
ドナ・タートはアメリカの作家で、この「Het Puttertje」が第三作目。処女作の「The Secret History」(オランダ語では「De Verborgen Geschiedenis」)を読んで、とてもよく感動したので、この作家のことが気になっていました。三作ともかなりの長編で、この「Het Puttertje」(英題「The Goldfinch」)も925ページあります。重い本なので外で読めず、家で暇を見つけて読んでいたら、かなり時間がかかってしまいました。
この本、最初のシーンがアムステルダムから始まります。主人公がアムステルダムのホテルの部屋にいる場面です。このままアムステルダムを舞台とするのかなと思いきや、すぐに場面はニューヨークへ。
「Het Puttertje」は、Carel Fabritius(カレル・ファブリティウス)が1654年に描いた絵のタイトルです。足を鎖でつながれた小鳥の絵で、B4サイズくらいの小さな絵です。ファブリティウスはレンブラントの弟子で、フェルメールの先生だった人物ですが、この絵が描かれたのと同じ年1654年にデルフトの弾薬庫の大爆発の巻き添えで32歳で亡くなっています。この爆発でアトリエも全滅し、彼の作品は約14作ほどしか現存していません。その中でも代表作と言われるのが、この「Het Puttertje」(英題「The Goldfinch」)です。日本語では、「ゴシキヒワ」という名がついています。
本の中では、この絵が大きな役割を果たします。ところどころオランダ絵画の話も出てきて、興味深いです。
ニューヨークに住んでいた主人公のテオは、13歳の時に母親と美術館でこの絵を見ます。そのときに、大きな事件が起こり、彼の人生が転機を迎えます。彼がその後移り住むラスベガス郊外の荒涼とした雰囲気やニューヨークの雑踏と活気など、町の雰囲気がよく伝わってきました。
しっかりとした小説で、心理描写も多く、話がなかなか先に進まなくてつまらなく思う人もいるでしょうが、私は楽しめました。
この作品は、2014年のフィクション部門のピューリッツァー賞を受賞しました。過去の2作の小説は日本語版が出ているので、この本も近いうちに翻訳されると思います。
絵の「Het Puttertje」は、デンハーグにあるマウリッツハイス美術館が所蔵しています。この美術館は最近改装増設オープンしたばかりです。そのうちに一度訪れて、生でこの絵を見たいと思っています。
体調は良好です。


本「サヴァイヴ」

2014-07-24 09:40:10 | Book
近藤史恵著「サヴァイヴ」を読了。
ロードレースを題材にしたシリーズの外伝的な短編集です。
「サクリファイス」「エデン」の登場人物に焦点を当てた短編で、主役の白石の話はもちろん、脇役の存在だった赤城と石尾の出会いの話など、前二作を読んでいる人には物語世界を豊かにする話ばかりで、とても楽しめます。
ツール・ド・フランスなどを見ていてもなかなか選手の心理はわからないもので、これらの連作を読むと選手の心持ちが少し理解でき、この過酷なレースの裏模様が見て、興味深いです。
確かに、ヨーロッパではロードレースは人気スポーツで、オランダでもヨーロッパの主要なレースはNOSという日本でいうNHKに近い放送局でテレビ中継されますし、とても人気があります。一般の人が、選手と同じような服装でロード用の自転車で走っている姿をよく見かけます。実際に私の行っている病院のよく見かける医師たちが帰りに自転車競技のような服装にばっちり着替えて帰っていくのを何度か見かけました。
運動不足解消のために自転車で通勤しているようです。
オランダは自転車専用の通路が確保されているし、平坦なので、走りやすいというのもあると思います。
EPOのようなドラッグの問題がこのスポーツでは特に深刻で、過去に良い成績を上げた何人もの選手が使用を告白しています。チームがらみのものもあります。優勝したい、良い成績を上げないと来年の契約が微妙だなどと、心理的なジレンマがあるのだと思います。この問題についても選手の側からの心理が、このシリーズでは度々描かれています。
ずいぶん前に読んだ「サクリファイス」が記憶から薄れているので、もう一度読み返そうと思いました。
体調は良好です。


本「エデン」

2014-07-15 15:34:46 | Book
近藤史恵著「エデン」を読了。
ツール・ド・フランスの時期にこの本を読むのは最高の気分です。
この著者が自転車ロードレースをテーマにした小説を書いていて、最初の作品「サクリファイス」もとてもよかったです。
今回は、ロードレースの中でも最高峰といえるツール・ド・フランスが舞台です。
ツール・ド・フランスはよく見ているのですが、中々スポーツ内の駆け引きや、チームスポーツなのでそれぞれの選手の役割などがわかりにくいのですが、これらの本を読むとその世界を垣間見ることができ、実際にテレビを見ていて想像力が広がります。
主人公は前回同様チカこと白石誓(しらいし ちかし)。彼はツール・ド・フランスで総合優勝できるような選手ではありませんが、アシストという重要な役割に誇りをもって挑んでいます。彼の視点からの、最強選手たちの姿、チームの動向などが、新鮮です。
前回の「サクリファイス」での出来事がチカの心に大きな楔となっているような記述がところどころあるので、順番に読んでいくことをおすすめします。
3週間の長丁場のレースで、山岳コースが強いクライマーたちと、平坦なコースでのスピードレースが得意なスプリンターたちが、どのようにスケジュールの中で強弱をつけてたたかうのか、作戦が大切なスポーツなのですね。
また、マイヨ・ジョーヌを着た選手のいるチームは全体をまとめて曳いていく役割があり、それにかなりエネルギーを使うので、力のないチームが早い段階でマイヨ・ジョーヌを得ると、意識的に手放したりもするというような話も、知らなかったので、驚きました。
第3作の「サヴァイヴ」もすでに手元にあるので、読むのが楽しみです。
体調は良好です。今週は週末に向けて少しずつ気温が上がり、オランダも30度くらいになるそうです。真夏です。


本「ジェネラル・ルージュの伝説」

2014-07-11 16:01:18 | Book
海堂尊著「ジェネラル・ルージュの伝説」を読了。
この本は、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の主人公である救命救急医速水晃一の新人時代の様子を描く一話、また事務長の視点から「ジェネラル・ルージュの凱旋」の頃の出来事を語った話、速水が去った後に後任を任された部長代理の佐藤と救命救急室の様子の話と、3つの関係した話がおさめられています。
この著者の物語は一つのワールドを構成しており、本を読めば読むほど、登場人物のことが深くわかるようになり、また時代や出来事の結びつきがよく理解できるようになり、それがとても面白いです。
この本にはさらに、著者の簡単な生い立ちと成長の年表や、自作解説、登場人物リストなど、海堂尊の本をたくさん読んでいる人には頭を整理するのによい資料が付いています。
それにしても2005年のデビューから続々と本を出していて、すごいなあとあらためて感じました。
この本は、この著者のファンじゃない人にはおすすめしません。他の本から読んだほうがいいです。
体調は良好です。

本「獣の奏者 外伝 刹那」

2014-07-08 14:16:08 | Book
上橋菜穂子著「獣の奏者 外伝 刹那」を読了。
「獣の奏者」シリーズ4冊の壮大な物語を感動と共に読み終えた後、外伝があると知って、手にとりました。
「獣の奏者」をずっと「じゅうの奏者」と読んでいましたが、「けものの奏者」だったことを今回知りました。
「獣の奏者」は、大人も子どもも安心して読めるとても素敵な物語です。
作者があとがきで書いているようにこの外伝は「人生の半ばを過ぎた」人が読んだほうがより感慨深いものがあると思います。
中には、エリンの母と赤子のエリンをエリンの母の視点から描いたもの、エリンとイアルの出会いをイアルが語ったもの、エサル師の若い頃の恋の思い出を現在の視点から本人が語ったもの、エリンと赤ん坊のジェシとの日常を切り取ったものの4編がおさめられています。
いちばん心に残ったのは、エサル師の「秘め事」という短編。貴族の家の長女として生まれ、自分の性分に忠実に生きて、現在、カザルム王獣保護場で教導師長をしているエサル。若い頃の禁断の恋。そして、保護場の長として、いちずに王獣のことを考え生き、厳しくかつやさしくエリンを見守るエサル師。彼女の人生の重要な転換期が読め、彼女の人となりがすごく理解できます。
それにしてもこの作者、人生の機微というか、大切なことがほんとうによくわかっているようで、ところどころすごく考えさせられます。
人の心ってほんとうに一筋縄ではいかなくて、時間がたってからわかることがたくさんあります。
何にしろ、どんな困難が人生に待ち受けていようとも、それを正当に受け入れ、小さな幸せの瞬に幸せであることを心いっぱいに感じ、それを糧に、人生を悲観せずに生きていく強さが必要なのだと思いました。
同作者の別シリーズ「精霊の守り人」も読んでみようと思います。
体調は良好です。


本「ケルベロスの肖像」

2014-05-29 09:43:36 | Book
海堂尊著「ケルベロスの肖像」を読了。
もうこの著者の本はずっと読んでいるので、一つのワールドができていて、私はかなり楽しめます。
本の中の登場人物が他の本の主人公になっていて、複数の本の内容が複雑に絡んでいて、彼の本を読むたびにその世界が広がっていきます。
主に地方都市の東城大学付属大学病院が舞台で、今回はそこの医師の田口と院長の高階がメインの話です。病院が経営危機に陥っていて、新しくAiセンターを開設するにあたって、まあいろいろと事件が起こります。
しかし、まず高階院長のことがわかる「ブラックペアン1988」「ブレイズメス1990」やAiセンターのビルが建設される土地に何があったかについてわかる「螺鈿迷宮」「スリジエセンター1991」を読んでからこの本を読まないとわかりにくいところが多いでしょう。
私の好きなキャラは、厚生労働省の役人の白鳥圭輔と院長の高階権太なんですが、映画化されたものだと白鳥が仲村トオルが演じているなんてびっくりです。本だと、お腹がでた中年男性でちょっといかさない感じなんです。このシリーズの映画やドラマを一度も見たことがないので見たいなあと思う一方、見ないと自分の好きなように想像できるので、それもいいかなとも思います。
この本、最後はちょっとびっくりしました。ああ、そうなるのかと。
そして、このあと「モルフェウスの領域」の話が時系列では続くのねと納得する部分もありました。
ちょっと軽薄な文体でもあるので好き嫌いはありそうですが、私はこの著者の本を読むのが楽しみになっています。
ところどころでついニヤッとしてしまいます。
体調は良好です。

本「食事の文明論」

2014-05-19 09:40:24 | Book
石毛直道著「食事の文明論」を読了。
ユトレヒトの古本屋で見つけて購入しました。中公新書です。
いろんな土地の食事の違いが書かれているのかなと思って買ったのですが、あまり面白くなかったです。
でもところどころ知らない事実が書かれていて、そこは良かったです。
例えば、以前は食事は手でしており、フォークの出現は16世紀になってヨーロッパで始まり、普及するには17世紀後半だとのことでした。日本で箸を使う風習はすでに古墳時代にはあったとのことですから、それに比べればフォークの使用ってかなり最近のことですね。イタリアではスパゲッティを手づかみで食べている絵が残っているそうです。
以前に出会ったケニア人の女性が魚を一切食べない人でした。魚が嫌いというのではなくて、いままで食べたことがなく、一切食べないのです。この本の中で、アフリカの放牧や狩猟を主とする部族では魚を食べることがタブーとなっているという記述があり、納得がいきました。宗教がらみで、豚を食べない、牛と食べないというのは知っていますが、魚を食べないという人々をいるのだと知りました。
1982年が初版の本なので内容的にも少し古い感じもしました。
体調は良好です。

本「困っているひと」

2014-05-15 13:09:06 | Book
大野更紗著「困っているひと」を読了。
20代半ばで難病の皮膚筋炎と筋膜炎脂肪織炎症候群になった著者が発病と入院生活、退院について書いたエッセイ。
ユーモラスな語り口で、どんどん読めてしまい、エッセイとして面白かったです。まあ面白かったという表現はいまひとつ適切ではないですね。病気で身体がこわばって思うように動かせず、原因究明のために痛みを伴う検査をいくつも受け、おしりにできた大きな潰瘍の話とか、何か月も入院しなくてはならに状況など、たいへんだったんだなあと思いました。
でもこの著者、難病にかかった「困っているひと」というのを全面に押し出した「困ったひと」という印象も受けました。
入院しているので、買い物などいろいろなことを友人知人に頼みまくり、医師には疑問や不安をえんえんとぶつけ、医師は毎晩2時間くらい話し相手になっているというようなことが書かれています。
こんなことしていたら、忙しい医師の時間を他の患者から奪っていることになるし、エッセイ内でも友人たちは最後のほうでは疲れ果てて彼女のためには何もかもはできないと言い出します。
作者は田舎の優等生であった子供時代について書いていますが、おそらく自分自身にポジティブ感があって、他の人は自分のために何でもやってくれて当然、医師は自分を助けてくれて当然という気持ちがあったのではないかなと思います。そういう人がこういう病気にかかって、その敗北感は相当なものだったのでしょう。死にたいなどという気持ちについても最初のほうはときどきでてきます。
こういうつらい時期を切り抜けて、現在はひとり暮らしをして、エッセイやインタビュー記事などで社会参加をされていて、よかったと思います。
世の中には、難病、病気に倒れたといっても、ひとり暮らしがかなわないような病や身体状況の人が大勢います。
まだ若いし、これからも、病人の視線から社会制度の改善などについてどんどん発言していってほしいと思います。
ところどころ大げさな表現があり、また個々で辻褄が合わないことも。死にそうにつらい身体でリュック一つで東南アジアから飛行機で帰ってきたはずが駅でスーツケースをコインロッカーに入れるシーンがあったり、入院していてひとりでは何もできないようでありながら本当にやりたいことはやっている部分など、少し違和感を感じました。
体調は良好です。



本「航路」

2014-05-01 09:37:16 | Book
コニー・ウィリス著「航路」を読了。長かった…、上下巻で約1300ページ。
この本の翻訳者でもあり書評家の大森望氏が10年に一度の傑作と絶賛していたので、読んでみようと思いました。
たくさんの賞を受賞しているコニー・ウィリスですが、私ははじめて読みました。SF作家ですが、「航路」は現代の病院を舞台にした、コメディタッチのお話。でもテーマは臨死体験なので、死と隣り合わせの深刻なものなんだけれども、エンターテインメントのセンスが強く、ぐいぐいと読まされてしまいます。
登場人物がとても明確にわかりやすいキャラクター設定で、楽しめます。
主人公は、臨死体験を科学的に解明したいと思っている認知心理学者のジョアンナ。友達はERに勤めるヴィエルくらいしかいず、いつも病院内を駆けずり回っています。
臨死の実験の治験者であるミスター・ウォジャコフスキーは、元海軍経験者で、第二次世界大戦中にミッドウェー海戦などを経験したといい、その頃の話になるとしゃべりだしたらとまらない…、というかどんな話でもすぐにその頃の経験話に繋げて語りだしてしまう人物。その語りの中に、ヨークタウンとか翔鶴とか出てきて、この前に読んだ「永遠の0」と重なる部分を発見して、ひとりでおっと思いました。
他には、心臓病患者の女の子メイジー。災害の本が大好き。重要な役割を果たすキャラクターです。
それに、ジョアンナの高校時代の英語の先生など。
飽きずにどんどん読ませる作者のストーリーテリングの力強さはすばらしいです。またいろいろな情報の多さ、いくつもの筋が最期にどんどんつながっていく感じはすごかったです。
でも、なんか物足りなさがあって、またこの作家の本を読みたいかというと、それほどでもないんです。
どうしてかなあと考えると、ジョアンナにあまり共感できなかったこと。本の中でいろんなことがうまくいかず、そのためにすごく長くなっていて、フラストレーションがたまったからかなと思います。
このような物語の構造もすべて計算されたメタファーなんだろうけど、いまひとつ高揚感が自分の中で出なかったです。
以前に読んだNOVAも期待外れだったし、私にはSF系は合わないのかも。
体調は良好です。