Dutch Life 備忘録

オランダのミュージアム、コンサート、レストランなどについて記録するノート。日常的な雑記も…。

本「極北クレイマー」

2012-02-29 10:53:08 | Book
海堂尊著「極北クレイマー」を読了。朝日文庫刊で上下巻です。
軽いノリで、ずんずんと読めますが、内容は地方の財政破綻している小都市での市立病院の実態と市政の酷さがよく表現されています。
磁器製のマスクを顔につけた女性医療ジャーナリストが登場しますが、ちょっと存在がマンガぽくて、また他の登場人物もかなり特徴的で、いまひとつ現実味がないですが、まあコミカル医療エンターテイメントとしては、そこそこ読めます。しかし、バチスタシリーズのような鋭さと緊迫感に欠ける気がします。
姫宮をはじめとして、他のシリーズに顔を出している人物が少し出てくるので、海堂作品を読み続けている読者としては読むべき一作ですが、これ単品で読むのはちょっとおすすめできません。
北海道夕張市を取材して、ヒントを得て書いたそうですが、北の寒い土地の様子がところどころでひしひしと感じられます。
今後、地方の小都市の過疎化、老人化が進んでいくと思いますが、その中で医療というものが持ちこたえていくことへの希望のようなものが語られていると思いました。
病院によって、当たりとハズレがあるのは、患者としてはとても困ることですが、実際にはあることだと思います。都市部で病院を選べる地域に住む人はいいですが、地方へいくと、入院できる病院は一つしか近くにはないということも多いと思います。そうなるとその病院の質が、住民にとっては大問題となってくるわけです。また、そういう病院があるだけまだよくて、近くには病院がないとなるとまた更なる問題です。
オランダは、小さな国土に山がないために人がだいたいまんべんなく住んでおり、入院できる総合病院が各所にあり、地方ごとに大学病院があります。しかし、私の体験からすると、やはり病院ごとに格差があると思います。医師の技術についてはわかりませんが、患者に対する接し方など、教育がしっかりしているところと、田舎などでちょっとルーズなところがあります。毎年、週刊誌が全国の病院の実態に点数をつけて発表しており、これによって、どこが評価の悪い病院で、どこが良い病院かを知る目安となっています。幸い、私の通っている病院は10位以内の常連病院で、この病院に出会ったことはラッキーだったなと思います。
また、この病院からは年に2回くらい、アンケートが送られてきます。内容はさまざまですが、「医師がきちんとあなたの話をきいてくれますか?」とか、「看護士の言うことと医師が言うことが異なり、混乱したことがありますか?」などの設問があり、フィードバックできるようになっています。
話がそれましたが、「極北クレイマー」は軽快に読める本で、いまひとつ深みに欠けますが、作者が言いたいテーマにはいつものことながら、日本の医療における問題点の提示があり、その点では読む価値があると思います。
体調は相変わらず咳が出ます。でも今日は心もち回数が減ったようです。
オランダは、最高気温がときどき10度を超えたりしていて、なんとなく空気が春に向かっているように思います。今日の東京は雪とのことですが、オランダの方が緯度が高いので寒そうですが、そうでないこともあります。まあ、夏は断然、オランダのほうが涼しいですけれど。
それから、昨日、MMの情報誌「がんばりまっしょい」が届きました。毎回オランダまで送っていただき、ほんとうにありがたいです。母国語で貴重な情報が読めて、また雑誌なので気軽にベッドの上で読めるのもうれしいです。今回は、表紙の手まりの写真がとてもきれいで、じっくり見入ってしまいました。



映画「Women on the edge」

2012-02-27 08:34:33 | Movie
ロッテルダム国際映画祭で見た3本目の映画は、「Women on the edge」(ギリギリの女たち)でした。小林政広監督の作品で、宮城県気仙沼市で震災後にロケをしたもので、港の風景などに震災の傷跡が痛々しいほどに映っています。監督自身も映画祭にいらしており、上映前に挨拶と上映後の質疑応答をされていました。
映画は、気仙沼市の唐桑町にある監督の家を舞台として、震災後、ばらばらだった3人の姉妹が実家である家にふらりと舞い戻り、それぞれの確執と思いを会話でぶつけていき、その後の人生の指針をなんとなく掴んでいくという半話で、最初の30分くらいは、ワンカットや非常に長い長まわしで、なんか役者の人の演技とセリフ回しも手伝ってか、舞台演劇を見ているような感じでした。
3姉妹を演じるのは、渡辺真起子、中村優子、藤真美穂。
なんか、女性同士の言い争いやぐだぐだ言っているのをずっと見るのは嫌なもので、私は個人的にはあまり好きな映画ではありませんでした。
気仙沼の風景や震災後の風景を映像に残しているという点では、その何ともいえぬ疲労感と自然の力というような独特の雰囲気をかすめとっていて、見る価値はあると思いますが、ストーリー自体は映画ではなく、舞台で見たほうが良いのではないかという内容でした。
監督も言っていましたが、低予算映画なので、その中での作り方というのがあったのでしょう。
体調はまだ咳がどうしてもなくなりません。日のよっては少しひどくなったかなと思う日もあって、ちょっと疲れ気味です。こんな状態なので、週末も無理をせずに家にいることが多くなりました。



本「マリス博士の奇想天外な人生」

2012-02-22 11:43:51 | Book
キャリー・マリス著、福岡伸一訳「マリス博士の奇想天外な人生」を読了。といってももう1ヶ月以上前に読み終えていたんですが、なかなかブログを書く気にならなくて、今になってしまいました。
この本は、PCR技術を発明したことでノーベル賞を受賞した分子生物学者のマリス博士が自分の人生や思っていることについて書いたエッセイを集めた形の本です。
このマリス博士は、いたずら気があり、学者学者した感じの人ではなく、とても自由な感じの人です。サーフィンが好きで、カリフォルニアに住んでいます。
いくつかの主張、例えばオゾン層破壊が原因で地球温暖化になっているというのはまったくのデタラメで、大きな区切りから見れば、地球は氷河期に向かっているはずだ、というこの博士の考え方は、オゾン層破壊と地球温暖化が自明の事実のように報道され、その反論をまったく耳にしたことのない人には、「この人、本気で言ってるの?」と思い、違和感があるかもしれません。しかし、私はこの考えに出会ったのが実は2度目でした。オランダに来た当初、義父がオゾン層の破壊で地球温暖化になっているなんて眉唾ものだと言っているのを聞いて、私はどうしてこんなことを言うのだろう…科学的事実なのに…と違和感を覚えたものです。マリス博士の主張によると、人間の活動なんて地球にとってはとても微細なもので、それが地球、果たしては宇宙の営みに影響を与えていると考えるのは僭越なことで、この科学的事実というのはデータの読み方でかなり変わるものだし、フロン禁止とその直後に使われた代替品の特許をもっている大企業とのしがらみのせいで大宣伝されたもので実質的にはその影響関係の程度は不明だということです。
また、HIVウイルスがエイズの原因だという説にも疑問を呈しています。
さらに、糖尿病をメカニズムはかなりわかっているので、それをうまく治癒につなげる研究にもっとお金と人材をつぎ込めば早急に治せる薬ができるはずなのに、政府は宇宙だとか、人間が感覚的には理解できない素粒子などの研究に多額の研究費を政府がつぎこんでいることが、科学者として理解できないと言っています。
こういうことは、私は一度も考えたことがなかったので、ああそういう考え方もあるのかと新鮮でした。
最近、メディアによる洗脳ということがよく語られますが、日本の社会では当たり前の常識が、別の世界では疑問の対象になっていることもあって、びっくりします。話は少しそれますが、「原子力の安全神話」もよく考えれば、何事にもリスクはつきもので、飛行機や車でもそうなのであって、「絶対安全」なんてどこにもないことはわかるはずでした。
この本、理系をめざし若い人が読むとよい本だなと思いました。アメリカのちょっと変人のノーベル賞受賞の科学者がどんなことを考えているか、気楽に読める本なので、興味のある人は是非読んでみると面白いと思います。
体調はまだ咳が残っています。先週の血液検査のCRPが11、今週が6と減っているので、悪化はしていないと思います。Hbが低くなっていて、鉄分が足りないということで、鉄剤を打ってもらいました。でもふつうの生活ができているので、良しとします。


映画「Tokyo Playboy Club」

2012-02-20 11:30:16 | Movie
ロッテルダム国際映画祭で、「Tokyo Playboy Club」(東京プレイボーイクラブ)を見ました。
監督の奥田庸介さんは、まだ20代の若い監督で、会場にもいらしており、上映前に挨拶をしていました。上映会場はかなり広いホールで、満員でした。
東京のしなびた繁華街で巻き起こる、かなりドタバタなコメディで、はっきり言って、とても楽しめました。暴力シーンも多いですが、笑いに昇華できている部分も多く、オランダの観客にけっこううけていて、始終笑い声が聞こえました。日本のお客さんより、オランダのお客さんのほうがよく笑っているんじゃないかと思いました。というのは、私が笑えないシーンでも、オランダ人は笑っていたので。
スピード感があり、ストーリーもちゃんとしていて、ほんと大衆が楽しめる映画です。下手にアーティステックに走ってわかりにくい映画よりも、こういう映画のほうが娯楽としてはいいですね。
出演は、大森南朋、光石研、臼田あさ美、赤堀雅秋、三浦貴大など。
見ると気晴らしになる映画です。ただ暴力シーンは苦手という人は、少し気をつけたほうがいいです。
体調は、咳がまだ残っています。朝起きると痰が喉あたりとどまっているせいかかなり咳き込みます。それでも少しは軽くなっているような気がします。気温も零下ではなくなり、少し暖かく感じられるようになってきたので、徐々に治っていってくれると思います。


映画「Hugo」

2012-02-16 13:52:18 | Movie
ずいぶん時間が経ってしまいましたが、ロッテルダム映画祭で見た映画について、感想を書きます。まず、第一弾は「Hugo(ヒューゴの不思議な発明)」。マーティン・スコセッシ監督の3D映画です。劇場でふつうに公開されるから、映画祭で見る必要はなかったのですが、時間の関係でこの映画がうまくスケジュールにはまったので見ました。
スコセッシ監督の映画というと、バイオレンスなものが多いイメージがありますが、これはそんな片鱗はなく、家族で見ることもできるとても良い映画でした。監督自身、12歳くらいの娘さんがいて、たまには一緒に見ることのできる映画を作るのもいいかなと思ったそうです。
舞台は、第一次世界大戦が終わったあとの平和な時代のパリ。主人公はヒューゴという名の少年です。彼は、お父さんと二人暮らしでしたが、突然お父さんを亡くしてしまい、パリの大きな駅の時計守をしているおじさんに引き取られます。彼に、時計のメインテナンスの仕方を教わり、巨大な機械仕掛けの駅の様々な時計を修理&保持しながら駅の屋根裏のスペースに暮らしています。おじさんは酒飲みで、少年に仕事を任せたまま、姿を消してしまいます。少年は、お父さんの遺品で、壊れた機械仕掛けの大きな人形をなんとか修理して、生き返らせたいを思っています。
それで、駅構内の小さな機械仕掛けのおもちゃなどを売っている店の頑固そうなお爺さんに興味を持ちます。そしてそのお爺さんが引き取って一緒に住んでいる女の子と友達になり、いろいろな謎を解いていきます。
とても映像がきれいで、一つの世界観を持っていて、映画の中で素晴らしい世界が成立しています。映画への愛、機械への愛、芸術への愛がうまく表現されていて、また一方で戦争がもたらす人々の心の疲弊も表現されています。
ひじょうに良い映画でした。
主人公を演じる少年と少女も、ちょっと大人びた感じでありながらも子どもらしいかわいさもあり、私の好みにぴったりでした。
シーン、シーンが美しく、あとで思い返すと、実写でなくて、特殊技術を使ったアニメーションを見ていたのかと思う雰囲気がありました。美しい絵本を見ているような感じなのです。
映画館の大き目のスクリーンで見ることをおすすめします。
子どもも楽しめる映画なので、物足りないなと思う大人もいるかもしれませんが、ちょっと子どもの心になってみてみると、すごくワクワクすると思います。
さて、体調ですが、月曜日に抗生物質を飲み終えました。熱は下がって、咳も減って、ずいぶんらくになりました。しかし、まだ咳が少し残っているのが気になります。まだ、抗生物質に耐えて生き残っている菌がいるということですから、これってもしかしてやっかいかもと思ったりしています。とりあえず悪化しないことを祈って、様子を見ています。

レナリドミド+デキサメタゾン 第25サイクル開始

2012-02-10 12:14:30 | 医療・病気
前回より早4週間が過ぎ、レナリドミド10mgとデキサメタゾン0.5mgの週3回服用、4週目はデキサメタゾンのみというサイクルの25回目が始まりました。
レナリドミド+デキサメタゾンの療法を始めてから約2年半、病状が安定してくれていて、ほんとうにありがたいことです。
11月頃にデキサメタゾンを2mgから0.5mgに減らしたのですが、その後風邪をひき、12月後半には一度治ったのですが、1月初めにまた風邪をひき、それが長引いて1ヶ月以上治らなかったので、デキサメタゾンの減量がこのことと関係があるのではないかと少し疑っていました。
先日、血液内科医K医師を受診したときに、このことを訊いてみました。デキサメタゾンは、炎症を抑える効果はあるけれど、感染症を抑える効果はないので、減量することで、風邪などの感染症にかかりやすくなったり、悪化しやすくなったりすることはないだろう、とのことでした。
デキサメタゾンを減らしたことで、顔のむくみも少しとれたような気がしますし、眠りやすくなったと感じています。デキサメタゾンの減量と風邪が関係ないことがわかり、気がねなく0.5mgで続けていけるので、よかったです。
体調は、抗生物質のおかげで、日ごとに咳の数が減りました。快方に向かっています。

血液内科定期受診 + 内科医受診

2012-02-07 11:51:54 | 医療・病気
金曜日に寒い中を無理をしてコンサートへ行ったという話を書きましたが、実はこの前日の木曜日に内科医(B医師)の指示を受けて、胸部レントゲンを撮っていました。その結果、問題はなし、つまり肺炎にはなっていないということがわかっていました。このこともあって、少し楽観的になってコンサートに行ったわけです。
その後、咳はとまらず、頻度は加速し、食欲もあまりなく、夜もよく眠れず、体力が落ちていきました。熱は38度前後。しかし、もうベッドにいるのがいちばん気分が良い状態で、起き上がるとふらっとする感じでした。
今日(火曜日)にCRP(炎症反応)を測ったら、88。とても高いというわけではないですが、先週より増えていました。熱もときどき、38.5度を超え、以前によく出た脚の付け根の痛みが出ました。身体のあちらこちらでバクテリアが増殖して、悪さをしているようです。また、目やにがすごく出るようにもなりました。こういう状態で、やっとB医師は抗生物質を出してくれました。薬の名は、DOXYCYCLINE(ドキシサイクリン)。初日に2錠、その後一日1錠で、1週間飲み続けます。飲んだ初日には、熱が上がり、パラセタモルを飲んでも38.5度くらいの熱が続きました。
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さて、同じ日にすでに予定されていた血液内科K医師の診察です。こちらは、フリーライト血液検査の結果を聞くのが主な目的です。前回、λの値が微増していていました。しかし同時にκの値も微増していたので、免疫力が上がっいるということで良い徴候ではないか、このまま様子を見てみましょうということでした。さて、今回、またまたλの値もκの値も微増していました。K医師の結論は、良い徴候ということで、このままの薬を続けましょうということでした。私もその意見に賛成だったので、問題なく、受診は終わりました。次はまた2ヶ月後です。
この日受診中、私はひどく咳がでて、自分の手のひらで口を覆って咳をしていました。診療が終わり、別れ際に、いつも握手をしますが、私は「今日は、握手はなしです。手に細菌がたくさんついているので…」と言って、握手を断りました。K医師は困ったような顔をして笑っていました。しかし、後で同行していた夫に、「握手を断るのはとても失礼なことだから、二度としないでね。汚いと相手が思ったら、その人はいつでも後で手を洗えばいいんだから。握手を断ると、相手をリスペクトしないという意味になるから…」と言われました。私としては、相手に迷惑をかけないためにって思ったのですけど、そうは取られないようです。
ひょんなことで文化ギャップを感じてしまいました。
体調はこういうわけで、

クラシックコンサート: Alisa Weilerstein(チェリスト)

2012-02-03 12:12:19 | Concert
雪が少し積もり、屋外は氷点下の金曜日、アムステルダムのコンセルトヘバウで、チェロ奏者のAlisa Weilerstein(アリサ・ワイラースタイン)のコンサートがありました。。米国出身の新鋭チェリストです。ピアノはInon Barnatanでした。
風邪で咳がよく出て、少し熱もあったので、直前まで行くか行くまいかすごく迷いました。夫はとても楽しみにしていて行きたそうで、私自身も小ホールでチェロの音が堪能できるコンサートなので、行きたいという気持ちは強かったです。でも、客観的に考えれば行かないほうがよい体調でした。
夫が「家にいなきゃいけないよ」と言ってくれれば大人しく家にいたのでしょうが、「コンセルトヘバウのすぐそばの駐車場に車止めるから少し歩けばいいだけだよ」と、行くのを促す調子だったので、自分自身の好奇心に負けてしまって、出かけました。
小ホールは名前のように小さいので、だいたいどこからでも演奏者がとてもよく見えます。私たちの席は真ん中あたりの席で、やはりこの寒さや雪のための交通の問題でちらほらと空いている席があり、その関係もあり、座高の低い私からも演奏者はよく見えました。
しかし、最初の10分は来たことを後悔しました。咳をこらえるのに必死で、もうたいへんっていう状態。チェロを弾いている方を見ると、首が引き気味になって喉を刺激してしまうので、首を伸ばし気味に上のほうに視線を上げ、天井近くや有名な作曲家の名が刻まれた壁ばかり見ていました。そうすると、純粋にチェロのとてもエモーショナルな響きがよく聞こえました。
演目は、ベートーベンのピアノとチェロのためのソナタ、バーバーのピアノとチェロのためのソナタ、ストラヴィンスキーのピアノとチェロのためのイタリア組曲、ショパンのピアノとチェロのためのソナタと、チェロとピアノが堪能できるものでした。
なんとか最後まで聞くことはできましたが、咳のことがあって、まったく集中できず、あまり楽しめませんでした。やっぱり家に居たほうがよかったのかも。
小ホールのコンサートは、楽器の音が直に楽しめておすすめです。体調の良いときにまた行けるといいなあ。
そして、この後、体調は少しずつ悪化していきました。