樹業人~風の通心

持続可能な社会や森林・建築・木製品について、気ままに こそっと考える為のネタ帳です。

ダムに沈まない村・水谷

2007-09-08 | 森林と樹と人
多賀町には、鈴鹿山脈から流れてくる川沿いに 3つの谷がある。

北が霊山・河内の風穴がある芹川沿い。
真ん中が、御池岳・高室山あたりが源流の犬上川北流。
私は ここの谷で育った。
南が 犬上ダムからの 犬上川南流。
昨日の滋賀県立大のサマースクールは この谷の
高取山ふれあい公園であった。

ここに行く途中の山も ナラ枯れがひどかった。


ちょうど用事があったので今日、芹川上流に行ってきた。
7月に行った時はそうでもなかったがこの谷も松・ナラともひどかった。

前に、すーっと通り過ぎた村が とてもきれいな風景だったので 
秋の景色もさぞよろしかろーと ササッと写真を撮りに寄る事にした。

ここが 滋賀県の嘉田知事がダム建設反対(?)を撤回した
「芹谷ダム」の建設予定地の 水谷 という村だ。





とても少ない戸数だけど 日本の里山の原風景が残っている。
田んぼや畑もかなりあり、鎖国になっても暮らしていけそうな村である。

なんだかおおごとになっていた。
聞くと知事が住民との対話集会を行っているとの事。
車はたくさん止まっているし、テレビカメラのようなものを持っている人もいた。
お寺での会議の最中らしく、その他の人は見なかったけど。

以前、東大演習林の蔵治先生のMLで「緑のダム」が話題になったり
 
そのMLでメールのやり取りをさせて頂いた<山の土木の師匠>である群馬の酒井さんに ダムを造らずに田畑のあぜなどを少しあげて水害の時だけ 薄く広く溜める「遊水池」にする方法がある事も教えて頂いた。

これだと自然環境も村もそのままに出来るし 工事が大手ゼネコンに行かずに 
地元の土建屋さんで出来るという事だった。

近所のおっちゃん達 よろこぶなーと 色々な業者さんの顔が浮かぶ。。。。。

酒井師匠に教えて頂いた「環境共生型土木事業」という言葉は新鮮だった。
色々教えていただくと それは「環境・災害・共生型土木事業」とも言える。
「水害に強い家を…」と言われた時には 目からウロコ だった。

今 建築では、地震に備えた家ばかりを考えているけど
こんなに樹が一斉に枯れて行くのを見たり、温暖化を考えると
上流のダムだけに頼るのではなく、下流でも水害に強い家や
街のありようも考えなくてはいけない時期にきているのだろう。

と いう事で 嘉田知事の考えをと滋賀県のHPを見てみた。
まさに 知事は そういう事が言いたかったのではと思った。

すごく わかりやすかった。
「遊水池」というやり方も、どこにどれだけ溜められるかとか
わかりやすく説明があった。学校や公園の運動場も入れてあった。
その結果、容量的に無理だという事になったようだ。

そうでなくても、犬上川に比べて芹川の橋は 
名神も新幹線も国道も川との間がタイトなような気がする。
ブリジストンの工場もあるし・・・。

.......................................................
いやー ここでブリジストンさんが わが工場をいざという時は
遊水池にお使い下さい なんて言って頂けたら まさに
環境貢献度も地元貢献度も ググッとUPするだろう。
株価はどうなるかわからないけど 私は一生 ブリジストンの
タイヤしか使わない。と ふと思いついてしまった。ハハハッ
.......................................................


芹川は、江戸時代に作られた川で 北側の彦根城に近い方を守る為に
南側の堤防は、低くしてあったらしい。
今 住宅や店が立ち並んでいる所が「遊水池」だったのだ。
確かに 昔は まだ田んぼがたくさんあったような気がする。

とかなんとか言っているが、芹谷ダムの変わりに検討された
遊水池のエリアに 今 まさに私が座っているここもどっぷり入っていた。

みんな知らないのだろうなー。
その為に 水谷の人が 自分のふるさとを捨てることを…。
(私だって、この間まで他人事だったもの。)

ちゃんと それを下流の人に知らせてあげて欲しい。
そして みんなで感謝しよう。

このダムは、水が増えた時だけ 水のトンネルを通して貯水されるらしい。
だから 普段はいつもの川の水が流れる。
お恥ずかしいことなのだろうが 水を溜めないダムがあるのを
初めて知った。少しは、救われた気分だ。水に沈まない。

でもそれで安心してはいけない。

森林が一斉に枯れる現象や 鹿の食害をなんとかしないと 水ではなく
土 と 岩 と 流木 と 鹿 が流れてくる。
いや ほんと。 

街の為の犠牲だけ強いられたのでは、河内の人はたまったものではない。
目の前で 枯れていく山を毎日見ているのだ。
早急な 森林対策もお願いしたいものだ。

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
同じ気持ちです (奥矢作炭やき人)
2007-09-09 11:59:32
同感です。私も、「目の前で 枯れていく山を毎日見ている」一人です。
本当に何とかしなきゃいけない。一本の川の流域でモノを考える必要がありそうです。県境をやめて、分水を境にするといい。実際は無理でも、その考えを根気よく説いていくことも必要かもしれない。
川の上流の山に炭をそっと置いて、山の神に心から詫び、感謝するようなことを続けていきます。
ちょうど、今日から私のところに大学生が数人き来ます。川の生態系を調査する人たちです。彼らに伝えたいです。山河を救うには、まずその土壌からだと思います。土壌は、地球そのもの。私たちは、大地から生まれ、大地の恵みで生かされ、大地へ戻るんです。

返信する
穴あきダム (市川純雄)
2007-09-09 15:55:27
穴あきダムといわれ、環境によいと建設計画が全国で目白押しです。しかし、問題点も指摘されています。河床とほぼ同じ高さに放流穴がありますので普段は貯水されませんが、洪水時には貯水され周辺の森林は水没します。水没した森林は枯死する可能性があります。また穴から濁水が長時間にわたり流出しますので、下流の動植物に大きな影響を与えます。穴の前には流木止めが設置されますが、穴が塞がらない保障はありません。というわけで手放して賛成するわけにもいかないようです。(世界7月号「穴あきダム徹底批判」を参照してください)
返信する
炭さんへ (樹子)
2007-09-09 19:10:21
もう そっと炭を置いているのではなく、みんなで バンバン置いていかないと

マズいのではと思いました。

そこに行ったのは 大切に山を守ってきて頂いたおっちゃんに 杉や桧にも一斉に枯れる可能性がある事と

炭をご自分でも焼かれると聞いていたのと 窯の後あたりは枯れてないと実感されていたので

もし…と 思ってお話に行ってきたのです。

私も先日の学生の方々に 林業の方のおかれているヒドい状況と

土壌 酸性雨の影響について話をしてお願いし次の世代を託して来ました。

環境学部なの。

返信する
先生へ (樹子)
2007-09-09 19:50:26
はい 万全だとは思っていませんが

森林が完璧になったとしても、洪水は防げません。

昔から氾濫する事があたり前で自然のままなので、それでよければよいのですが

村をどんな気持ちで手放す決意をされたか、また流域に住んでいる人々の命を思うと 簡単に私には どうだということが出来ないなーと 今は思っています。

もう少し 勉強してみます。

また 自然を大切にと専門家でもあり マニフェストに凍結をかかげなから 建設へと 決断された知事の説明をネットで読み 苦渋の選択をされているのだと推測できたので 今後どんな判断をされていくのか 私たちも何をして行かなくてはいけないのか 考えて行きたいと思います。
返信する

コメントを投稿