梅雨のじめじめとした暑さの中で、海に出かけるのが待ち遠しくてたまらない人も多いことでしょう。カラッと晴れた空の青さと海の青さに包まれる開放感は、日常のストレスを全て吹き飛ばしてくれます。
さて、そんな海の上で、天候さえ良ければ毎日のように過ごしている職業といえば、やはり「漁師」さんですよね。沖縄方言で「海人(うみんちゅ)」と呼ばれるとおり、まさに海と共に生きる人。
大海原へ颯爽と船を駆る勇姿、釣り上げた魚を船上で刺身にして乾杯する姿などをTVで見ると「うらやましい!」と思います。しかしその反面、肉体的にハードというイメージがつきまとうのも事実。憧れてはみても、実際に仕事にするとなると、二の足を踏んでしまうのは無理もありません。
そこで今回は、漁師の仕事の種類や実態を知るところから、就職する方法まで、「漁師になるには」のステップをご紹介します。
漁業の種類を知ろう
漁業を大まかに分類すると、以下のようなものがあります。
●沿岸漁業(沿海漁業)
陸地近くの水域で行われる漁業。10トン以下の船で日帰りの漁をする小型漁船漁業、定置網漁業のほか、浅海養殖業も含む。漁業従事者の約85%を占める。
●沖合漁業(近海漁業)
沖合で行われる漁業。沿岸漁業と遠洋漁業の中間規模のもので、
近海で数日かけて操業する。沖合底引き網漁業・サンマ棒受け網漁業など。
●遠洋漁業
外洋、または遠隔海域で行われる漁業。赤道水域やインド洋・大西洋でのマグロ漁業、アフリカ沖のトロール漁業など。1年以上にわたって行われる。
このほか、「一本釣り」「刺し網」「養殖」など、漁法によって、仕事内容や勤務形態は大きく異なります。もちろん、生活のペース、収入、必要な体力も……。
まずは、どんな漁の種類があるのかを知り、どんな漁に携わりたいのか、どんな漁なら自分にもできそうなのかを考えるところから始めましょう。
(社)大日本水産会が運営する
全国漁業就業者確保育成センターのホームページでは、漁業についての様々な情報が得られます。
また、7月23日(土)に大阪で、7月30日(日)には東京で、同センター主催の
「漁業就業支援フェア」が開催されますので、のぞいてみてはいかがでしょうか。
漁場と居住地に目星をつけ、漁を体験しよう
就きたい漁法が決まったら、次は漁場と住みたい土地に目星をつけます。沖合・遠洋漁業では、主要な基地だけでも約40港あり、沿岸漁業は全国に約1600の漁業協同組合が組織されています。
港の規模は大小さまざまで、都市に近かったり、田舎の漁村だったりと、周辺の環境も大きく異なります。生活の場として納得できる土地を選びましょう。
各都道府県や地域の漁業従事者育成センターでは、地元漁協と提携して、体験漁業の教室や研修生の募集を行うことがあります。先に紹介した全国漁業就業者確保育成センターに問い合わせれば、情報を入手できます。海釣りが趣味で、船に乗ったり、魚を扱うのに慣れていても、仕事で通用するとは限りません。体験・研修の機会を利用して、自分の適性を見直してみるといいでしょう。
就職先を探そう
漁業は、資格や許可も必要であるため、いきなり独立開業することはできません。まずは水産業を経営する企業に就職するか、個人の船主に弟子入りし、技術を習得するところからのスタートになります。
漁業体験先の船主にそのまま採用されるケースもありますが、そこに求人がない場合もあります。求人情報を入手するなら、やはり全国漁業就業者確保育成センター(要するに、ここで全ての情報が手に入るわけですね)にアクセスするのが早道。ホームページで求人情報を閲覧することもできます。
希望に合う求人がすぐに見つからなくても、求人が出やすい時期や希望地域の求人動向がわかるので、ぜひ活用してください。
このほか、(財)日本船員福利雇用促進センターが運営する
「船員求人情報ネット」でも、漁業関連の求人情報が公開されています。
希望する地域の求人情報が見つからない場合は、船主に直接交渉するのも手。「漁師になりたい」という熱意と、厳しい作業に耐える気構えをアピールすれば、受け入れられるかもしれません。
技術・資格を取得しよう
選考をクリアして、就職が決まったら、いよいよ漁師としての仕事を開始。漁業技術の習得はもちろん、船舶免許や漁業無線など、資格取得に向けての勉強も必要です。自治体によっては、受験のための研修会や取得費用の補助を行っている場合もあります。
実績を積んだ後、独立するなら
先にも挙げたとおり、まずは就職して実績を積む必要があります。その後、独立するには、船舶免許や漁業権の取得、漁業協同組合への加入などが条件となります。
組合員になるには、地域に定住していること、その地域で年間90~120日間以上の漁を行った実績、漁協の理事会などの承認などが必要。つまり、移住先の環境に不満があっても、一度決めたら簡単には移転できないということですね。だからこそ、最初の段階で、慎重に地域を選ぶ必要があるといえそうです。
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好きな海を仕事場にできるというだけでなく、日本の食卓においしい魚を届けるという点でも、やりがいを感じられる仕事なのではないでしょうか。
少しでも興味があれば、まずは調べることから始めてみませんか。
All About 2005年7月11日
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