金融庁が個人情報保護法の施行に合わせて全国の金融機関に指示した一斉点検で4日、九州では新たに大分、宮崎銀行など六つの地場銀行と福岡ひびき信用金庫(北九州市)で、延べ21万3580人分の個人情報が紛失していたことがわかった。1日に発表した9行分と合わせると、情報流出は計16金融機関、延べ41万8490人分に膨らんだ。
このうち、大分銀行は13万人余と最も多く、同行は「本店で一括管理せず、支店に個人情報が分散していたため、管理が行き届かなかった」としている。
また、各金融機関とも、「現時点では預金者への不正請求などの被害は出ておらず、外部流出の可能性は低い」と説明している。
紛失したのは顧客名や口座番号、取引金額などを記載した紙製の明細書、顧客データを記録したネガフィルム、CD―ROMなど。合併や店舗の統廃合に伴う作業などの際、誤って廃棄処分した可能性が高いという。
個人情報を紛失した九州の地域金融機関
金融機関名/紛失情報延べ人数
大分銀行/131767
宮崎銀行/43478
筑邦銀行/25946
佐賀共栄銀行/7913
宮崎太陽銀行/2625
福岡ひびき信用金庫/1792
豊和銀行/59
合計/213580
◆問われる社内管理体制
4月の個人情報保護法の全面施行から3か月が経過したが、地場金融機関で大量の情報紛失が発覚するなど、個人情報の流出が九州・山口でも後を絶たない。社員らの注意不足によるケースも目立ち、各社は情報管理を巡る意識の徹底や体制の強化を改めて求められそうだ。
金融庁の一斉点検指示で判明した九州地区の情報紛失は計16金融機関、延べ約42万人分にのぼる。店舗移転の際、顧客名や取引金額が記載された明細書を誤って廃棄するなど、人為的なミスが大半とみられる。
金融機関は信用が生命線なだけに、こうした流出が今後も続くようだと、業績への影響も懸念される。
金融機関以外でも、盗難や紛失による情報流出が相次いでいる。4月には福岡クボタ久留米営業所(福岡県久留米市)から約6万6000人の顧客情報が入ったパソコンが盗まれ、日産プリンス福岡販売(福岡市)の社員も車上荒らしで710人の顧客情報を入力したパソコンをなくした。
5月にも九州三菱ふそう自動車販売(同)の社員が車内に放置していた法人62社、個人26人分の顧客情報を盗まれたのに続き、6月にはNTT西日本の関連会社(山口市)で最大8万4000件の顧客情報紛失が明らかになった。
個人情報保護法の全面施行に合わせ、地場企業では社内規定の見直しやパソコンの持ち出し禁止などの動きが広がった。だが、情報の紛失などに歯止めがかからない現状は、依然として対策が万全とは言い切れない実態を物語っている。
情報管理コンサルタント会社、マクロナイズ(福岡市)の加藤敬介営業統括部長は「情報保護の規定を作成している企業は多いが、形骸(けいがい)化しないよう、社内の意識改革やチェック体制の充実など、実効性を上げる取り組みこそが重要だ」と指摘している。
読売新聞2005年7月5日
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