ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Wicked All Day

2009年11月10日 | C
Liz Calyle. 2009. Wicked All Day. Pocket Books Romance.

最近、Carlyleがいい!
"Tempted All Night"(下にレビューのリンク有り)から始まる新シリーズ第2弾。

Story:        
Dialogue:   
Hero:         
Heroine:     
Sensuality:  

Miss Zoe Armstrongが持っているものは多額の結婚持参金だけでなく、美貌と妖艶な魅力。が、社交界ではZoeは花嫁としては誰も欲しがりません。彼女によってくるのはお金持ち令嬢をターゲットとする貧乏で女たらしなどうしようもない男性ばかり。

愛のある結婚はどうせムリだと思っているZoeはそんな自分の社交界での地位をあきらめ半分で受け止めており、どうせならそんな立場を利用して楽しんじゃおうじゃないのと、次から次へと男性の心をつかんでは砕いていく日々。

が、ちょっと勢いが過ぎて、ある日とうとう親友のRobinとキス以上の事をしているところを見つかってしまい、Zoeのケアフリーな日々は終わります…。


Stuart Rowland、Robinの兄であるMercer侯爵はZoeの実家とはお隣で、Robinと共にZoeとは幼なじみ。
Zoeが快活で元気なのに対し、侯爵はシニカルで危険な雰囲気を持ち合わせています。MercerはいつもZoeとは、もし結婚するなら最悪のカップルになるだろうと思っていました。…RobinとZoeが抱き合っているのを見るまでは…!

RobinとZoeは婚約し、両家の人たちがしばしスキャンダルが収まるまでMercerの邸宅に滞在することになります。

滞在中、MercerはZoeに対して押し殺してきた気持ちや欲望、そしていつの頃からか芽生えていたZoeに対する執着心というまでの激しい気持ちと向き合うことになります…。

                 

満足満足の一冊!
MercerがZoeを昔から自分のものにしたかったのは読者にとっては明らかなんだけど、本人が無理矢理押し殺してきたその感情を受け入れていく過程は読んでいてドキドキ
Liz Carlyleならではのヒーローの感情の激しさがMercerにも見られます。
でも、どの作品のどのキャラクターもとっても個性的です。

前回作のTempted All Nightでカメオ出演してるZoe。この時にかなりのオテンバぶりを見せているので今回の作品は楽しみにしていました。
今回の作品内ではZoeがどうしてそんな風に振舞うのか、彼女の心情もよく分かります。
Zoeは、Robinとのありえない婚約を通して大人になっていきます。
その様子も読み応えありでした。

私も最初はかなり真剣な性格のMercerとZoeは不釣合いとさえ思ったけど、お話の中では二人が成長しながら真の感情に気づいていき、ちゃんとお似合いのカップルに。
本が置けませんでした!
オススメの一冊


シリーズ1作目:Tempted All Night 

The Confessions of a Duchess

2009年07月22日 | C
Nicola Cornick. 2009. The Confessions of a Duchess. Quills/Harlequin Mills & Boon.

The Brides of Fortuneシリーズ1作目。

Story:       
Dialogue:   
Hero:        
Heroine:    
Sensuality: 

Fortune's Follyという村のがめつい地主Sir Montague Fortuneが中世期に作られたとんでもない村の税法を見つけます。
Dame's Tax…(婦人税とでもいいましょうか^^;)は、今から1年以内に結婚しないと独身女性の結婚持参金の半額は地主のものになる…というとんでもないもの。

これを聞いた貧乏紳士達は、あせって結婚しようとする女性達とその結婚持参金を狙ってFortune's Follyに群がり、村はあっという間に英国一の結婚市場に。

Laura Coleは亡くなった公爵である夫が何も残してくれなかったため、この村で娘と召使達数人で静かに暮らしていました。

でもこのバカな税法がいう独身女性とは未亡人も含みます。
もう結婚は絶対に嫌なLaura。村の女性達と共に仕返し作戦

そんな中、Lauraが4年前に関係を持ったMr.Dexter Anstrutherが村へやってきます。
お金持ち令嬢と交際を始めるDexterに、あの頃からまだ忘れられないでいる思いが甦り、強く惹かれます。

4年前、Lauraに激しく恋し冷たく捨てられたDexterはLaureと再会しても冷たい態度。
あんなに忘れようと努力したLaureの「完璧な公爵夫人」の魅力。
彼女を目にするたびにその魅力に抗う力は急速に弱まってしまいます。

         (オージー版表紙)
    
昔恋に落ちたけど、勘違い・すれ違いで別れ、そして再会し苦い思い出が甦る…というCornick得意のパターン。
「あーこれもそのパターンか」と思わざるを得なかったのでハートマークは満点にはしませんでした。もうちょっと新鮮さを味わいたい…!
でも、H/Hの激しい感情は読んでてドキドキだし、Dame's Taxに対する仕返しがユーモアたっぷりで、本が置けませんでした。
(子育てしようよ


トリロジー(3連作)だけど、Eブックの前篇もあるので4作あることに。
Ebook Prequel: The Secrets of a Courtesan
Book2: The Scandal of an Innocent
Book3: The Undoing of a Lady

N.Cornick、いいですよね
ハーレクインの翻訳を読んだ日本の読者の方も多いと思います。
私は他にはこんなの↓読んでます。

Lord of Scandal(A Season for Suitors)
Unmasked(A Seanson for Suitors)
Deceived(←この作品のヒーローNick Falconerと今回のThe Confessions...のヒーローDexterは友達)
True Colour


Tempt the Devil

2009年06月30日 | C

Anna Campbell. 2009. Tempt the Devil. Avon Historical Romance.

デビュー作"Claiming the Courtesan"が大ヒットしたA.Campbell。
それからも人気の勢いは衰えることなく、今回も期待のリージェンシー・ノワール3作目。でも私からは期待はずれのハートマーク2個半です。

Story:        
Dialogue:   
Hero:         
Heroine:      
Sensuality:  

今回のヒロインは"Claiming the Courtesan"のSorayaの友人Olivia。
Oliviaは社交界の紳士達には飽き飽き。
真の情熱を感じたこともなく、恋に落ちるなんて考えたこともありません。
今度選ぶ紳士を最後に、引退を考えています。

Oliviaが次の「客」を選ぶための夜会に出席していたJulian(Erith伯爵)。
英国だけでなく海外でも浮名を流したJulian。英国へは疎遠になっていた子供達と和解するためもあって帰って来ていたのですが、ロンドンで一番人気の高級娼婦がフリーとあっては彼女を逃す手はありません。
そんなJulian、Oliviaを一目見ただけで彼女を絶対自分のものにしたくなります。

            

という風に、あらすじはなんだかお定まり。
でも、内容はCampbellらしい濃いものになっています。
特にH/Hの心情はくどいほど詳しく書かれています。

が、暗い…。

ま、ノワールだからそうなんだろうけど^^;

Oliviaの過去に関する部分になると特に暗く、そんなつらい過去を克服してJulianと恋に落ちる過程がいいと感じた読者からの高評価がアマゾンでは出ているようです。
私は今回のこのお話はそこにロマンチックさを感じませんでした。

Julianが体でOliviaに本当の情熱を教えてあげる過程で、二人は本当の愛を知ることになっているんだろうけど、H/Hの性格やその魅力が分かるような会話はないし、途中であきるほど長いラブシーンばかりが続いて、私はもううんざりでした。

(貴重な育児の合間を縫っての読書なのに^^;)


Tempted All Night

2009年05月27日 | C
Liz Carlyle. 2009. Tempted All Night. Pocket Books.

アマゾンでも好評!

今回のヒロインは2007年の"Never Lie to a Lady"のヒーローLord Nashの妹だけど、今回のはその"Never…"トリロジーの続きではなく、新シリーズの1作目かな。
なんにせよ、Carlyleファンにはおなじみ、おいしい役のMr.Kembleつながりはあります。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

Lady Phaedra Northampton (Phae) は、ちょっと婚期は過ぎてスピンスターだけど、ちゃんとした貴婦人。
聡明で実は美人なのに、胸にはさらしを巻き、グレーのドレスを着て極力目立たないようにしていました。
実は誰にも言えない秘密を抱えていたので、静かに田舎の兄の邸宅で暮らしていました。
が、ある時、召使の妹(姉?)がロンドンの怪しい世界へと引き込まれ、彼女を救うべく社交シーズンがもうすぐ始まるロンドンへ家族とやってきます。
そして、ある用事のためMr.Kembleのお店へやってきたPhaeの目の前で殺人が起こります。


父親との確執から、たった一人の伯爵家の跡継ぎなのに、傭兵/スパイなんてやっていたTristan Talbot (Avoncliffe子爵)。
ロンドンに戻ってきてからは目的もなく、女性なら誰もが振り向く容姿をフル活用し浮名を流す日々でしたが、ある日突然死の床に伏した父に呼び出されます。

そんな父の最後の願いとは、悪名高い売春宿の経営者とロシア側のスパイの関係を探る特命でした。

この事件を探れば探るほど、Lady PhaeのところへもどっていくTristan。
簡単だと思っていた任務が、魅惑的なPhaeが絡んでくると複雑に…。

              

PhaeとTristanの互いに対する気持ち、読みがいがあります。
L.Carlyleならではの情熱さに、今回は「容姿だけはいい」と言われていたTristanの奥の魅力をPhaeが引き出す様子や、それに気づいてさらに惚れるTristanも魅力的でしたヨ

Phaeの過去の秘密、泣けます。

サスペンスのほうはそんなに複雑なものではないけど、お話のスパイスアップには上等。
Carlyle独特のユーモアも冴え、最後までズンズン読み進んでしまうかも!
私からはオススメです。

Three Little Secrets

2009年03月13日 | C
Liz Carlyle. 2006. Three Little Secrets. Pocket Star.

先日レビューした"Two Little Lies"に続く3作目。3連作の最終巻です。

Story:       
Dialogue:  
Hero:        
Heroine:    
Sensuality: 


これも再会もの。

若く純真で世間知らずなMadeleineと、スコットランドのマイナーな貴族の次男坊でロンドンでは無名なMerrick MacLachlanの二人は若かった頃に激しい恋に落ち、スコットランドで駆け落ち結婚。

が、その直後、政治的野心が強いMadeleineの父親の画策で、二人の結婚は「なかったもの」となり、二人の仲は引き裂かれます。

Madeleineのほうは特に、Merrickはお金を受け取ってハネムーン中なのに姿を消したと思い込まされていました。


13年後、未亡人となっていたLady Madeleine Bessettはロンドン郊外に屋敷を買うことにしますが、なんとオーナーはそんな裏切り者Merrick。

それでも、少し問題を抱えた息子を良い医者や専門家に見せるためにはこの屋敷が欲しいMaddie。
過去に受けた心の傷を必死に隠しながら、今となってはただの冷酷なビジネスマンになっているMerrickの態度にガマンしてこのままその屋敷を購入しようと考えます。

問題は、息子Geoffreyの出生のことをMerrickに知られたり、過去の駆け落ち結婚のことをしゃべられてしまうと、MaddieとGeoffreyの人生は台無しになってしまいます。

しかし、一度は愛のために結婚し、二度目は子供のために結婚し自分を押し殺してきたMaddie。
未亡人になった今、息子だけでなく自分の幸せを追求するためにもこのロンドンの邸宅は購入することに決意。


13年前に自分のもとから連れ去られた花嫁と再会してびっくりしたのはMerrickも同じ。
何としてでも結婚の誓いを守ろうとしなかった若くて世間知らずなMaddieから裏切られた気持ちでいっぱいのMerrick。暗く苦い13年間を過ごしてきました。
今さら、と彼女とのつながりを絶とうと必死に絶とうとしますが、屋敷購入のことなど、彼女との係わり合いは続きます。

                        

二人とも怒りをぶちまけ合い、ケンカばかりなので、ロマンチックな雰囲気は最後のほうまでありません。
ただただ互いの誤解や、つらい気持ちにお話は集中しています。

息子の「病気」のことや、駆け落ち結婚が本当に無効になっていたのかどうか二人が突き止めようとするのは他の作品ではあまり見たことがないものだったけど、基本ストーリーが2作目のプロットとそう変わらないため、ワンパターンの印象が強いです。

Book1: One Little Sin
Book2: Two Little Lies

Liz Carlyleの最近の3連作:
Book1: Never Lie to a Lady
Book2: Never Deceive a Duke
Book3: Never Romance a Rake

最近出版された"Tempted All Night"、未読の山入りです。

Two Little Lies

2009年03月11日 | C
Liz Carlyle. 2005. Two Little Lies. Pocket Star.

この3連作の1作目One Little Sinでがっかりだったので、この2作目には手が出ずにいましたが、たまたま図書館で見つけたので3作目と一緒に借りました。

熱々のロマンスというよりは、二人がお互いについた小さなウソのせいで運命はガラッと変わってしまう…。再会しても、深く恋に落ちていたあの頃は幻想だったのか…という切なくも感情が激しくぶつかり合うお話。私からはオススメ。
                      
Story:       
Dialogue:  
Hero:        
Heroine:    
Sensuality: 

若かったころ、イタリアから来たばかりの美しいオペラ歌手Vivianと激しく恋に落ちたQuin(将来のWynwood伯爵)。

しかしある日、「私と結婚する気はある?」というVivianaの問いに対し、身分の違いなどを理由に鼻でせせら笑ったQuin。
これをきっかけに、Vivieは妊娠のことを告げることなくQuinの前からあっさり姿を消し、イタリアへ帰国。イタリア人貴族と結婚してしまいます。

9年後、未亡人となったVivieは再びロンドンへ。伯爵となり婚約者までいたQuinと再会。

黙って去ってしまったVivieに対し苦い思いを今でも抱えるQuinはVivieが戻ってきた動機を疑ったり、つらく当たります。

Vivieも、もう昔の恋だと割り切ろうと努力するかたわら、Quinの横暴な態度にもカチン。

二人は激しくぶつかり合います。

                         

Carlyleの新シリーズはサスペンスが入っていて、ちょっと違うものが読んでみたかったところ。
しかも、この昔の3連作の1作目はつまらなかったので、あまり期待せずに手に取りました。

が、読んで得した気分に

「あの時『愛している』と正直に言っていたら幸せな人生が送れたのではないか」という思いをぬぐいきれずVivieと別れてからずっと暮らしていた伯爵。

あの時正直に妊娠のことを打ち明けていたら結婚してくれただろうか、愛されていなくとも幸せになっていただろうか、いや、自分が選んだ道で良かったんだと必死に自分に言い聞かせてきたVivie。

と、二人がその時は最良の決断と判断してついた小さなウソ。

再会すると、離れていた時の空虚で不幸せだった時間は消え去れり、昔の思いがよみがえります。
特に、あの頃とは違い随分大人になった伯爵のほうは、あの時のあの一言が賢明だったとは思えなくなってくるんです。


L.Carlyleはこういう再会ものがウマイのかも。
もう一つこういうので記憶に残っているのが、"A Woman of Virtue"。2006年にレビューして、「A Must Read」とオススメしています。
まだの方、チャンスがあればゼヒどうぞ。


Book 1: One Little Sin
Book 3: Three Little Secrets

Never Romance a Rake

2008年11月21日 | C
Liz Carlyle. 2008. Never Romance a Rake. Pocket Books.

3連作の最終巻。Carlyleのベストではないけど3冊とも全部楽しめます。

Story:        
Dialogue:    
Hero:         
Heroine:     
Sensuality:  


悲しい過去のせいでKieran(Rothewell男爵、1作目のヒロインXanthiaの兄)は社交界には一切顔を出さず、妹の幸せ以外はどうでもよく、ウィスキーで溺れ死んでもいいとでも言いたそうな生活を送っていました。

ある晩、賭博仲間の間では悪名高いフランス人貴族Valigny伯爵のとんでもない賭けに応じます。
勝てばValigny伯爵の娘と結婚できるというものです。

実の父には捨てられ、亡くなった母の後の恋人で腹黒のValignyにいいように扱われているCamille Marchand。貴族に対する信頼感はゼロ。
賭けの対象事にされ、それを引き受けたRothewell男爵もCamilleにとってはValignyと同じレベルの輩。
でも、ここで結婚という手を使ってValignyから離れないと今後の人生はさらに地獄。
男爵の手に自分の人生を委ねるという人生のギャンブルに挑みます。

                            

登場人物の苦しい過去が何だったのか、なかなか明かされないお話にはイライラしてしまう私。でもいいんですよね、これが。

あと、最初にH/Hが出会うシーン。二人の間のいわゆる「ビビビ」というやつ?^^;が、それほど電撃的ではなくとも、この時の直感が後々どう変化していくかを期待を持って想像させるものがあります。

あとは、数ヶ月前に読んだので細かい部分は覚えていない…という感じですが、H/Hの人物描写も良かったです。

ちょっとWallpaperですが、エンターテイメント性は十分あり、買っても損したとは思いませんでした。


Book1: Never Lie to a Lady
Book2: Never Deceive a Duke

Unmasked

2008年10月06日 | C
Nicola Cornick. 2008. Unmasked. HQN Historical Romance.

Scarlet PimpernelやZorro、Robin HoodやそしてWilliam Wallaceなどのアウトローにいつも魅了されてきたというCornickが今回は女性アウトロー、Glory Girlsを創り出しました。

Story:       
Dialogue:  
Hero:    
Heroine:  
Sensuality:

スコットランドの侯爵家の跡継ぎのNic falconerはなぜか少佐として英国に仕えるハンサムで誠実な紳士。
いとこであるRashleigh伯爵の殺人容疑者である女性版ロビン・フッド、Glory Girlsを見つけるため、Peacock Oakという北部の静かな町に向かいます。
そこで、魅力的なMariと再会。
Nickは、ロンドンのパブで伯爵の殺人が起こる直前に"Molly"として変装していたMariと出会っていたのです。
それ以来、彼女のことがどうしても忘れられなかったNickは、彼女を誘惑して秘密をさぐり出そうとします。

Glory Girlsとの関連だけでなく、それよりももっともっと深刻な秘密を抱えていたMari。命がかかっているのでNickの魅力や誘惑に必死に抵抗しようとするけど、彼のかっこよさだけでなく、誠実さやたよりがいのあるところに惹かれていきます。

H/Hのロマンスには物足りなさを感じたけど、Mariの友人達の恋愛模様もうまく絡んで進行し、最後のほうは「この先どうなるんだろう」と思わせる展開で、最初から最後まで楽しめました。


                     

あらすじではヒロインMarinaの「秘密」に関してはやっぱり一切触れてないので、ここからはネタばらし。でも、別に知っていても台無しにはならないので…。

彼女が誰にも言えないという秘密は、彼女の過去、生い立ち。
英国では2007年に奴隷制度廃止200年記念をお祝いしたばかりで、偶然にも、当時活躍したWilliam Wilberforceのことを描いた"Amazing Grace"という映画を私は最近ちょうど見終わったばかり。
その影響がなかったとしても、この本のセールスポイントであるアウトローのことよりも奴隷として残酷な扱いを受けたMarinaの人生や人となりのほうが読んでいて興味深く、読後もかなり印象深いです。

A Lady's Guide to Rakes

2008年04月28日 | C
Kathryn Caskie. 2008. A Lady's Guide to Rakes. Warner Books.

私は初挑戦のCaskie。ちょっと期待していたんですけど、がっかり。

Story:         
Dialogue:    
Hero:         
Heroine:     
Sensuality: 


数年前にお金持ち狙いの紳士(とはいえないような男)にだまされ、結婚式の当日に教会に置き去りにされたMeredith。
すっかり社交界では顔を出せなくなってしまっていたのですが、彼女のような経験・思いを他の誰にもさせてはいけないと、Meredithは独自に女たらしの研究をし、本にして出版するため日々努力していました。
そして現在の研究題材はロンドン一の女たらしAlexander(伯爵家の跡継ぎLord Lansing)でした。

ハイドパークの上空で気球に乗り、自分が仕掛けた娼婦にAlexがどのように反応するかを観察していたMeredithですが、研究熱心さのあまり、気球が降下しすぎて落下。MeredithはAlexの上に不時着します。

ほんの数ヶ月前までは好きなことをやりたい放題で、ロンドン一の放蕩ものとしての名を馳せていたAlexですが、実はある不倫事件を機に父親からおしかりを受け、お小遣いを減らされて、マジメ人間に転身していました。

ハイドパークでMeredithと出あったことが父親の耳に入り、なぜかAlexがMeredithを誘惑したと思い込んだ父親はAlexに彼女と結婚するようにいいつけます。さもないと何も相続できないゾと脅します。

結婚だけは絶対したくないAlexでしたが、Meredithの燃えるような赤毛と透き通るような青い目や、快活な性格を思うとまんざらではありません。
彼女を自分のものにすべく、ロンドン一の女たらしの名に懸けて、Meredith誘惑に乗り出します。


                    

デビュー作Rules of Engagementが気になっていた時期があったんですが、レビューをRaquelさんちのブログで読んでもうちょっと待ってみようとと思ってたんです。
今回、3作目だし名前もよく見かけるようになったし、図書館で手に入ったしで、手に取りました。
うーん…、がっかり。
手にとってみると本が薄かったのであまり内容の濃い話は期待してなかったのですが、それでも、ねぇ。短編だって読後にため息が出るようないいお話しはあるじゃないですか…。




ネタばらし
ネタというほどのものじゃないんですけど。
ヒロインのMeredithは、堅実だけどケチで商売のことしか頭にない商人のMr. Chilltonと結婚するんだ!と意気込んでいるのに、色々あってAlexと一夜を共にします。
そこでChilltonは真実を知らなくても、交際中に他の男性と寝たんだから、Chilltonに正直に話すか、そうでなくても彼とは一切縁を切るのが普通だと思ったんです。
でも、さらにさらに、婚約してからもAlexとまたそういうことがあったにも関わらず、自分のRespectabilityのためにChilltonとの結婚を何が何でも実現させようとするMeredith。
同情もなにもあったもんじゃぁありません。
ChilltonもMeredithのことをは愛していたわけじゃないけど、それでもMeredithに対して失礼なことは一切しなかったし。

もうひとつ、Meredithを女学校時代からいじめていた女性がいるのですが、この仲直りの展開もかなり信じがたいものでした。
読んでいてバカバカしかったです。









(ネタばらしおわり)



アマゾンでは高評価です。
私には不満足の1冊。ヒーローはナルシストで、ヒロインは自分のことしか考えてない自分勝手で幼稚な人。お話自体もありふれた筋です。
他にもっといいお話ならたくさんありますよ。

Never Deceive a Duke

2008年03月11日 | C

Liz Carlyle. 2007. Never Deceive a Duke. Pocket Books Romance.

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

1作目"Never Lie to a Lady"の終わりのほうで、公爵家の跡継ぎだと知らされたGareth Lloyd。
公爵家で子供時代を過ごしたGarethですが、とにかく悪い思い出しか残っていません。公爵家の人々とも領地とも何の関わりも持ちたくなかったのですが、やむなく公爵家に出向かいます。(決心するまでが長い…)

さっさと領地のことや遺産相続のことなど諸々の用事を済ませたらロンドンへ戻って来るつもりだったのですが、美しい公爵未亡人と対面し、全てが変わります


Warneham公爵夫人、Antoniaはこれまでに2度結婚し未亡人になっていました。
親の言いつけで結婚し、あまり幸せとはいえないかごの中の鳥のような人生を送ってきていたAntoniaは、もう二度と結婚しないと心を決めています。
ですが、公爵の死亡にAntoniaが絡んでいるのではないかといううわさが立ちはじめたばかりか、これまで行方も知れなかった跡継ぎが現われ、Antoniaの運命は彼の意思に委ねられることに。

自分の自由への道の妨げでもあるGarethに対し、Antoniaは会う以前からGarethに対し偏見がありましたが、Garethのぶっきらぼうな優しさに少しずつ打ち解けていきます。
Garethは、亡くなった公爵が再婚していたとは知らなかったので、若くて美しい未亡人と対面してびっくり。冷たい女性だと思ったけど、彼女の不可解な行動は彼女の過去と何か関係があるのではと心配し始めます。


Garethの幼少・少年時代が1章ごとに少しずつ明らかにされていくのですが、こんなにひどい少年期を過ごしたヒーローのお話は始めて。
それでもAntoniaの殺人容疑を晴らすための努力や、彼女の心の傷のことなどを、まるで自分の少年期は何でもなかったことのように気遣ったりするヒーローは優しさに溢れていました。

ラブラブという感じのロマンスではなく、ちょっと暗いですが、二人の間の緊張感が良かったです。

Book1: Never Lie to a Lady
Book3: Never Romance a Rake


Untouched

2008年01月09日 | C

Anna Campbell. 2007. Untouched. Avon Historical Romance.

Campbellの期待のリージェンシー・ノワール第二弾。
シリーズではありません。

Story:         
Dialogue:    
Hero:          
Heroine:      
Sensuality:   

子供の頃にかかった病気のせいで頭がおかしいとされ幽閉されていたSheene侯爵。そんな彼の"気を紛らわす"ために無理やり誘拐されてきた未亡人Grace Pageとの囚われの身同士の(暗い)ロマンス。

Sheen侯爵をこの生き地獄に陥れたのは、彼の後見人でもある叔父。
この叔父は、爵位を継げる可能性はほとんどゼロだけど、絶対に自分が侯爵にふさわしいと信じている頭のおかしい極悪非道人です。
なので、両親を亡くし、同時にひどいアレルギー反応(?)で病気になっていた少年Sheenを、賄賂を渡したヤブ医者にみせます。そして「侯爵としてふさわしくない」と偽の診断書を書かせ、幽閉。自分が実権を握ります。

叔父は、Sheenに死なれると彼のいとこに爵位が渡るので、Sheenを生かしながら閉じ込めておくためならどんな手段でもためらいません。
番人は野蛮な下男たち2人で、敷地はグルッとツルツルの壁で囲まれていて逃げることは不可能。
何度か逃亡を試みて実際に外に出たこともある侯爵だけど、彼を手助けした人たちには叔父の手によって不幸が。それに、連れ戻された侯爵もひどい目に。

お話前半は、「誘拐されてきた、何かの間違いだ、解放して」と懇願するGraceと、そんな彼女も叔父の非道な企ての一部だ、彼女を信用できるわけがないと信じ込んでいるSheenとの二人が少しずつ徐々に打ち解けていく様子です。

でもこれが、けっこうつまんなかったです。
Sheen側の心情とGrace側の心情と交互で描写されているのですが、同じことの繰り返しです。

でも後半は盛り上がります!
ハンカチのご用意を。

                      

"Claiming the Courtesan"で問題になった、Forcible seduction、強制的な誘惑…についてですが。
レイプとまではいかなかったけど、ヒロインが「これは良くない」と言っていたけど、結局ラブメーキングがあったシーン。

私自身、その問題のシーンに関してはかなり居心地が悪かったです。今でも、なんで嫌だって言っているのに公爵は強引にいったんだろうって。

RT Book Reviewsにこのことに関して面白い記事があったのですが、その中では「フェミニズムが女性のちょっとしたファンタジーを殺したとも言える」と言っています。
女性がNoと意思表示したらその時点で止めないと犯罪になる、とやっと女性を守る決まりができたのはフェミニズムのおかげですが、この現代の公正基準の影響で、この強制的なラブシーンに過剰反応したんだろうと。

時代の変化は価値観の変化でもあります。
フェミニズムのおかげで今やヒロインは処女じゃなくてもよくなったし、結婚前のラブシーンもOK。Hotなものに関しても様々なものがあり、とにかく全体的に様々なジャンルが生まれました。
同時に退廃したものも。
こういう男性優位の強引なラブシーンは70-80年代にかなり流行った傾向だそうですが、でも、現代の価値観や道徳基準がこうして変化し、読者の嗜好も変わったおかげで、今回のForcible seductionのカムバックに、私も含めて若い読者がびびったということでしょうか。

ロマンス作家Anne Stuartは、主人公が何かの理由で自分に怒りを感じていて自分にほとほと嫌気が差しているとき、Forcible seductionというのは自分はもう腐っていると自身を最低レベルまで卑下する役割を果たす、と言っています。
それと、StuartはForcible seductionを3つに分けています。

・実際のレイプ - これは暴力であり犯罪
・ファンタジーのレイプ - Hな想像です。めちゃめちゃハンサムでセクシーな自分の好みの人がかなり強引に自分を誘惑する
・Forcible seduction - 図らずも何かの企みごとに巻き込まれたり、自分にはどうにもできない状況にあるせいで、イヤイヤながらも双方に同意があった上でのこと。

そういえば、今回の"Untouched"では、Campbellが「これこそが犯罪であるレイプだ!」と言わんばかりに、Forcible seductionとの違いを見せつけている一シーンがありました…。
これは恐かった…


さてさて、みなさんの評価やいかに。

私はこの一冊は十分楽しめたけど、暗いお話はこれでしばらくお休みにしたいです。
それに、囚われの身なので、リージェンシーならではの舞踏会などのシーンなどが恋しかったです。


"Claiming the Courtesan"のレビューは
こちら


Deceived

2007年11月30日 | C
Nicola Cornick. 2006; 2007 Deceived. Quills Harlequin Books S.A..

Story:        
Dialogue:   
Hero:         
Heroine:      
Sensuality:  

Princess Isabella Di Cassilisは、亡くなった夫の借金のせいで自分が監獄送りになる寸前。幸せでなかった結婚が終わったと思ったら、この借金地獄。これから少しでもいい暮らしをするためにもIsabellaは究極の最終手段に出ます。
すでに借金地獄でフリート監獄に入れられている男性と結婚するのです。そうすれば妻の所有財産(借金を含む)は夫のものとなり、Isabellaは借金から解放されます。すでに借金まみれの夫からは何も取れるものはないし、すでに監獄にいるので、新しい夫にもこれといって何も影響は出ません。

しかし、いざ結婚してくれそうなJohn Ellisという男性と対面すると、Isabellaは愕然。
Isabellaが過去に婚約して結婚寸前までいったMarcus Stockhaven、Stockbridge伯爵だったのです。
なんと12年前Isabellaは、文字通り、Marcusを結婚式当日に教会の祭壇に置き去りにしたまま、外国の王子と結婚していたのです。

                                     

以前読んだ"True Colours"というお話とよく筋が似ています。

昔婚約していたけど、ヒロインのほうがやむをえない状況で別の人と結婚してしまうんです。
お互い愛し合っていただけに、詳しい理由を知らされないままのヒーローは「裏切られた」とひどく傷つきます。
ヒロインのほうは、家族のためにしたことなのに、本当に愛する人からはひどく誤解されたままだし、本当の理由を聞き出そうとさえしないヒーローに対し、「それだけの気持ちだったのか」とひどく落胆。結婚生活も不幸のどん底。人生そのものにうっすらとあきらめさえ感じています。

そしてこれから少しでも幸せに生きていこうと思っている矢先、二人は再会します。
昔の互いに対する思いが蘇りますが、裏切られた思い出のほうが強く、「二人とも若かった」とか「もう二度と裏切られたくない」という気持ちが先行してしまいます。

でもヒーローのほうが、ヒロインの不幸な過去を少しずつ知り始め、そして昔の面影を見る度に、「あの時本当は何があったんだろう」と思い始めるのです。


と、二つのお話が似すぎているので、どちらか先に読んだほうに感動して、もう一つのほうにはあまりめずらしさは感じません。
でも少なくとも、どちらか一冊は読む価値アリ!
なんと言っても、Cornickの時代背景描写は優れています。それに、H/Hの心情や人生の様子、そしてこのフリート監獄での結婚など、彼女の奇抜なアイデアはなかなか他のHQ作家には見られません。


私は"True Colours"のほうを先に読んだのでそちらのほうがよく見えるのですが、"Deceived"を先に読んでいたらこちらを薦めているかも。

An Independent Woman

2007年11月09日 | C

Candace Camp. 2006. An Independent Woman. Mira Historical Romance.

日本のロマンスファンのブログを拝見するとCandace Campの名前がよく出てくるので、私も試してみました。
An Independent…は前半は典型的なHQのお手本どおりの「安全型」のお話でしたが、後半崩れでした。


Story:       
Dialogue:  
Hero:        
Heorine:    
Sensuality: 

Julianaは、幼い頃父が亡くなってしまうと何も残されておらず、母と一緒にTrenton家の厄介者として敷地内の離れ家屋で暮らします。
母のいとこであるLilithと主人のTrentonとその子供達はものすごくイジワルで、Julianaはシンデレラのような子供時代を過ごしました。
しかし、彼女と同じ状況にいた子供がもう一人いました。両親をなくし、Trenton一家に引き取ってもらっていたNicholasです。
お互い何も言えない・できない立場で、他に友達もいず、二人はすぐに友情を築きます。

しかし、ある日Nicholasは突然家を出てしまい、二度と戻ってくることはありませんでした。

そして二人は成長して大人になり、とある夜会で再会します。

Nicholasはお金持ちの立派な紳士となり、伯爵(だったかな?)の爵位も継いでいました。
Julianaは影のような存在のコンパニオンの仕事をしてボチボチ暮らしていました。


本の裏に書かれているあらすじはネタばらしになってます。

ここで、イジワルな女性のコンパニオンなんて地味な仕事をして、苦虫を噛み潰す毎日のJulianaの生活を目の当たりにしたNicholasは、結婚を申し込みます。
でも、これが起こるのは、お話の中盤を過ぎたあたりです。

びっくりしたのは、題名は「An Independent Woman」なのに、Julianaはあっさり結婚を承諾してしまうことです。
悩みに悩んだ末…という印象を与えたかったのか、2ページほどJulianaは悩み、「断るぞ」という印象を読者に与えておいたのに、その場になってあっさりYesと言ってしまうその理由がヒロイン自身にも読者にも結局分からずじまいでした。

それに、後半はお粗末なミステリーに集中してしまいます。


Julianaが「あのNicholasがこの同じ部屋にいる、私のことわかるかしら」とか、「もし私だと分からなかったら傷つくから、やっぱり私がここにいることに気づいてほしくない」などの気持ちは読んでいてドキドキ。
NicholasがすぐにJulianaに気づいて、誰にでもそっけなかった態度を一変させて昔の頃のような嬉しそうな表情を見せた時のことや、二人が再会してからすぐに、少しでも一緒に時間を過ごそうとする様子などは、ロマンチック。
と前半は夢のようなシンデレラストーリーでした。

ただ、他の出版社のロマンス小説と比べて、HQのお話があんまり深みのない印象を与えてしまう理由の一つに、お話の展開やキャラの設定にフォーミュラができてしまっているというのがあります。
このお話でも、登場人物の設定が特に、悪者は悪者で邪悪な面しかなく、H/Hとその仲間達は完璧な善人なので、短絡的な印象さえ受けました。

最近HQをいくつか読んで、どうしても自分が気に入らない点が目についてしまうのですが、でも、C.Campが北米でも日本でも人気な理由がわかったようにも思います。特にH/Hの心情はよく描かれていたと思います。


Never Lie to a Lady

2007年07月25日 | C

Liz Carlyle. 2007. Never Lie to a Lady. Pocket Books Romance.

Calrlyleの新シリーズは好スタートです。

Story:      
Dialogue:  
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

Nash侯爵は夜の世界に生きる謎の多いヒーロー。
富と爵位のおかげで社交界にかろうじていられるようなものの、彼にまつわるうわさは色々。
ある晩の夜会でXanthiaと出会うことによって彼の人生は変わり始めます。

Miss Xanthia Nevilleは両家出身ですが、仕事に人生を捧げるスピンスター。普段は社交界とは全く無関係の生活を送っていましたが、ある晩、夜会に出席することになり、Nashと出会います。

そして二人はバルコニーで忘れられないひと時を過ごします。

NashはXanthiaの身元を突き止め、彼女の兄のところへ交際を認めて欲しいと頼みにやってきましたが、妹のことをよく知っている兄も、ちょうどそこへ居合わせた妹本人も、「結婚はあり得ない」とバッサリとお断り。

ですが数日後、Xanthiaの家を刑事のような人たちが訪れます(Carlyleの以前のお話でいい所全部持ち逃げのMr. Kembleもここで復活!)。
Nashが兵器を密輸しているスパイかもしれない、協力して欲しいと頼まれます。Xanthiaの貿易会社の立場上、彼に近づいて様子を探れるのは彼女達が最適なんだと。
交際も結婚もあり得ないとNashの申し出を一蹴したXanthiaでしたが、実はNashのことは忘れられずにいました。Nashがスパイだというのも信じがたく、彼のことをもっと深く知りたいという気持ちから、この捜査に協力すると同意します。

       

新しいシリーズの最初としては良かったんじゃないでしょうか。
自立していて結婚は考えていないXanthiaは自分のものにはできないんだと半ばあきらめているNashの純愛に近い気持ちとは裏腹に、彼のことをある意味だまして接近しているXanthiaの「いつかばれるんじゃないか」という最後の爆弾を抱えた緊張感。
ラブシーンもCalyleならではのホットなもの。

でもコテコテのリージェンシーではないのが残念。
脇役達の良し悪しもアマゾンでは賛否両論ですが、私は否のほうで、お話の本題とあまり絡んでいないつまらない部分が多く飛ばしたりもしました。

Carlyleの新刊を待っていたファンにとっては完全に満足のいくものではないでしょうけど、Carlyle健在を示すものが全体的に現れています。

次は、この1作目のヒロインと過去に何かあった!?Mr. Gareth Lloydがなんと公爵領を継がなければいけなくなってしまったヒーローとなって表れるお話、"Never Deceive a Duke"。


Lord of Scandal

2007年07月19日 | C
Nicola Cornick. 2007. Lord of Scandal. HQN Historical Romance.

Cornickは私はこれで2冊目ですが、注目してます。
Nora Robertsが「J.Quinnは現代のAustenだ」と賞賛しているようですが、私は断然Mary Baloghだと思うんです。で、Baloghの次に「旨い!」と思わせるリージェンシーを書くのはA.GrangeとかこのNicola Cornickじゃないかというのが私の意見。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

まず、Lord of Scandalと呼ばれるいわゆるリージェンシーのセレブBen Hawksmoreが、「何かやらかしてくれる」と期待する大観衆の前で期待通りに派手なパフォーマンスをやってのけるシーンから始まります。

派手なのに、もうこの最初のシーンから、観衆が見たBenのイメージと、実は影のあるBenの奥深さのコントラストが印象的です。

テムズ川の氷の厚さについてロンドン市民達が話す様子にしても、そのお話の中にまずぐっと引き込むCornickの筆力が出ています。

Ben(侯爵だったかな?)とヒロインMiss. Catherine Fentonは、Benの友人が処刑される日に出会います。
悪いうわさがつきまとうLord Withersと一緒にいる美しいCatherineに目が惹きつけられて離せなくなるBen。あんな嫌な男とこんな場所に来てるくらいだから娼婦だろうと思い込みますが、自分のものにしたくなる気持ちには変わりありません。

処刑時間が近づくにつれ観衆も興奮し始めますが、Catherineと一緒に来ていた幼い弟が人ごみの中に迷い込んでしまいます。
Catherineは一人で一心不乱に弟を探していると、受刑者が台に立たされ首に縄がかけられ、観衆たちは興奮の絶頂に達します。
そんな中恐怖心とパニックで立ちすくみ何もできずにいるCatherineをBenは後ろから抱きとめて守ります。

Benの友人が空中で揺れながら死んでいくこの数分間に、CatherineはBenの腕の中で彼の真の部分を見たように思い、Benも自分のことを分かってくれるんだということを肌で感じます。

この後、しばらくはBenはCatherineを娼婦だと思い込んだままですが、彼女のことが頭から離れず、偶然会うたびに彼女に対する思いが深まっていきます。

お金持ち令嬢のCatherineは、父親が選んだLord Withersという嫌な男と婚約しているのですが、何か自分には分からない理由から婚約を破棄できそうにもありません。ですが、セレブでチヤホヤされているBenのプライベートで全く違う部分を垣間見たCatherineもBenのことが頭から離れなくなっていきます。


      

婚約破棄してしまえばいいのにとイライラする読者もいると思います。
よくヒロインの意思だけで婚約破棄が簡単に出来てしまうお話があるけど、色々と契約内容のせいなどで無理だったり、親の意向で絶対ムリとか、そんなに簡単にはいかないんですよね。


Amazonで星2つとかしかあげていないレビューを読んでみると、この読者達は行間が読めていなくて、キャラを充分理解できていないんじゃないかと思いました。
私にはこのH/Hの二人はとても印象的でした。性格や人柄が個性的で印象的に描かれていてそう簡単に忘れられる感じはしません。

このお話は陰気な部分が多いのですが、私はそこも気に入りました。
この批難ごうごうの読者達はこの陰気な部分も気に入らなかったみたいなのですが、そういう人たちはL.LaFoyとかああいう幼稚なお話が向いているんじゃないでしょーか。(言っちゃった
絞首刑の様子や、セレブだけどお金のない貴族の成れの果て、アヘン剤中毒など、リージェンシーの華やかな表舞台と陰気な裏側とが、コインの表と裏をクルクルと反すようにシーンが繰り広げられていくんです。

一つ納得が行かなかった点を挙げると、父親のこととか悪事の始末の仕方とか詰めが甘かったということです。悪者が死んだことは読者には分かるのですが、登場人物たちには知らされてないし、ひどいことをした父親は「父親だから」という理由でおとがめなしだったのには納得がいきません。

HQはフォーミュラの通りにお話を進めさせたい意思が強いので、冒険心のないお定まりで生ぬるいお話が多いのですが、それでもCornickはよくやっていると思います。
他のところでもっと自由に大胆に書かせたらどうなるんだろうと考えるとCornickには期待が沸いてきます。