ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Untouched

2008年01月09日 | C

Anna Campbell. 2007. Untouched. Avon Historical Romance.

Campbellの期待のリージェンシー・ノワール第二弾。
シリーズではありません。

Story:         
Dialogue:    
Hero:          
Heroine:      
Sensuality:   

子供の頃にかかった病気のせいで頭がおかしいとされ幽閉されていたSheene侯爵。そんな彼の"気を紛らわす"ために無理やり誘拐されてきた未亡人Grace Pageとの囚われの身同士の(暗い)ロマンス。

Sheen侯爵をこの生き地獄に陥れたのは、彼の後見人でもある叔父。
この叔父は、爵位を継げる可能性はほとんどゼロだけど、絶対に自分が侯爵にふさわしいと信じている頭のおかしい極悪非道人です。
なので、両親を亡くし、同時にひどいアレルギー反応(?)で病気になっていた少年Sheenを、賄賂を渡したヤブ医者にみせます。そして「侯爵としてふさわしくない」と偽の診断書を書かせ、幽閉。自分が実権を握ります。

叔父は、Sheenに死なれると彼のいとこに爵位が渡るので、Sheenを生かしながら閉じ込めておくためならどんな手段でもためらいません。
番人は野蛮な下男たち2人で、敷地はグルッとツルツルの壁で囲まれていて逃げることは不可能。
何度か逃亡を試みて実際に外に出たこともある侯爵だけど、彼を手助けした人たちには叔父の手によって不幸が。それに、連れ戻された侯爵もひどい目に。

お話前半は、「誘拐されてきた、何かの間違いだ、解放して」と懇願するGraceと、そんな彼女も叔父の非道な企ての一部だ、彼女を信用できるわけがないと信じ込んでいるSheenとの二人が少しずつ徐々に打ち解けていく様子です。

でもこれが、けっこうつまんなかったです。
Sheen側の心情とGrace側の心情と交互で描写されているのですが、同じことの繰り返しです。

でも後半は盛り上がります!
ハンカチのご用意を。

                      

"Claiming the Courtesan"で問題になった、Forcible seduction、強制的な誘惑…についてですが。
レイプとまではいかなかったけど、ヒロインが「これは良くない」と言っていたけど、結局ラブメーキングがあったシーン。

私自身、その問題のシーンに関してはかなり居心地が悪かったです。今でも、なんで嫌だって言っているのに公爵は強引にいったんだろうって。

RT Book Reviewsにこのことに関して面白い記事があったのですが、その中では「フェミニズムが女性のちょっとしたファンタジーを殺したとも言える」と言っています。
女性がNoと意思表示したらその時点で止めないと犯罪になる、とやっと女性を守る決まりができたのはフェミニズムのおかげですが、この現代の公正基準の影響で、この強制的なラブシーンに過剰反応したんだろうと。

時代の変化は価値観の変化でもあります。
フェミニズムのおかげで今やヒロインは処女じゃなくてもよくなったし、結婚前のラブシーンもOK。Hotなものに関しても様々なものがあり、とにかく全体的に様々なジャンルが生まれました。
同時に退廃したものも。
こういう男性優位の強引なラブシーンは70-80年代にかなり流行った傾向だそうですが、でも、現代の価値観や道徳基準がこうして変化し、読者の嗜好も変わったおかげで、今回のForcible seductionのカムバックに、私も含めて若い読者がびびったということでしょうか。

ロマンス作家Anne Stuartは、主人公が何かの理由で自分に怒りを感じていて自分にほとほと嫌気が差しているとき、Forcible seductionというのは自分はもう腐っていると自身を最低レベルまで卑下する役割を果たす、と言っています。
それと、StuartはForcible seductionを3つに分けています。

・実際のレイプ - これは暴力であり犯罪
・ファンタジーのレイプ - Hな想像です。めちゃめちゃハンサムでセクシーな自分の好みの人がかなり強引に自分を誘惑する
・Forcible seduction - 図らずも何かの企みごとに巻き込まれたり、自分にはどうにもできない状況にあるせいで、イヤイヤながらも双方に同意があった上でのこと。

そういえば、今回の"Untouched"では、Campbellが「これこそが犯罪であるレイプだ!」と言わんばかりに、Forcible seductionとの違いを見せつけている一シーンがありました…。
これは恐かった…


さてさて、みなさんの評価やいかに。

私はこの一冊は十分楽しめたけど、暗いお話はこれでしばらくお休みにしたいです。
それに、囚われの身なので、リージェンシーならではの舞踏会などのシーンなどが恋しかったです。


"Claiming the Courtesan"のレビューは
こちら



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