ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Lord of Scandal

2007年07月19日 | C
Nicola Cornick. 2007. Lord of Scandal. HQN Historical Romance.

Cornickは私はこれで2冊目ですが、注目してます。
Nora Robertsが「J.Quinnは現代のAustenだ」と賞賛しているようですが、私は断然Mary Baloghだと思うんです。で、Baloghの次に「旨い!」と思わせるリージェンシーを書くのはA.GrangeとかこのNicola Cornickじゃないかというのが私の意見。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

まず、Lord of Scandalと呼ばれるいわゆるリージェンシーのセレブBen Hawksmoreが、「何かやらかしてくれる」と期待する大観衆の前で期待通りに派手なパフォーマンスをやってのけるシーンから始まります。

派手なのに、もうこの最初のシーンから、観衆が見たBenのイメージと、実は影のあるBenの奥深さのコントラストが印象的です。

テムズ川の氷の厚さについてロンドン市民達が話す様子にしても、そのお話の中にまずぐっと引き込むCornickの筆力が出ています。

Ben(侯爵だったかな?)とヒロインMiss. Catherine Fentonは、Benの友人が処刑される日に出会います。
悪いうわさがつきまとうLord Withersと一緒にいる美しいCatherineに目が惹きつけられて離せなくなるBen。あんな嫌な男とこんな場所に来てるくらいだから娼婦だろうと思い込みますが、自分のものにしたくなる気持ちには変わりありません。

処刑時間が近づくにつれ観衆も興奮し始めますが、Catherineと一緒に来ていた幼い弟が人ごみの中に迷い込んでしまいます。
Catherineは一人で一心不乱に弟を探していると、受刑者が台に立たされ首に縄がかけられ、観衆たちは興奮の絶頂に達します。
そんな中恐怖心とパニックで立ちすくみ何もできずにいるCatherineをBenは後ろから抱きとめて守ります。

Benの友人が空中で揺れながら死んでいくこの数分間に、CatherineはBenの腕の中で彼の真の部分を見たように思い、Benも自分のことを分かってくれるんだということを肌で感じます。

この後、しばらくはBenはCatherineを娼婦だと思い込んだままですが、彼女のことが頭から離れず、偶然会うたびに彼女に対する思いが深まっていきます。

お金持ち令嬢のCatherineは、父親が選んだLord Withersという嫌な男と婚約しているのですが、何か自分には分からない理由から婚約を破棄できそうにもありません。ですが、セレブでチヤホヤされているBenのプライベートで全く違う部分を垣間見たCatherineもBenのことが頭から離れなくなっていきます。


      

婚約破棄してしまえばいいのにとイライラする読者もいると思います。
よくヒロインの意思だけで婚約破棄が簡単に出来てしまうお話があるけど、色々と契約内容のせいなどで無理だったり、親の意向で絶対ムリとか、そんなに簡単にはいかないんですよね。


Amazonで星2つとかしかあげていないレビューを読んでみると、この読者達は行間が読めていなくて、キャラを充分理解できていないんじゃないかと思いました。
私にはこのH/Hの二人はとても印象的でした。性格や人柄が個性的で印象的に描かれていてそう簡単に忘れられる感じはしません。

このお話は陰気な部分が多いのですが、私はそこも気に入りました。
この批難ごうごうの読者達はこの陰気な部分も気に入らなかったみたいなのですが、そういう人たちはL.LaFoyとかああいう幼稚なお話が向いているんじゃないでしょーか。(言っちゃった
絞首刑の様子や、セレブだけどお金のない貴族の成れの果て、アヘン剤中毒など、リージェンシーの華やかな表舞台と陰気な裏側とが、コインの表と裏をクルクルと反すようにシーンが繰り広げられていくんです。

一つ納得が行かなかった点を挙げると、父親のこととか悪事の始末の仕方とか詰めが甘かったということです。悪者が死んだことは読者には分かるのですが、登場人物たちには知らされてないし、ひどいことをした父親は「父親だから」という理由でおとがめなしだったのには納得がいきません。

HQはフォーミュラの通りにお話を進めさせたい意思が強いので、冒険心のないお定まりで生ぬるいお話が多いのですが、それでもCornickはよくやっていると思います。
他のところでもっと自由に大胆に書かせたらどうなるんだろうと考えるとCornickには期待が沸いてきます。


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2 コメント

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Unknown (monaka)
2007-07-21 12:06:54
kさん こんにちは

コーニックは私も好きな作家の一人です。
最近の作品を除いて、ほとんど読んでいると思います。
といっても、すべて翻訳でですが。
彼女の作品は、HQでコンスタントに翻訳してくれるので助かります。
それだけ人気があるということでしょうね。

最近読んだ中でよかったのは、『伯爵夫人の出自』(The Penniless Bride)です。
煙突掃除の親方の娘が伯爵夫人になるという難しい設定でしたが、うそっぽくならず、なかなか感動的な物語に仕上がっていました。

シリーズロマンスだとすぐに品切れになってしまうのが悲しいですね。
私も彼女のシングルタイトルを読んでみたいです。
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Re: monakaさん (K)
2007-07-23 09:37:43
おはようございます~。

Cornick、翻訳はたくさん出てるそうですね!
でも私はHQとかSignetはほとんど読まないからCornickを発見したのはホント最近なんですよ。
やっと単行の長編を書くようになったから、私の行きつけの本屋さんにも出てくるようになって。

The Penniless Brideは私のWish listにも入っているんです。Monakaさんもオススメということで、読むの楽しみにしてます☆
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