ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

The Runaway McBride

2009年06月05日 | T-U-V
Elizabeth Thornton. 2009. The Runaway McBride. Berkeley Sensation.

北半球は春だったからでしょうか。新シリーズが続々ですね。
超能力(?)を持つ紳士達がヒーローのシリーズ1作目。
Thorntonにとっては初のビクトリア期が舞台です。

Story:      
Dialogue:  
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

"Your bride is in mortal danger, James. You must find her, or she will surely die" と言い残して、James Burnettの祖母は亡くなります。

Jamesの妻はずっと前に亡くなり、花嫁("Bride")なんていません。
BrideはBrideでも、Jamesが思いつく"Bride"はFaith McBride。
待っていて欲しいと言ったのに、自分が留守にしている間に姿を消してしまった"Faithless" McBride。

それから8年の間に彼女の事は酒と女で忘れたはずだったのに、祖母が残した言葉のせいかなんなのか、彼女の事をまた夢に見るように…。
が、祖母が言ったように、夢の中でFaithは命に関わる危険な目にあっているのです。


Jamesから「がまんして待っていてくれ。帰ってきたら結婚しよう」と言われ、何ヶ月も何ヶ月も我慢強く待っていたFaith。
しかし結局彼はスコットランドで他の女性と結婚してしまいます。

それ以来、女学校の先生になり、自分の母の謎の人生と死を探ることにエネルギーを費やしてきました。
が、突如Jamesがまた目の前に現れます…。

                

E.Thorntonもあらすじを読まずにその本に手が出る名前の一つ。

でも今回のお話では、人物名が色々出てきて誰が誰か理解するのがややこしいサスペンスに(私だけか^^;)、ロマンスが物足りなくて、期待はずれ。

Thorntonが創り出すマッチョなヒーローにはよくハマルんだけど、今回はツボ入りしませんでした。ヒロインの気持ちを自分で勝手に決め付けすぎだったかな。

それと、過去のロマンスが再燃するお話を最近よく読んでいるから、やっぱりいいものに比べると、悪くはないけどイマイチ。

それでもハートマーク3つで収まったのは、エンターテイメントとしてはそこそこ楽しめる一冊だから。
ただ、ドキドキとか泣けるロマンスは期待できません。

2作目には期待したいですね!

Book2: The Scot and I

Whisper His Name

2009年03月27日 | T-U-V
Elizabeth Thornton. 1999. Whisper His Name. Mass Market Paperback.

ずいぶん昔の作品ですね。
私は気に入ってます。
コテコテのヒストリカルロマンスではないけど、Thorntonならではのサスペンスを楽しめます。

Story:       
Dialogue:  
Hero:        
Heroine:    
Sensuality: 

お話は1814年、パリで始まります。
ナポレオン軍のNemoというスパイは、ある暗号が記入された本を所持するColletteというイギリス側の女スパイを追っていました。
街角の店内に追い詰められたCollette。命の危険を感じ、店内にいた英国人女性Abbie Valeのバスケットの中に密かに本をしのばせます。

Nemoは本の行方が分からなくなってしまったのが気に入らず、Colletteを殺害。

こんなスパイのトラブルに巻き込まれたことになんて気づいていないAbbie。
Abbieは27歳。以前恋に落ちた男性が妹と結婚してしまってからは、スピンスターの人生。
幸い、かわいがってくれていた叔母の好意で、バースにある小さな家と財産を相続した彼女は、大好きな考古学の研究をしながら静かに暮らしていました。

Abbieには一人、とても大切な友人がいました。
考古学を通して知り合ったHugh Templer。良家の出身で、物静かで知的な学者です。

ある日突然「本と引き換えに」とAbbieの弟Georgeが誘拐され、AbbieとHughの関係は変わります。

実はHughは軍隊時代はスパイだったことが分かり、Abbieはそんな彼の意外な一面を知り、何でも万能にこなす彼に惹かれていく自分にびっくり。

Hughは実はずっと前からAbbieのことを密かに思っていたけど、どうして今まで行動に出なかったかは、ずっと前にこの本を読んだので覚えてません…。ごめんなさい。

                       

DarcyとElizabethみたいに第一印象最悪、ケンカばかり…から恋に落ちる、というお話はたくさんあるけど、このWhisper His Nameみたいに、完全に心地のいい友人同士が何かをきっかけに改めてお互いの存在の大切さを知り、恋に落ちるというお話は私はあまり読んだことがありません。
新鮮でいいです。

お話は誰が何のためにGeorgeを誘拐したのかを探ることを中心に展開するサスペンスなので、H/Hのロマンスが薄いと感じる方もいるかもしれませんが、私は十分楽しめました。
相変わらずThorntonの作り出すヒーロー、私は好きです。


Thorntonのほかの作品のレビューは>>Spotlight on Elizabeth Thorntonからどうぞ。

最近、新刊の"The Runaway McBride"も出てますね。
私はそれ、未読の山入りです。

Sin and Scandal in England

2009年02月18日 | T-U-V
Melody Thomas. 2007. Sin and Scandal in England. Avon.


私からはダメだしの評価1。

Bethany Munroは昔、Ian Rockwellにかなわぬ片思いをしていました。
そんなある日突然Ianは国の特別指令でBethanyの前から姿を消します。

それから何年も経ったある日、Ianが再びBethanyの目の前に現れます。

Ianは特令を果たすうちに無実の罪を着せられてしまい、その無実を証明するためにロンドンに戻ってきたのです。
とある夜会で魅力的な大人の女性に成長していたBethanyと再開します。

                  
あらすじを読んでずいぶん興味そそられ、読むのを楽しみにしてたんです。
でも結果は…

大したことも起こらずダラダラとお話が進み、おもしろいと感じる部分はゼロ。
H/Hの間のロマンスもほとんどなく子供じみたケンカばかり。
特にヒロインが小学生の女の子並み。

読む価値ナシです。

The Private Arrangement

2008年05月27日 | T-U-V
Sherry Thomas. 2008. Private Arrangement. Bantam Books Historical Romance.

どっかで聞いたような…?と思ったら、Eloisa JamesのDuchess in Loveと筋書きが似てるのかな。
注目の新人作家さんですが、このデビュー作は私の好みの話じゃないのでハートマーク評価は少なめになりました。

Story:        
Dialogue:   
Hero:         
Heroine:     
Sensuality:  

社交界では完璧な夫婦と言われていたLord and Lady Tremaine。Tremaine侯爵は海外で、Lady Tremaineはロンドンでお互い自由気ままな生活の形だけの結婚が10年続いていました。

実は結婚前と当初はそんな別々の生活など想像もできないほどの仲だった二人。
Gigi RowlandとCamden Saybrookはお互い一目ぼれでした。
が、Gigiのウソにより二人の結婚生活は修復不可能の状態になってしまいます。

それから10年、GigiはアメリカにいるCamdenに離婚をしてほしいと弁護士を通して連絡します。
Camdenはすぐにロンドンに戻ってきて、離婚の条件を言い渡します。跡継ぎを産んでからなら離婚してもいいと。


                      


ロマンチックで切ないというよりは、10年越しの痴話げんかの理由を知ることになるだけなのでドキドキはあまりないし幸せな気持ちにはなれません。

ヒーローが傷ついたからヒロインに仕返しすることや、H/Hの傷ついた心のことにお話は集中していて、読み進むうちになんだか心がすさんできます。

H/Hが別居中の過去10年の間に起きたことを織り交ぜてお話が進みます。そこでお互いすれ違っていたことがわかるし、互いの気持ちの変化もわかるし…。
表現力のある作家だということは分かるのですが、お話の進め方は順序良くしてくれたほうが良かったかと思います。
10年前の出来事の章が来るたびに、二人の今現在の不幸な様子かわかっているので、「この章の終わりにはまた振り出しにもどるのか」と各章の終わりにはくら~い気持ちに。
何かツイストがあるわけでもないし、ハッピーエンドは最後の最後まで待たないとありません。
最初に何があったか語っておいて、だんだんと関係が修復するっていうふうにしてくれたほうが良かったなぁ。

ヒロインの母親のロマンスも平行して進みますが、これにもあまりロマンチックなものは感じないし、本題とほとんど絡んでいないので、後半は飛ばし読みでした。

Mary Baloghが
"A love story of remarkable depth... Entrancing from start to finish."
とコメントしています。
ものすごく奥深いお話だと言うのには同意です。

が、私の場合、痴話げんかの理由になったウソとか意地の張り合いをここまで奥深いものにできるのかと感心です…。
でも、それなのに、お互いが別居中に恋人を持ったことに関してはサラッと流してあります。

最初から最後まで引き込まれるというのにもある意味同意ですが、これも私の場合、「たのむから早く仲直りしくれ」とあきれながら最後までお話に付き合った感じもありました。

The Pleasure Trap

2007年10月17日 | T-U-V

Elizabeth Thornton. 2007. The Pleasure Trap. Bantam Books Historical Romance.

Trapトリロジーの3作目。
Book1: The Marriage Trap
Book2: The Bachelor Trap


リージェンシーという設定を全く無視してるところはトホホ…。
でもパラノーマルな部分やH/Hは気に入りました。

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   
Sensuality:

Ash Denison(爵位はあったように思うけど…)は、ナポレオン戦争で何年も戦ったので、英国に戻ってきてからは適当に毎日のほほんと楽しんでいました。
それでも、みんなに親切で有名なAshはある日、知り合いの頼みで、女流作家達が集まるシンポジウムに(シブシブ)行くことになります。
謎だらけの"Angelo"という作家が、上流社会のメンバー達の秘密を小説にして新聞に掲載しているのです。それが誰なのか探り出して欲しいと頼まれたのです。

シンポジウムで二人は出会います。
Eveはこれまで、Lord Denisonは人当たりが良くてマナーのよい紳士だといううわさを聞いていたのですが、時折見せる彼の思慮深く、且つ鋭いまなざしに気づきます。

Ashが謎の作家Angeloのことを調べ始めると、事あるごとにEveと遭遇。
そしてEveが危険な目にあうと、彼女を守ると決心します。

(今回のあらすじはかなり手抜き…


            
 

AARではC-と厳しい評価だし、アマゾンでも賛否両論のようですが、私は「最後まで本が置けなかった」派です。
おもしろいことに、AARの酷評を読むと、このお話が大きくこき下ろされているポイントが2つほどあるのですが、これが私がこのお話を気に入った部分でもあるんです。

AARでレビューを書いたDavisのネガティブなポイント、まず一つ目:

・"I had an issue with Eve's "Claverley charisma," starting with the term's overuse throughout the book. A bigger problem was that both eve and her mother were so gifted in so many areas I couldn't handle it. Eve could read the thoughts, character, and memories of people; she could trap another person in a dream with her, like with Ash [...]."

Davisは個人的にEveが持つ超能力に関するうんぬんが気に入らなかったようです。
この能力がどんなに特別で優れているかという描写がくどすぎるし、Eveも彼女の母親もこの色んな方面で使える才能というのにはうんざりしたそうです。例えば、Eveは人の考えや記憶が読めて、その人がどんな人物かもお見通しだし、他人と夢を共有することもできる、という才能。

Kの意見:
確かに、この能力の描写はたくさんあったけど、Eveの"人となり"を描写する上では、こういう普段私達が想像も付かないような能力を詳しく説明するのは避けられないことです。
リージェンシー時代に「私、超能力あるのよ」なんて言ってみてくださいよ。『異常者』としてタスマニア流刑だったら良いほうだったと思いますよ。
その辺のことをDavisは忘れていると思います。
だからThorntonがくどいほどこの「能力」がEveやEveの家族にとってどんなものか説明するのは重要なポイントなのに、Davisにはくどいだけだったんでしょう。

「私はパラノーマルファンだけど、これにはまいった!」みたいなことを言っていますが、それはパラノーマルファンだからこそ感じたことなんじゃないでしょうか。
パラノーマルのお話ではそうであることがお話の大前提だけど、リージェンシーという設定の中での位置づけとは全く違います。
私はパラノーマルは普段読まないコテコテリージェンシーファンだからこそ、こういう部分はすごく新鮮だったし、Eveの人となりを知る上でかなり役に立ちました。

あと、EveとAshが夜に同じ夢を見る部分に関しては、次のDavisのポイントをまず読んでから:

"[T]he addition of sensual derams in Eve and Ahe's relationship bothered me. It was such a big step for them, but it wasn't even real, not to mention the fact that they generally had better conversations in the dreams than they rarely had in the conscious world."

Davisは、EveとAshが夢の中で関係を築いていくという展開には全く納得がいかなかったようです。というのも、この夢の中で二人が(肉体的にも)大接近するんです。Davisは、これが関係を築く上でものすごく重要な役割を果たしているはずなのに、これが現実ではない(だからおかしい); 夢の中での会話のほうがたくさん重要なことを話している、と。

Kの意見:
この夢を通して二人が関係を築くのはDavisも分かっているじゃないですか。でも現実でも濃厚な会話をしないといい関係が築けないっていうのはDavisの言い分はおかしいです。(このお話に関しては、です。)
このお話では、二人だけが共有する特別な夢の中だったからこそ、そこでの会話ややりとりが重要な役割を果たすんです。
これが、AshとEveが起きている時の意識的にガードされている気持ちにいい意味で影響するんです。夢の中のほうが解放されているから、知らないうちに互いの本音を分かち合っていることにもなるし。(←二人はちゃんと後で気づきます)

このEveの、気持ちが通じ合える人と夢を図らずも共有してしまったという部分、Davisは"Trap"という言葉を使っていますが、この夢はEveのコントロールの効かないところで起こっていることを忘れてはいけません。

それに、私が読んだ限りでは、この同じ夢を見てしまうのはEveの超能力のせいだけじゃないという印象を受けました。
Ashはこれまでずーっと八方美人で誰にでも好かれてたのに、実は自分の本音の部分はガードしてた、ということになってます。
でも、それなのに、Eveのことは夢にまで見てしまうほど気になるんです。
それに夢はみるみる現実的になってきます。そして次にEveに実際に会うたびに、この夢のせいで彼女を見る目が違ってきます。
ちょっと、魔法にかかったような印象は確かにありますが、決してEveが意図的にやったことではないので、Ashを"Trap"「罠にかけた」という解釈は間違っています。
題名のように、Ashが「快楽の罠」にかかったというなら、それはEveという最適なパートナーと出会えたから、というもっと比喩的な意味での罠です。

さらにDavisは、「夢というのは二人の関係を築く手伝いをする役目じゃないといけない。新人作家は夢を使うなと言われているそうだが、今回その理由がやっとわかった」と言っています。
が、彼女のレビューからはその「理由」とやらがさっぱりわかりませんでした。
Thorntonのこの作品では夢がうまく使われていたというのが私の意見。このH/Hの二人が次にいつ夢を見るんだろうと、ドキドキしましたよ。

AshもEveも個人的には私の好みのH/Hではないけど、案外気に入りました。パラノーマルに関係を築いていく点も私は楽しめました。

私が気づいたこのお話の大きな欠点といえば、Wallpaper Historicalだっということ。言葉使いが特に、現代のアメリカ英語そのままで雰囲気台無しでした。


>>Spotlight on Elizabeth Thornton


You Only Love Twice

2007年04月07日 | T-U-V

Elizabeth Thornton. 1998. You Only Love Twice. Bantam Books.

ヒストリカルロマンスでサスペンスも欲しいなら、これ
最近「恋の罠に落ちた伯爵」で日本語翻訳デビューしたソーントン。他の作品はこちらからどうぞ>>Spotlight on Elizabeth Thornton

Story:      
Dialogue: 
Hero:       
Heroine:   

とあるロンドンの修道院で記憶喪失のJessica Haywardは3年間自分が何者かわからぬまま敬虔な修練女として奉仕していました。が、ある日ひょんなことから自分の身元が分かり、田舎へ帰ります。
そこで待っていたのは、暖かい家族や友人どころではなく、冷たい態度の村人達。さらに、ハンサムなDundas伯爵、Lucas Wildeからは非情な態度で出て行けとまで迫られます。
ですがJessは、自分の過去を知るためだけではなく、自分の父親が殺害されたかもしれないということが分かると、何としてでも村にとどまると決心します。
それにJessには、他人の心が読めるという不思議な力があり、村に戻ってきた理由のもう一つの理由は、殺人犯が次の殺害を計画している暗い思いが伝わってくるからなのです。


このJessの他人の心が読めるという力、あらすじがほのめかすほど役に立つ力ではありませんでした。

Lucasが最初にJessをひどく扱ったり冷たいことを言ったりするのが、最後のほうで明かされるLucasの本当の気持ちとなんだかつじつまが合わなかったようにも思うのですが、H/H二人の間に「昔何かあった」のに、ヒーローは何も話してくれず、読者にもヒロインにも何がうまくいかないのかわからないもどかしさと、今回はなかなか緊張感のあるサスペンスとで、勢いに乗って読み進むことができました。
ただ、Thorntonの書くサスペンスってどれも犯人がすぐ分かってしまうんだけど…。

これといって思い出に残るお話ではないけど、エンタメにはピッタリの一冊です。


The Marriage Trap

2006年09月01日 | T-U-V

Elizabeth Thornton (2005) The Marriage Trap. Bantam Books Historical Romance

またまた個人的に大ファンのThorntonです。前にレビューした
"The Bachelor Trap"が気に入ったので、今回のこのTrapシリーズの1作目となりました。2作目のほうが良かったですが、この1作目にしろ他の作品にしろ、Thorntonの作品にはあまり期待はずれなものはありません。最近はミステリーに偏ってしまいがちですが、それでもPage Turnerばかりです。

Story:    
Dialogue: 
Hero:     
Heroine:  
Sensuality:

Jack Rigg、Raleigh伯爵とEllie Brans-Hillは、Jackが17歳の時にEllieの家族と短期間を共に過ごしています。
15年後、EllieはLady's Companionとして働いており、Jackは退役軍人となり独身生活を楽しんでいました。二人はパリで再会しますが、Jackは、コンパニオンとして地味な服装をして目立たないよう気を払っていたEllieを見分けることができませんでした。

ある晩、Ellieは弟を借金地獄から救うため、ギャンブラー"Madam Aurora"に変身しします。

AARでは、コンパニオンの仕事が嫌いなEllieは、このスキルでもう一儲けして独立すればいいのにと指摘しています。でもEllieは、ギャンブルなんて堕落した方法で独立するなんて自分の道徳観念が許さないし、弟の手前お手本にもならないので、厳しい道を選ぶんです。

そしてその晩、Ellieが一儲けした後帰ろうとしていると、プロシア軍人達の暴動に巻き込まれてしまい、Jackに救出されます。実はその晩、魅力的な"Aurora"を遠くから見つめ気になっていたJack。無事に彼女を自分の部屋へ連れ込んだ後、JackはAuroraの魅力に抵抗することができず、彼女を誘惑します。

もう少しでJackに全てを捧げてしまうところだったEllie、滞在先のホテルに帰ってみると、意地悪なLady Cardvaleのダイアモンドネックレスが盗まれており、その晩唯一留守にしていたEllieに泥棒の濡れ衣がかかっていました。

無実を証明するために彼女のアリバイを確証できるのはJackしかおらず、Ellieはみんなに全て(キスしたこと意外)を話します。Jackはふいに、あの魅力的なAuroraが実は地味なLady's companionである"Miss Hill"だと知らされたばかりか、彼女の名誉を損なったことになり、自分は結婚の罠にはめられたと激怒します。

絶対にどんなことがあってもこんなずる賢い女とは結婚はしないと怒るJackに対し、Ellieも心の中で「こんな浅はかな男!」とムラムラと怒りの炎が燃えます。が、飄々とした態度で「あんたのような筋肉バカはこっちがお断りよん」とサラっと退場。

次の数日間の間にEllieは解雇され、弟の借金を払い、さっさと弟とロンドンへ去ってしまいます。 彼女の以外な反応にJackは「あれ?これでも花婿候補ナンバー1なんだけど・・・?」。そしてEllieがパリを去った後で、彼女が実はJackが昔お世話になったBrans-Hill牧師の娘だと分かり愕然。彼女をひどく扱った罪悪感に苛まれるばかりか、あの晩のキスが忘れられなかったりも。
さらに驚き困ったことに、彼女の弟が借金地獄に苦しんでいるということが分かっただけでなく、女優殺害の容疑をかけられていることもわかり、イギリス外交官からのたのみもあって、Ellieを助けるためJackもいざロンドンへ向かいます。
  
Thorntonらしいミステリーにスパイスアップされたリージェンシーロマンス。今回のは女優殺害の犯人が簡単に推理できますが…。

後半、JackがあまりEllieのまわりにいず、ロマンスに物足りなさを感じました。
Jackはちょっと典型的なマッチョマンタイプなところもあり私個人の好みではないけど、でも2人とも(とくにEllieの方は)精神的に成熟した魅力的なキャラ達です。
二人は実は初恋の相手(Jackのほうはあまり自覚はなかったけど。)再会してから思春期の思い出にはちょっと幻滅してしまったかもしれない二人だけど、大人になって互いに昔の姿を垣間見ながら新しい関係を築いていきます。

二人のドライウィットたっぷりの会話もおもしろくて楽しめました。

次のAshのお話が楽しみです。


The Bachelor Trap by Elizabeth Thornton

2006年06月19日 | T-U-V

今回のヒーロー、私のツボ直撃。

Elizabeth Thornton (2006) The Bachelor Trap.
Dell Historical Romance.

リージェンシーを舞台にした3部作、「Trap」シリーズの2作目です。

Story:    
Dialogue: 
Hero:     
Heroine:  
Sensuality:

ヒロインLady Marion Daneの叔母Edwinaは、ヒーローMr.Brand Hamiltonにとって母親のような存在でした。
が、Edowinaはある日謎の死をとげます。
数週間後、BrandはEdwinaが生前に出した手紙を読んだのがきっかけでMarionに接近します。

27歳になるまで社交界を避けてきたMarionですが、叔母が遺産を残してくれたので、若い妹2人のためにもLondonに滞在していました。
Marionは妹達のことをいつも優先するとても優しいヒロインですが、土壇場では頼れるかしこい女性。

公爵の庶子であるBrandは新聞社を経営し、政治家としての将来も考えている将来有望なハンサム紳士。そんな彼から気を払ってもらってもMarionは、きっと伯爵令嬢の自分と結婚すれば選挙戦に有利に働くからだろうと、Brandを近付けようとしません。
そんなことよりもMarionが心配しなければいけないのは、誰かが自分を付けねらって危害を加えようとしていること・・・。

Edwinaの手紙から推測してMarionが危険にさらされている可能性があると思って気をつけていたBrandですが、考えすぎたのかもしれないと思い始めた矢先、ある夜Marionはオペラ座の階段から突き落とされます。

               

やっぱりThorntonにありがちなミステリーとロマンスが半々のお話で、ロマンスに物足りなさを感じる読者もいると思います。
個人的に言うと私はかなり気に入ったので本当は小さいハートをもう一つ付け足したいくらですが。

今回は、ミステリーというよりは貴族社会の家族の様子が全体的に大きな鍵になっています。
Marionの家族の秘密や、庶子であるBrandが現公爵(異母弟)の管財人になっていることや、若い公爵がBrandの背を見て成長する様子、忠誠心へのこだわりなど、一見冷たく見える上流貴族の家族間の複雑な人間模様が上手く出ていて、私は好きです。(Julia Quinnのように、和気あいあい家族のお話はウソっぽ過ぎるので嫌気が差すこともあるんです。)

ロマンスノベルには、ヒーローの筋肉の描写やヒロインに対する性的欲求を表現した部分がくどい作品はたくさんありますが、Thorntonはいつも率直です。

Brandは、本のあらすじがほのめかすほどMarionとの結婚を避けようとはしません。とにかくクールで完璧なBrandですが、Marionと出会うことによって、庶子として過ごしてきた人生がどれだけ孤独だったかに気付き、彼女が自分の追い求めてきた女性だと確信するくだりが気に入りました。
「愛してる」と言いたくても言えないBrand、かわいかったっス。その代わりに言ったセリフも、後々、二人にしか分からないメッセージとなっていてロマンチックでした。
Marionと肉体的には結ばれても、結婚にYesと言わない彼女に対してキレるBrandも私のツボ直撃でした。

うまく表現できないけど私のマニアックなツボをつくThornton。
彼女をオススメするのはなんだか強引な宗教勧誘のようなので今回はやめておきますが、でもでも、これ良かったです。

 シリーズ1作目は「The Marriage Trap」。もちろんヒーロー達はみんなお友達。3作目はこの2作目でもMarionを助けたりと活躍したAshのお話"The Pleasure Trap"のようです。


Bluestocking Bride

2006年04月24日 | T-U-V
Bluestocking Bride By Elizabeth Thornton (1987, 2003)

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 6/10

まだロマンスノベルに濃厚なラブシーンが定着していなかった頃に書かれた作品です。最近のソーントンの作品はサスペンスは欠かせないので、こんな純愛も書いていたんだとちょっとびっくりしました。文体もかなりおとなしめです。

お話は、題名と裏表紙のあらすじとはあまり関係のない方向へ展開します。

ラザトン侯爵は30歳の誕生日をちょうど迎え、5年前に母と約束したように独身の生活にとうとう終止符を打つのかと渋々の思いでしたが、キャサリンと出会いそんな気持ちは吹き飛んでしまいます。かよわくておとなしい淑女のモデルのような女の子たちとは違い、キャサリンは快活で頭も良く、彼の得意なギリシャ古典に夢中です。そんな彼女に惹かれるのに時間はかかりませんでした。

キャサリンは、男性というのは彼女の知性をブルーストッキングの一言で一蹴してしまうだけなので、最初はラザトンのこともそうだと思っていました。ですが、彼女の好きなギリシャ古典に詳しいばかりでなく、ハンサムで甘い言葉で誘惑してくるラザトンを避けられなくなってきます。

最近のロマンスノベルお約束の濃厚なラブシーンはありませんが、書斎でラザトンがキャサリンを誘惑するシーンはナカナカです。

二人が結婚してからは、ちょっとした誤解から二人はすれ違い、どんどん溝が深まっていきます。お互いに愛人はいないのにいると信じ込んでしまうというありふれた筋書きですが、主人公二人の気持ちがよく分かるし、次はどうなるのかとページをめくらずにはいられない展開になっています。
           
このお話の後にもう一つ「Sheer Sorcery」という短編小説がついています。
ロジャーを兄のように慕い家族として受け入れてほしい(と思い込んでいる)ジェシカと、ジェシカに対し兄妹関係以上の気持ちをずっと抱いてきたロジャーのお話です。
これもハート4つです。

Almost a Princess

2006年04月21日 | T-U-V
Almost a Princess
By Elizabeth Thornton (2003) エリザベス・ソーントン

Story:   
Dialogue:   
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7

Case Devere、厳しい雰囲気と知的さが漂うCastleton伯爵は、ある殺人事件捜査のためにSpecial Branchに協力することに同意します。殺人犯とはケイスの宿敵です。殺人犯の妹の居所を突き止める過程で、その妹と昔からの友人、Jane Mayberryにたどり着きます。

ジェーンは女性の地位向上に献身的に取り組む美人のブルーストッキングです。ケイスはジェーンを初めて見た瞬間から、容姿端麗なケイスに少しもなびく様子を見せることもない、ミステリアスな彼女に興味を抱いていました。そして事件に変化がおこり、もう一度ジェーンに質問しなければいけなくなった時、彼女はケイスの前から姿を消します。
実は、事件とは全く関わりのないジェーンは、彼女自身が誰にも言えない秘密を抱えていたのでロンドン郊外の田舎へと引っ越していました。
ですがある吹雪の夜、ようやくジェーンの居所をつきとめたケイスが到着します。

ジェーンの秘密は以外な形で暴露されますが、お話の中では上手くそこから気をそらすようになっているので、ケイスでなくとも爆弾を落とされたような気持ちになります。

今回もやはり、サスペンスのせいで主人公2人の会話はロマンスに満ち足りた感じはありません。でも、殺人事件とジェーンの秘密が劇的なのでお話は十分楽しめます。


Perfect Princess

2006年02月27日 | T-U-V
The Perfect Princess
By Elizabeth Thornton (2001)
Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7/10

ロマンスと共にミステリーや殺人、アクションを楽しみたいならThorntonですが、優美で壮麗なリージェンシー時代を楽しむ余地はこのお話には全くありません。
2月17日に紹介した「Princess Charming」に続くPrincessシリーズです。

ヒロインはRomsey公爵の娘ロザモンド。公爵の娘であるがゆえに淑女のモデルとして育てられ、影では「つまらないお人形」と揶揄されているのを知っていて、内心は窮屈な生活に圧迫されそうなヒロイン。

ヒーローは、作者が作った架空の特別捜査部のチーフ、現代で言うならFBI捜査官長官くらいでしょうか、リチャードです。「Princess Charming」で脇役として出ており、犯人追求のためには時として手段を選ばない冷酷な一面も見せています。リチャードは何者かにはめられ、明日無実の罪で首吊りの刑になるという日に脱走を試みます。ですが計画が少し狂ってしまい途中でロザモンドを誘拐してしまうことに。そして「殺人犯」リチャードと人質ロザモンドの逃亡生活が始まります。

ロザモンドは最初はリチャードが本当に殺人犯だと思っていたのですが、ヒーローの誠実な真の姿が分かってくると徐々に魅かれていきます。淑女としての生活しか知らなかったロザモンドは勇気のあるヒロインとして成長していきます。リチャードも、人を心の底から信じることをもう一度ロザモンドの態度で以って教わります。

身分が高くてお姫様のような暮らしをしてきたロザモンドは、特別捜査官のようなハードな仕事をするリチャードの妻になるには自分は不向きかもしれないと心配し、リチャードはこんな身分の低い自分が公爵の娘として育った人を幸せにできるかと悩みます。ですがそれでも最後には、たとえロザモンドが身分の低い家庭の主婦のように振舞えなくても、または公爵の娘として完璧でなかったとしても、リチャード自身にとっては「Perfect Princess」なんだと言って説得し結婚します。

全体的なストーリーはまあまあなのでハート3つですが、二人のロマンスは少し緊迫感が物足りなかったように思います。リージェンシーとは、手袋をはめていないと肌の見せすぎでスキャンダルになるというような時代です。もっと二人が近付いた時のドキドキ感がどんどん蓄積していくシーンがほしかったです。

あと、ロザモンドは最後のほうで友人だと思っていた人から無情にも裏切られます。私だったらかなり凹むような裏切られ方ですが、彼女の心理状態は簡潔にまとめられていて少し信じがたかったです。少し物足りない最終回ですので、暇なときに読むのをおすすめします。

Princess Charming

2006年02月17日 | T-U-V
Princess Charming
By Elizabeth Thornton (Jan,2001) Bantam

ちょっと物足りない作品を立て続けに2冊読んだので、サスペンスお得意のThorntonです。

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7/10 

おとぎ話シンデレラの王子様がPrince Charmingという名前ですが、「理想の男性」の比喩としても使いますよね。今回の小説のタイトルはそれの女性版でPrincess Charmingということです。お話を読む前は恥ずかしいタイトルだと思いましたが、全体を通してヒーローが自分の理想の女性であるヒロインをずっと思い続けていたことがわかり、読み終わると「なるほどね」となるわけです。

この本が図書館で予約無しで簡単に借りられたのは、主人公達の設定にあるのかなと思いました。だとしたら、ヒーローはタイトル持ち、ヒロインは未婚の処女というのがHRファンには好まれてる証拠かもしれません。出版された年が古くても人気作家のものは数日待たないと順番がまわってこないのが、私の通う図書館では普通です。

裏表紙のあらすじから主人公の設定はわかります。今回のヒーロー、Jason Radleyは名門出身ですが称号はありません。破産寸前だった歴史ある実家の財産を一人でたて直したやりての紳士です。ヒロインのGwynessは26歳で7歳の子持ちの未亡人です。
二人は遠縁の親戚同士で、Gwynが孤児になったときにRadley家へ引き取られてきて、Jasonとは幼なじみでした。

ですがGwynは、Jasonには想像もできない理由から、ある時、知り合いの軍人と駆け落ちしてしまします。
8年後未亡人となっていたGwynはLondonで一人息子と慎ましやかに暮らしていました。そこへ、匿名の人物から財産を譲り受ける連絡がきました。でも相続の条件として初恋の相手、Jasonが後見人に指定されていました。財産相続の話と同時におかしなことがGwynの回りで起こり始めます。誰かがGwynを殺害しようとしているのです。

Gwynが殺されそうになった時、Jasonは彼女をかっこよく救出し、そして彼女を失いかけた恐怖心から絶対に彼女を守ろうと決心します。Gwynはただ単にDamsel in distressというのではなく気丈に困難な状況をJasonの助けと共に乗り越えていきます。

JasonはGwynだけを、GwynはJasonだけを、物心がついたときから求め合っていました。でもJasonの厳格な祖母の介入や、色々なことから生じたすれ違いから離れ離れになってしまったんだと徐々に二人の人生が明らかにされます。Jasonの「あの時こうしていれば」という切なさとやりきれなさと腹立たしさがよく伝わってきます。

サスペンスのほうは最初はロマンスを上手に盛り立てていく役目をしましたが、最後の方で少しロマンスが忘れられてる部分があり、そこだけ少し物足りなく感じました。

Spoiler: Gwynの息子Markは実はJasonの息子だったというのが途中からバレバレでしたがThorntonはそれを意図したとはあまり思えません。どうせロマンスファンにはばれるだろうと思ったからうまく隠すこともしなかったのでしょうか。事実を知った時のJasonの反応を早く見たいという+α効果はありました。

To Love an Earl

2006年02月09日 | T-U-V

To Love an Earl
By Elizabeth Thornton エリザベス・ソーントン (2004)
過去に読んだもので印象に残っているものの一つです。
ものすごく嫉妬深いヒーローで、執念深くもあるのでAmazon.comのレビューではストーカー扱いされて星2つですが、私からは満足のハート5つです。

Story:   
Dialogue:
Hero:    
Heroine:  
Sensuality: 7/10

Amazonに怒りのレビューがラインナップするほど、ヒロインがヒーローを拒絶する作品は私は他に知りません・・・。でもここまで追い求められて、他の男性(弟までも)と話しをするだけで嫉妬させられるなんて、(ロマンスファン)女の本望じゃないですか!

Rathbourne伯爵はDeidreと結婚したいのですが、あまりにも彼女が自分になびかないので友人の前でキレます。ちゃぶ台返しならず、テーブルの上のものをなぎ払います。執拗にヒロインを追い求めるのが私はすごく気に入ったのですが、どうもこれが他の読者には異質な印象を与えるようです。

Deeは実は認めたくはないけどRathbourneに魅かれています。でもいつも愛人と一緒にいるような彼とは誠実な結婚は考えられません。
Rathbourneは、実はいつも「愛人」と一緒にいるのにはわけがあるのですが、Deeにも誰にも言えず、誤解されたまま拒絶され続けます。彼女が頑固にRathbourneを拒絶し続けるのが、他の読者にはかわいくない女と写り「いいかげんに素直になれよ」ということのようですが、私にはこの誠実さを求めるあまりにかたくなに拒否し続けるBluestockingで頑固なDeeと、あの手この手で無理強いしてでも結婚しようとするRathbourneとの関係に強く惹きつけられました。
ラブシーンでは、「レイプだ!」という人もアマゾンのレビューにいますが、Deeは実はRathbourneのことを好きなんだけどその時になっても素直になれなかっただけと私は解釈します。Rathbourneの愛人問題が解決していなかったので、Deeは全てを捧げきれなかったのです。
最後の最後まで色々ありますが、どちらのことも応援したくなります。