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■ 姥子温泉 「秀明館」

<姥子温泉「秀明館」> (箱根町、受付9:00~17:00、1,800円(休憩所休憩、タオルセット付)、2,300円(個室休憩、タオルセット・浴衣付)、※6人以上のグループ客、三歳以下の幼児は利用不可、0460-4-0026)

箱根七湯には入っていないものの、目を痛めた坂田公時(金太郎)がこれを癒したという伝説をもつ歴史ある姥子温泉。温泉ファンには何かと噂の高い「秀明館」に初入浴しました。
2005/5に経営が替わり、軽くリニューアルをかけています。現在は日帰りのみですが、宿泊再開の予定もあるようです。
以前2,000円だった入浴料は1,800円になりましたがそれでも高い。台風の大雨後の平日というチャンスだったので、清水の舞台から飛び降りる心境 (^^; で一気に突入。日帰り料金最高額更新。



県道からの入口は狭いですが懐は広く、敷地内には、箱根権現社、薬師堂、山姥堂などが祀られています。頭上はるかにロープウェイをのぞむ箱根らしい風景。古い湯治宿とデザイナーズ旅館のエッセンスがないまぜになった面白い雰囲気で、居ごこちはすこぶるよさそうです。



男女別の大浴場(岩風呂)と家族風呂(別料金)があり、今回は岩風呂のみ入りました。
リニューアルされたらしい浴場まわりはシックで落ち着いた空間。脱衣所の向こうに、高い天井の総木造の浴室が扉もなくつづいています。
手前にみかげ石枠岩&玉石敷き6.7人の浴槽と、その奥に注連縄の張られた源泉の岩盤と湯溜め槽(といっても浴槽より広い。以前はここにも入れたらしいが、いまは入浴不可)。薄暗い浴室はなにか神々しささえ感じます。
カラン、シャワー、シャンプー、ドライヤー等一切なし。平日11時で独占。



岩盤の中腹あたりからは、源泉が白糸の滝のごとく流れ落ち、湯溜め槽と浴槽のしきいを乗り越えてざんざん流れこんでいます。浴槽からも全面ザコザコのオーバーフローで、浴槽外の床面も川状態。湯溜め槽側から2本の金属パイプが立ち上がり、「岩盤湧出高温の時、加水せず適温に保つため、左端の管から熱交換装置で配湯しています」「岩盤湧出涸渇の時、低層からのポンプ揚湯によって中央の管から源泉を配湯しています」との掲示。この日は左手のパイプのみから、ややぬるめのお湯が 100L/min近くも投入されていました。以前は湯量のピーク期には熱すぎてキビシかったようですが、今は熱交換システムが導入されているので入れないことはないと思います。

かなり熱めのお湯は、きれいに澄み切ってうす茶の湯の花がたくさんただよっています。(父の話によると、昔は”日本一透明なお湯”として名を馳せていたらしい)
酸性泉らしい明瞭なレモン味に焦げ明礬臭の特徴ある味臭。酸性泉系の弱いヌルヌルと、明瞭なとろみはメタけい酸=233.00(239.00)のシワザか?



硫酸塩泉特有の染み渡るような湯ざわりと身体の内側から温まるような力強い浴感は、総計700mg/kg弱の単純温泉とはとても思えません。
驚いたのは湯あがり感で、めがねさんも指摘されていましたが、ただならぬ爽快感が出てきます。

帰りしなにフロントの方と少し話をしました。

・先月末の台風の大雨(箱根で400mm以上降っている)で、このところ湯量が増えている。
・ふつう3月頃から湧出を始めて、晩秋くらいまで湧出が続き、厳冬期は湧出が止まる。
・夏場から秋にかけて湯量が増えるが、時季よりはむしろ降水量に影響を受ける。
・岩盤から出ていなくても湯溜め槽の底から湧出している。(こちらの方が量が多い)
・休憩所の横を流れる川や駐車場前の池も温泉。(たしかに湯気があがっていた)

温泉に興味のない人は、この内容で1,800円は納得いかないでしょうが、温泉ファンは一度はトライしてみてもいいかも。私も個人的にお湯が非常に気にいったので (^^ 、今度は2,300円で個室を借りてゆったりとこの名湯を楽しみたいです。

姥子温泉 元箱根第20号 (主力源泉)
単純温泉 (Ca・Na・Mg-SO4型) 42.4℃、pH=3.7、湧出量不明、成分総計=0.688g/kg、H^+=0.20mg/kg、Na^+=34.60 (22.11mval%)*、Mg^2+=18.20 (22.00)、Ca^2+=65.80 (48.24)、Al^3+=1.55、Fe^2+=0.0、Cl^-=4.01 (1.66)、SO_4^2-=321.00 (97.87)、陽イオン計=125.96、陰イオン計=326.77、メタけい酸=233.00 <H16.9.13分析>

姥子温泉 元箱根第4号
単純温泉 (Ca・Na・Mg-SO4型) 48.4℃、pH=3.3、湧出量不明、成分総計=0.6768g/kg、H^+=0.51mg/kg、Na^+=31.90 (20.23mval%)、Mg^2+=16.80 (20.15)、Ca^2+=59.60 (43.36)、Al^3+=3.89、Fe^2+=0.0、Cl^-=3.44 (1.47)、SO_4^2-=312.00 (98.24)、陽イオン計=119.28、陰イオン計=316.56、メタけい酸=239.00 <H16.9.13分析>

*) mval%は筆者にて算出したもの、有効桁数等考慮していないので概数です。

大湧谷のそばなのにイオウ気も金気もない清澄なお湯が湧出するのは不思議。やませみさんの 「温泉の化学」によると、”酸性硫酸塩泉”の代表格とのことです。



「秀明館」から大湧谷に登る遊歩道があります。
いかにも箱根らしいしっとりと落ちついた道で、傍を流れる沢は硫黄を含んで白濁しています。途中、いくつかの源泉櫓も見ることができます。

〔 2005年8月5日レポに加筆 〕


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■「秀明館」の謎

昨年9月上旬、小田原市付近に上陸した台風9号の影響により、箱根は650ミリを越す記録的な豪雨となり、道路は各所で寸断されました。
その数日後、どうにか通行が確保されていたR138御殿場口から登り「秀明館」にいってきました。
豪雨による湯量増加を狙ってか、10時前から客が押しかけ、10時の段階で安い部屋は満室となっていました。

前にいったとき(箱根で400ミリ以上)より雨量が多く、岩盤からわき出す湯量もすごいものがありました。スタッフの話では「ここ数日でいちばん多い」とのこと。

でも、正直いって前回のような”すごみのあるお湯”ではなかったような気がします。
このことをY師匠に話したところ、いくつかの示唆をいただきましたので、それをふまえて整理してみます。
なお、これはあくまでも筆者の勝手な推測です。

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前にも書いたとおり、ここの浴槽にはつぎの3系統の配湯ルートがあります。

A.奥の岩盤と岩盤下の底から自然湧出する源泉を、しきいの上から浴槽へ流し込み - (湧出量豊富なとき)
B.左端の金属パイプから熱交換装置経由で湯温を落として配湯 - (岩盤湧出高温時)
C.中央の金属パイプから低層からのポンプ揚湯泉を配湯 - (岩盤湧出涸渇の時)

今回、Cはありませんでした。
ほんとうはAをそのまま流し込むのがベストですが、熱くてとても入れません。(湯量が増えるほど湯温もあがるらしい) そこで、Bで温度調節をするわけです。
今回、思い返してみると、Aの流れはほとんど木板で浴槽の外へ逃がされ、Bがメインとなっていました。
前回は、Bもあったものの、Aはほとんど全量浴槽へ流れ込み、Aがメインでした。

Bは、すくなくとも熱交換装置を通しています。また、ひょっとするとポンプ揚湯泉をつかっているのかもしれません。
そうだとするとあまりに湧出湯量の多いときは、浴槽のお湯はほとんど熱交換装置経由のもの(&ポンプ揚湯泉?)になってしまいます。
これで、Aがメインだった前回より、湯質が劣っていた(?)理由の説明がつきます。

そうすると、ここの湯質がベストなのは、湧出量と湯温が適度に落ちついてAのみを利用しているときということになります。
「大雨のあとに『秀明館』」というのは定説ですが、ひょっとしてじっくりかまえておもむろに突入したほうがベターなのかもしれません。

〔 2007年9月の状況を2008年4月7日レポ 〕
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