シュテファン・ツヴァイクは、
同様に、個人の一生にも「星の時間」があるようです。
著者は、大隈重信における「星の時間」を、
著者は、それを、
大隈重信、満29歳から33歳。
この間に、
伝記小説の場合、その生涯を、生から死まで、ことごとく辿るという方法もあります。けれども、この著のように、個人のポイントとなる時期に記述を絞って描く方法もあります。
本書の場合は、後者の方法が成功した一例と言えるでしょう。
その理由の一つは、この時期の大隈の活動が、即、近代国家としてのこの国の
つまりは、大隈という個人を描くことによって、近代日本のある側面をヴィヴィッドに描けるわけですね。
同著者の『われ沽券にかかわらず』が、テーマが生(なま)に出ている点や、小説中の会話が「らしくない」(登場人物にそぐわない)という欠陥があったことに比べると、本作は、よく書けていると思います。
このような場合、担当編集者の力量の相違であることが多いのですが、本作の場合はどうだったのでしょうか(ちなみに、『われ沽券にかかわらず』は講談社刊、本作は文藝春秋刊)。
渡辺房男
『円を創った男 小説・大隈重信』
文藝春秋
定価:1,995 円 (税込)
ISBN978-4163246604
「世界史の中で一つの天才の意思が白熱化して決定的になるとき、それはしばしば一分間に圧縮されるような劇的な緊密な時間が、数十年数百年のための決定をする、あるいは全人類の運命の径路を決めさえもする」と述べ、それを「人類の星の時間」と呼びました。
同様に、個人の一生にも「星の時間」があるようです。
著者は、大隈重信における「星の時間」を、
「慶応4年(1868年)正月から明治4年(1871年)5月にかけての三年余の時」に見ています。
著者は、それを、
「人の一生には、その才能手腕が最も輝いて力を発揮し、またそれを生かす時と場に恵まれた時」があると言っています。
大隈重信、満29歳から33歳。
この間に、
「明治政府の中枢に躍り出て大蔵省を率い、〈円〉を基本とする統一幣制を創りあげた」というわけです。
伝記小説の場合、その生涯を、生から死まで、ことごとく辿るという方法もあります。けれども、この著のように、個人のポイントとなる時期に記述を絞って描く方法もあります。
本書の場合は、後者の方法が成功した一例と言えるでしょう。
その理由の一つは、この時期の大隈の活動が、即、近代国家としてのこの国の
「幣制と財政を一刻も早く確立せねばならない」という課題と一致していたことです。
つまりは、大隈という個人を描くことによって、近代日本のある側面をヴィヴィッドに描けるわけですね。
同著者の『われ沽券にかかわらず』が、テーマが生(なま)に出ている点や、小説中の会話が「らしくない」(登場人物にそぐわない)という欠陥があったことに比べると、本作は、よく書けていると思います。
このような場合、担当編集者の力量の相違であることが多いのですが、本作の場合はどうだったのでしょうか(ちなみに、『われ沽券にかかわらず』は講談社刊、本作は文藝春秋刊)。
渡辺房男
『円を創った男 小説・大隈重信』
文藝春秋
定価:1,995 円 (税込)
ISBN978-4163246604