南北戦争の死者は、推定で北軍36万人、南軍26万人、計62万人にも及んだ。
本書によれば、1860年当時の人口は約3,100万人(奴隷400万人を含む)。総人口の「50人に1人は戦争で死んだのである。」
ちなみに、第二次世界大戦での米軍の死者は405,399人、死亡率は0.3%であるから、南北戦争がいかに凄惨な戦争であったかが分るであろう。
その南北戦争は、著者によればアメリカの戦争の原型として捉えられるという。
そして、近代戦争で重要な役割を果すことになった情報と通信との始まりを、この戦争でのモールス電信に見ている。
そして、忘れてはならないのは、この戦争によって、アメリカは「民主主義は怒りに燃えて戦う」(G. ケナン)という信仰が、アメリカの軍部、政治家のみならず、一般国民に至るまでその心理深くに焼き付いたということである。
現代でも、ブッシュ大統領は、次のように語っている。
われわれが、本書によって南北戦争を振り返る意義は、このような「アメリカ人の頭のなかにたたきこまれている」「正義の戦争は必ず勝利する、いや、どんな犠牲をはらっても勝利しなければならない」とする信念を、歴史的事実の中に確認することであろう。
内田義雄
『戦争指揮官リンカーン―アメリカ大統領の戦争』
文春新書
定価:903円 (税込)
ISBN978-4166605620
本書によれば、1860年当時の人口は約3,100万人(奴隷400万人を含む)。総人口の「50人に1人は戦争で死んだのである。」
ちなみに、第二次世界大戦での米軍の死者は405,399人、死亡率は0.3%であるから、南北戦争がいかに凄惨な戦争であったかが分るであろう。
その南北戦争は、著者によればアメリカの戦争の原型として捉えられるという。
「アメリカの戦争の原型とはなにかといえば、戦争のはじめ方、国民を戦争に向かわせる説得力や宣伝力、最高司令官である大統領の指導力、軍部の掌握、情報、通信、兵站、物量作戦、兵器の改良、戦闘のやり方、戦争に勝つために行われる敵の産業や資源の破壊、等々を指す。これらはすべて、試行錯誤を繰りかえしながら、南北戦争で本格的に実験され、検証された。」
そして、近代戦争で重要な役割を果すことになった情報と通信との始まりを、この戦争でのモールス電信に見ている。
「情報の収集、情報の伝達、コミュニケーションの手段として、モールス電信は、あの広大な大陸で行われた南北戦争で決定的な役割を果たした。リンカーンは電信で戦争を行った、といってもいいのである。」
そして、忘れてはならないのは、この戦争によって、アメリカは「民主主義は怒りに燃えて戦う」(G. ケナン)という信仰が、アメリカの軍部、政治家のみならず、一般国民に至るまでその心理深くに焼き付いたということである。
現代でも、ブッシュ大統領は、次のように語っている。
「リンカーンは兵士たちに犠牲を求め死なせました。(中略)そして今日、同じ状況がアフガニスタンやイラクなどで起きており、同じ勇気がためされています。」(2005年4月19日「リンカーン博物館」開所式でのスピーチ。本書より再引用)
われわれが、本書によって南北戦争を振り返る意義は、このような「アメリカ人の頭のなかにたたきこまれている」「正義の戦争は必ず勝利する、いや、どんな犠牲をはらっても勝利しなければならない」とする信念を、歴史的事実の中に確認することであろう。
内田義雄
『戦争指揮官リンカーン―アメリカ大統領の戦争』
文春新書
定価:903円 (税込)
ISBN978-4166605620