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このままでは男性がいなくなる? 失われゆく「Y染色体」の謎に迫る 2024/06

2024-06-16 23:29:00 | ¿ はて?さて?びっくり!

このままでは男性がいなくなる? 失われゆく「Y染色体」の謎に迫る
Aera.  より 240613黒岩麻里


「ヒトの性染色体は女性がXX、男性がXYである」。理科の遺伝に関する授業で、こう教わったことを覚えている方もいらっしゃるでしょう。このY染色体が人類全体においても、私たちの体からも、刻一刻と失われつつあることがわかってきました。

 生物学者で北海道大学教授の黒岩麻里(あさと)さんが、このホットな問題について驚きの事実を示し、誤解を解き明かす最新刊『「Y」の悲劇――男たちが直面するY染色体消滅の真実』のまえがきとあとがきを一部改編して公開します。

*  *  *

■精子の劣化とY染色体の退化の関係
 2002年、『Nature』という世界的に有名な科学雑誌に、「The future of sex(性の未来)」と題された論文が掲載されました。たった1ページの短い論文でしたが、その内容は大変ショッキングなものでした。

 現代を生きる男性の精子が機能的に劣化し、絶望的な窮地に晒(さら)されている。こうした精子の機能不全には、精子への酸化ストレスと、Y染色体の退化が関係しているのではないか?

 水面(みなも)に石が投げ込まれたかのごとく、この論文の発表後、多くの波紋が広がっていきました。世界中の研究者がY染色体の進化について議論を交わし、そして日本を含む各国のメディアにより、Y染色体がいつか消えゆく運命にあると、「Y」の悲劇と男性の惨状がこぞって報道されました。

 この論文が発表されてから20年以上もの年月が経ち、科学技術の進歩とともに、当時はわからなかった発見がなされてきました。一方で、20年以上経ってもなお、未だ解明に至らないことも多く残されていて、Y染色体の謎は深まるばかりです。

■女性をカスタマイズしたのが男性?
 ヒトのY染色体は退化の一途をたどり、いつか消えて失くなってしまう――Yはいま現在進行形でこのような悲劇の渦中にいます。もし完全に失くなったら、いったい私たちはどうなってしまうのでしょうか?

黒岩麻里『「Y」の悲劇――男たちが直面するY染色体消滅の真実』>>書籍の詳細を見る

 旧約聖書には、世界で最初の人類は「アダム」(男性)で、「イブ」(女性)は、アダムの肋骨(あばらぼね)から創られたと書かれています。
 しかし、諸説はあるものの、科学的な見解からは、ヒトの性のデフォルト「原型」は女性で、男性は女性をカスタマイズ(設定変更)してつくりだした「模型」といわれています。Y染色体はそのカスタマイズに必須のツールで、Y染色体がなければ男性をつくり出すことができないのです。

 つまりY染色体は、男性にとってなくてはならない存在なのです。それにもかかわらず、Y染色体は消えてしまうかもしれない――。

 Y染色体が消えてしまったら、男性は生まれてこなくなるのでしょうか?

 そして、残された女性だけでは子孫が残せず、Y染色体の消失は人類の滅亡を意味
するのでしょうか?

 そもそも、なぜY染色体は退化を続けているのでしょうか?

 Y染色体が抱える問題は、ヒトという種の存続に影響を与える壮大な進化に関係したものだけではありません。実はもっと身近で深刻な問題も孕(はら)んでいます。
 いま、この記事を読んでいるあなたの身体の細胞から、Y染色体が失われつつあるかもしれないのです。そしてY染色体の消失が、男性の疾患に深く関係しているともいわれています。

 Y染色体はなぜ、消えゆく運命にあるのか?

■「男と女の2種類」は科学的に否定されつつある
 ヒトの男女に生物学的な性差があることは間違いないのですが、古くからある「男と女」という二項対立的な固定観念は、最近の科学研究からも否定されつつあります。

 そもそも、生物は子孫を残すために、「性」を使っていませんでした。分裂などで自身のコピーをつくる、というシンプルな方法で子孫を増やしていたのです。地球上の生物の壮大な進化の歴史を見ると、「性」をもつようになったのはつい最近のことです。しかも、それらはオスとメスである必要もありませんでした。

 数多(あまた)の生物を見渡してみれば、性は2つとは限りません。この地球上には多様な性があり、ヒトもまた例外ではないのです。多様な性の在り方、これは、長い長い年月の中、生物が歩んできた素晴らしい進化の証なのです。

 性が2つとは限らないとは、どういうことなのか?
 私たちの性には、どんなバリエーションがあるのか?
 それは、どんなふうに決まってくるのか?

 昨今明らかになってきた多様で柔軟な「性」の姿は、きっとあなたのもつこれまでの概念を覆すはずです。

 例えば「男性らしさ」VS「女性らしさ」。

 従来からあるこの固定観念は、今もなお、私たちの無意識に根付いています。

 ヒトの行動や思考を司(つかさ)どるのは脳です。脳の成長や機能には、遺伝子やホルモンが影響を与えます。そして、古典的な脳研究から、男女の脳には明確な違いがあり、それらがいわゆる「男性らしさ」「女性らしさ」を生み出していると考えられてきました。

 しかし、最新の科学研究から、脳には「性差」を上回る「個人差」が存在することが示唆されています。

 また、脳は成長過程で周囲の環境の影響を大きく受けること、脳は大人になってからも変化することなどが明らかになっており、社会的な性「ジェンダー」が脳の発達と関係があることもわかっています。

 近年、私たちを取り巻く社会は大きく変革し、結婚観やジェンダー観など、様々な価値観の多様化が進んでいます。

 古くから、男女の違いは人々の大きな関心ごとです。それゆえに、国内、国外を問わず、大変多くの性差にまつわる書籍が出版されています。しかし、それらを読んで強く思うことは「科学的根拠はあるのかな?」ということです。

 染色体や遺伝子、ホルモンなどの働きから、私たちに生物学的な性差があることは間違いありません。ですが、研究者としてこれらの働きや性差がつくり出されていく仕組みを知れば知るほど、「性」の実態は、多くの人がもっているであろう「男女」のイメージとは大きくかけ離れていきました。

 性差というのは、決して固定的なものではなく、多くのバリエーションをもち、時にはその差を上回る個体差(個性)もあるということ。「性」とは柔軟で多様なものなのです。

 私は著書やテレビ番組、講演などでお話しする際に、できるだけ最新の研究報告を調べて、科学的根拠が得られるものを紹介しています。しかし、科学的なエビデンスがあるから絶対的に正しいものかというと、そうではありません。

 科学の発見には、100年経っても200年経っても変わらない真理を見つけた普遍的なものもありますが、ほとんどの科学論文のひとつひとつは、その時得られた事実の一部を切り取ったものに過ぎません。研究が進み、新たな事実が明らかになると、これまでに受け入れられてきた知見が否定されることだって十分にあり得るのです。

 科学論文とはいえ、あくまでも考え得る根拠のひとつとして捉え、絶対的なものではないということに気をつけてください。

 そして、「アンコンシャス・バイアス」、つまり「無意識の思い込み」や「自身で気づいていない偏ったものの見方」は、科学者にもあると私は思っています。研究により得られた結果自体は事実です。ですが、その結果の解釈(考察)に、メス(女性)だからこうであろう、オス(男性)だからこうであろうという、科学者さえもが支配されている無意識のバイアスが働いているように思える論文もあるのです。

 さらに、従来の性差研究は、オスとメスの異なる二型がどのようにつくられていくのか、に焦点が当てられてきました。つまり二項対立型を前提としている研究が主流でした。

 科学者こそ自身のバイアスに気づき、従来の固定観念にとらわれない発想で研究を進めていく必要があると強く思います。

 多くの研究者が「Y」の謎を解き明かそうと、研究は日進月歩で進んでいます。
その一方で、なかなか解明にまで至らないこともあります。
 Y染色体はまさしく大きな謎と魅力を秘めており、科学者を虜にしてきました。これをきっかけに、みなさんもY染色体という沼にハマっていただければ、こんなに嬉しいことはありません。

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