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「日本映画には余裕がたりない」庵野秀明が『シン・仮面ライダー』を制作して抱いた危機感 2023/03

2023-03-24 10:45:37 | スカパー 放送予定控 & 映画 予定 &TV 予定

「日本映画には余裕がたりない」庵野秀明が『シン・仮面ライダー』を制作して抱いた危機感
  現代ビジネス より 230324   牧村 康正


★『シン・仮面ライダー』(原作・石ノ森章太郎、脚本・監督・庵野秀明)
 が2023年3月17日(金)より公開された。

 映画の公開と前後して、『仮面ライダー』誕生の聖地、東映・生田スタジオに集まった人々のドラマを描く書籍『「仮面」に魅せられた男たち』(牧村康正著、講談社)が刊行される。
 本書には多数の関係者の貴重な証言が収録されているが、『シン・仮面ライダー』監督の庵野秀明氏もその一人だ。『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』と『シンシリーズ』を立て続けにヒットさせた庵野氏は、日本映画の現状に危機感を覚えているという。記事前編に続き、書籍より、一部を再編集してお届けする。

 📗『「仮面」に魅せられた男たち』(牧村康正著、講談社)

⚫︎興味がない人にも届く企画
 つまり庵野は、『シン・ゴジラ』をマニア向けに特化した内容にすると、元が取れないと判断していたのである。
 換言すれば、マニア狙いで元が取れるレベルの作品で終わるつもりはなかったということでもある。
 そしてこの判断は『シン・ウルトラマン』でも踏襲された。
「企画としては、『シン・ゴジラ』と同じく『一般映画』としての枠組みを目指しました。

 『ウルトラマン』シリーズの劇場映画はこれまで興収10億を超えた前例がなく、今までの路線の範疇だと制作規模が通常枠を越えないと成立が難しい本作のような企画だとリクープの可能性がかなり低く、厳しいと思います。
 なので、非常に高いハードルですが、ウルトラマンにさほど興味もなく名前を知っているだけの人にも興行的に届く可能性を上げた企画内容と脚本を目指しました」(庵野秀明『シン・ウルトラマン デザインワークス』)

『シン・ウルトラマン』(2022)は興収40億円突破の大ヒット作となり、日本映画界における特撮ヒーローの存在感を見せつけることになった。
 だが、この結果は『シン・ゴジラ』の成功をふまえれば驚くことではないように思われてしまいがちだ。
 しかし、逆にいえば、前例なきスタイルで制作された『シン・ゴジラ』はそれだけハードルが高く、未知の領域への挑戦だったわけである。

 庵野は『シン・ゴジラ』の制作に当たり、ヒーローの人気頼みという従来の方法論を完全否定していた。
「国産のゴジラ映画も本作で29本目なので、企画開発や脚本作業にもある程度のルーティンというか『ゴジラ映画はかくあるべし』みたいな刷り込みや思い込みが開発チームの各人に存在していましたね」(『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』)

 そのため庵野は、撮影現場におけるルーティンの否定と破壊から始めたという。
「ぼくも現場で怒鳴らなきゃいけないときは怒鳴っています。でも、本当に怒って怒鳴ることはまずないですけどね。いま怒鳴っておかないと現場がしまらない、というときだけです。怒っているふりが8割ですけど、本当に怒っているのは2割くらい。
 ただ、『シン・ゴジラ』のときはずっと怒鳴っていました。あれは本当に怒っていたんで」(庵野秀明へのインタビューによる、以下同)

⚫︎日本映画は「とにかく余裕がないんです」
『シン・ゴジラ』の現場で庵野が感じた怒りというのはいったいどういうものなのか。
「映画業界に関しては宿痾(しゅくあ)が大きすぎますね。『シン・ゴジラ』もそうです。
 現場にはそういうものを感じます。まず現場に若返りがない。スタッフも撮り方のスタイルが固まっちゃっていて、なかなかほかのことをやろうとしても難しい。
 うちの組はまだ慣れている人が来ているので、めちゃくちゃなやり方でも『しょうがないですね』で済みますけど、それでもやっぱり難しいんです。

 それに行政がそんなに協力的じゃないんです。あとは消防法の壁とか、人止めも限界がある。ロケーションももうないですね。(東京近辺では)撮らせてもらえないんです。許可が下りなくてね。地方に行くとおカネもかかるし、移動日で2日取られると時間がもったいない。

 とにかく余裕がないんです。時間もおカネも人間の数も。邦画にいちばんたりないのは余裕なんですよ」
 そういった怒りを抱えながらも、『シン・ゴジラ』をたんなるリメイク作品にとどめず、なおかつ興行的にも成功させるため、「日本映画の現場のシステムの中で抗えるだけ抗って、今やれることはやり尽くした感じがします」(前掲書)というほど庵野は制作現場を追い込んだ。

 一般客は「ゴジラだから観に行かない」
その背景には、次のような考え方がある。

「世間一般から見れば『シン・ゴジラ』は陳腐な子供騙しのニッチな怪獣映画のイメージなんですよ。これは怪獣映画の悪口ではなく、客観的に現状ではそういう認識下にあるという事です。

怪獣映画を観た事がない、観る気がない人が世間の大半なんですよ。―中略―

『「ゴジラ」は長年認知されているから大丈夫だろう』という声も聞きますが、僕は逆なんですよ。一般客は『ゴジラだから観に行かない』んです。―中略―

 本作は怪獣が出てくる映画である以上、万人向けではないんですよ。怪獣が特撮が好きなコアなファンから、子供の頃怪獣映画を見ていた記憶がある大人へ、何処まで広がるか、その拡大要素をどこまで作品に盛り込み、宣伝で拡散出来るか、なんです」(同書)

 ゴジラというキャラクターが怪獣として有名であればあるほど、逆に観客を限定するマイナス要因になるという発想は、ゴジラ映画をつくり慣れてきた東宝のスタッフには「コロンブスの卵」だったのかもしれない。

 庵野はそこから出発して『ゴジラ』をポリティカル・サスペンスにつくりかえ、『シン・ゴジラ』の大ヒットにつなげたわけである。

 さらに庵野は映画界における企画のあり方に警鐘を鳴らす。

「映画界に入って来る人はだいぶ減っていると思います。いまいちばん儲かるのはゲームなんです。漫画も当たれば儲かりますしね。
 邦画がいちばん難しいんじゃないですかね。そもそも当たっていないですから。当たる企画がないんですよ。当たらないのが前提だと、安くやらなきゃいけない。ともかく当たりそうな企画を出すしかないんです」

 実写映画に限定してこの言葉を解釈すれば、当たらなそうな企画を安くつくる悪循環が邦画界の最大の弱点ということになるだろう。

 それは映画に限らず、出版などもふくめたあらゆる商業作品に当てはまる警鐘に違いない。

📙『「仮面」に魅せられた男たち』(牧村康正著、講談社)3月27日より発売
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