北関東に50系客車を訪ねて(その5)からの続きです。
下館駅を発車したSL列車は茂木を目指してガタガタ走っていきますが、C12が単機で牽引しているためか思ったよりスピードは出ません(出していないからかもしれませんが)。並走する道路の自動車にだんだん追い抜かれていってしまいます。
そもそも急ぐ列車ではないので、そんなに飛ばされてもむしろ困りますが(笑)
蒸気機関車はピストンの往復運動をロッドの回転運動に変えながら走るので、周期的に前後方向にドシン、ドシンという振動が伝わってきます。そのせいで座席下のステンレス板の覆いがビリビリ鳴っていて騒々しいでますが、まあこれも蒸機牽引列車ならでは?
発車してしばらくするとハイケンスのセレナーデのチャイム(電子オルゴール版)とともに車内放送が入りました。まさかチャイムを鳴らしてくれるとは思っていなかったので結構うれしかったです。放送の内容もなかなか丁寧で、以前ネットで聞いた国鉄時代のベテラン車掌の放送をほうふつとさせるようでした。
放送が終わると車内検札が始まりましたが、この日は乗客が少なかったためか車掌さんは3両の客車を一巡してすぐに戻ってきてしまいました。このとき3両中機関車の次位にある1号車には定員の8~9割程の乗車がありましたが、自分の乗っていた2号車や最後尾の3号車はがらがらで、自分を含めても乗客は10人いたかどうかという感じでした。
オフシーズンはこれでも、大型連休や夏休みなどのピーク時には立ち客が出るほど込み合うらしいので差が激しいようです。まあ観光列車とはこういうものなのでしょうか。
さて、その車内検札のときにSL列車の記念乗車証(写真右)をもらいました。
前回にも書いたとおり、真岡線の沿線はいちごの産地としてPR活動をしているためにこの記念乗車証にもそれらしいデザインがなされており、とちおとめの妖精(?)の「おとちゃん」というキャラクターが描かれています。最近はこういう地元を宣伝するイメージキャラクターが結構増えましたね。
なお益子~茂木はフリー切符の範囲外となるため、合わせてその区間の往復の乗車券を補充券(写真左)で売ってもらいました。最近、自分ははこういう機会があれば補充券を集めています。ちなみに写真中央の2枚はSL乗車整理券の「SLもおか券」です。
途中、車内販売でお弁当を買いましたが、今や貴重な客車のボックスシートに腰掛けながら、のんびり車窓を眺めつつ弁当を食べる…、というシチュエーションのもとだと、なんだか普通に弁当を食べるよりも数倍美味しく感じられたような気がします(実際おいしいお弁当でした)。
何というか、なんだかとても凄い贅沢をしているように感じられました。
ちなみに弁当の掛け紙には蒸機の写真がデザインされていましたが、C12ではなくC11 325の写真でした。C11とC12は兄弟機ですが、デフレクタの有無で印象が変わって見えますね。
そんなこんなでぼーっと車内で過ごしていると、気が付いたら終点の茂木に到着するところでした。終点を知らせる放送にもちゃんとハイケンスを鳴らしてくれたあたり、この車掌さん、分かってくれています(笑)
終点の茂木では客扱い終了後、入換で側線に移動し、帰りの上り列車の発車までしばらくの間整備タイムとなります。動き出し始めに機関車のシリンダからドレン排出のために一気に蒸気が噴き出しましたが、間近で見るとすごい迫力です。
側線でいったん客車から切り離された機関車は転車台で方向転換が行います。機関車がゆっくりと転車台の上に乗ると、桁のロックが解除、そばのスイッチが操作されて回転を始めました。
このとき転車台の回転に合わせて「乙女の祈り」のメロディーが流れてきて、不意打ちを食らった見物客からは少し笑いの声が。確かに回転する蒸機とともにこのメロディーが流れる様子は何となくシュールです(笑)
車両工場でトラバーサーが動くときに同じようなメロディーが鳴るように、たぶんこれも工業機械用の汎用警報メロディーなのでしょうね。
ちなみに茂木駅にこの転車台が設置されたのは平成8年3月のことで、「SLもおか」の運転開始が平成6年3月ですから、その間約2年間は片道は蒸機のバック運転となっていたのでしょうか?
蒸機が逆向き牽引で客車を従えて走る姿もぜひ見てみたかったものです。
さて、方向転換が終わると給水・灰捨てが行われます。一見したところ駅には給水塔らしきものは見当たりませんでしたが、ここではマンションやビルでよく見かける貯水槽から水を補給していました。
機関車の下にある灰受けから灰や燃えがらが落とされますが、ここの側線にはアシュピットがないのでそれらは線路の上に直接落とされています。機関士の人がせっせとかき出しているのが見えますが、給水ホースから漏れ出た水(結構多い)が灰と混じって泥状になっていて、かき出す側も大変そうです。
こうして自分は入換~給水・整備と一連の作業を見物していましたが、その間に他の乗客や見物客はみんなどこかへ行ってしまい、気が付いたら駅には自分一人しかいませんでした。
つぎの上りのSL列車の発車までまだ2時間ほどありますが、もはや蒸機がいる風景は真岡鐡道沿線の人々にとっては半日常的な光景という事なのでしょう。
とはいえ自分もずっと駅にいるのは手持ち無沙汰なので、少し駅の周辺を歩いてみることにしました。
以下、その7に続く…