いなば路快速の日記帳

鉄道ファンの管理人が日々の出来事・雑感などを綴っていきます。

冷房電源は自車専用・TOMIXのキハ58系急行由布セットのキロ28形

2018年06月16日 | 鉄道模型のあれこれ

◎2月9日:キロ28形の冷房と屋根の仕様について加筆・修正しました

前回に引き続きTOMIXのキハ58系急行「由布」セットのはなしです。

今回はこのセットの目玉的存在の車両である、グリーン車のキロ28形0番台・冷房改造車をピックアップしていこうと思います。

まずはざっくり実車の解説から

キロ28形0番台(基本番台)は、様々なバリエーションが存在するキロ28形の中でも最初期の1961(昭和36)年~1963(昭和38)年に製造された番台区分で、番号としてはキロ28 1~85が該当します。

登場当初は全車が非冷房車でしたが、のちに普通車に先んじて1965(昭和40)年ごろから本格的に冷房化されることとなり、屋根上にAU13形クーラーを、床下には自車専用の冷房用電源として4DQ/DM72発電セットを搭載しました。
(バスクーラーを用いた簡易冷房車やAU12形クーラーによる冷房試験車がこれ以前に若干数存在します)

このころはまだ基本的に他車への冷房電源供給は考慮されていなかったものと思われます。

そこで、後年になって普通車の冷房化が進展してくると、編成中間に組み込まれたキロ28形によって冷房用電力の供給が分断されないようにするため、キロ28形自車専用の給電系統はそのままに隣の車両からもう一方の隣の車両へ冷房制御指令や電力を中継するジャンパ線などが設置されています。

しかしながら、やはりキロ28形の冷房用電力の供給が自車専用という状態では運用効率がよくないため、1977(昭和52)年ごろから発電セットを自車を含めて3両分の冷房用電力を供給できる4VK/DM83に換装した車両が一部で現れるようになりました。
これにより車番は元番号に+2000する改番が行われています。
(冷房化にまつわるこのあたりの経緯は他の番台のキロ28形もだいたい同じ)

なお、1969(昭和44)年に登場したキロ28形の2309以降と2508以降の車両は、製造当初から冷房車かつ4VK発電セットが搭載済みでした。

その後キロ28形0番台(ないし2000番台)は老朽廃車や他車への改造により1980年代前半には急速に両数を減らしていき、国鉄民営化前後の時期には全車引退となったようです。

さてここからは模型のはなし。

今回TOMIXが製品化したキロ28形0番台・冷房改造車は4DQ給電による冷房化が施工された姿がモチーフとなっています。
(この形態のキロ28形は今回初製品化ですね)

TOMIX公式の製品情報では、このキロ28形では車体、屋根、床下を新規に製作しているそうです。
写真の右から2番目のクーラーの真下にある床下機器が4DQ発電セットで、車体の同じ位置の窓間には発電エンジンの吸気口があります。

しかしながら4DQ発電セットつきの床下は北海道向け形式のキロ26形や郵便車のキユ25形で作ってなかったか?と思ったのですが、製品写真などを見比べてみると、どうやら各形式で機器配置などに微妙な差異がある床下を細かく作り分けているようです。

上の写真と反対側の側面から。

製造年次的にキハ58系の初期グループに相当する車両なので、乗降ドアの下側隅にある丸い小窓は当初から設けられていません。

ちなみに、このキロ28形に続いて1963(昭和38)年から製造された100番台の初期車両(キロ28 101~108)もこれとほぼ同一の車体のようです。(こちらにはドアの丸い小窓あり)

このタイプのキロ28形は割と広範囲に配置されていたので、模型で単品発売されているキロ28形後期・最終タイプ(2300・2500番台)がほとんど東海~中国地方に偏り気味に配置されていたことに比べれば、地域設定的に使い勝手のよいグリーン車のように思います。

単品発売されているキロ28形後期タイプ(2300番台・奥)と並べた様子です。

側面を見る限りではトイレ窓や強制換気装置の有無など細部は異なるものの割と似たような印象ですが、屋根周りの様子はクーラーの形状やその脇にあるベンチレータの有無でそれなりに違いがあるのが分かります。

奥の後期タイプは普通車各形式と同じ小判形キセのAU13A、手前の0番台は六角形キセのAU13を搭載していて、微妙に設置された位置や間隔も異なっています。

というわけで、このようにキロ28形0番台入りの編成を組んだ場合にはずらずらと並ぶクーラーの中で角形のキセがちょっとしたアクセントになります。

なお実際のAU13とAU13Aは互換性があり、キロ28形初期タイプに小判形、後期タイプに角形が搭載されているなどといった実例も見られるので(ただし同じ車両の中で混用されるケースは少なかった模様)、好みに応じて載せかえるのも一興かもしれません。
(TOMIXではPC6054・AU13角形キロ26として分売されています)

妻面の比較です。

0番台(左)と2300番台(右)では貫通路の扉の有無がまず目を引きますが、よく見ると屋根カーブの形状も異なり、2300番台のほうがやや扁平です。

この差異はキロ28形としてはAU13形の設置に対応した新製冷房車(一部冷房準備車)として登場したキロ28 139以降に製造された車両に対する設計変更によるもので、これらの車両はそれまでに比べて屋根高さが60mm低くなっているそうです。
(普通車形式でいえばキハ58・28形の前面平窓・非冷房車と前面パノラミックウインドウ・冷房準備車の関係と同じ)

少し余談になりますが、キロ28形の製造番号区分と屋根の仕様について簡単に以下の表に整理してみました。


(参考文献:鉄道ピクトリアル2018年3月号別冊『国鉄形車両の記録 急行形気動車』)

屋根の高さに違いが生じている理由ですが、参考文献によればAU13形を設置した場合、冷房運転中にユニットクーラーから生じた排水(ドレン)を従来タイプの高さの屋根では天井裏に設置した排水皿を通して雨どいへ流していたものを、直接屋根上に流す方式に変更するために屋根を低くしたから、ということのようです。
天井裏の工作の簡略化と水分による腐食防止が目的だったのでしょうか?

さて話を妻面の比較に戻すと、冷房制御と電源用のジャンパ線は自車給電の0番台にも装備された姿が再現されています。
つまり、前述の通り
キハ58(冷房)+キハ65(3両給電可)+キロ28(自車給電)+キハ58(冷房)
と編成が組まれている場合でも、キハ65形から供給される冷房用電力はキロ28形を飛び越して太字のキハ58形にも行き届くということになります。

ところで、単品のキロ28形後期タイプは2300番台を名乗っている通り、3両給電の4VK発電セットの装備車となっています。
上の写真では0番台(左)と2300番台(右)をトイレ側を向き合わせて連結していますが(互いに向きが逆)、どちらも連結面から2個目のクーラーの下に発電機が見えます。

つまり、4DQ発電セットと4VK発電セットはキロ28形の場合、エンジンと発電機が左右逆に取り付けられていることになり、それに伴い発電エンジン用の吸気口も4DQ搭載車と4VK搭載車では互いに逆の側面に設けられています。(写真の矢印の位置)

そんなわけで、単純にこれらのキロ28形各種で床下をトレードして、キロ28形2000番台を再現したり、キロ28形後期タイプの4DQ車(キロ28 301~308の登場時と501~507)を再現したりするには、同時に吸気口の埋め戻し・移設も必要になり地味に大変なのでは?と個人的に思っているところです。(例外の車両はいるのでしょうか?)

そもそも論で製造年次の違いから水タンクの形状など床下の細かいところが違う、という問題はありますが・・・。

さてさて、また例によって重箱の隅をようじでつつくような細かいはなしを延々と続けてしまいましたが、実はまだ今回購入したセットと単品の車両にはいまだ車両番号入れ(=どういう列車の想定で使うか)をしていないという体たらく。
個人的な好みから、九州というよりはやはり中国地方に配置されていた番号で遊びたいところなので、配置区所や車番と実車の形態の関連はさらに研究する必要がありそうです・・・。


暖地タイプのキハ58系・TOMIXのキハ58系急行由布セットのはなし

2018年06月10日 | 鉄道模型のあれこれ


今回は、品番98283キハ58系急行ディーゼルカー(由布)セットのはなしです。
先月(2018年5月)の後半発売された当初は買おうかどうかちょっと悩んだのですが、結局まんまとお買い上げ(笑)
写真には写っていませんが、同時発売の単品・品番9434キハ58形(スリット形タイフォン)も購入しました。

キハ58系は1961(昭和36)年に登場した急行形気動車で、国鉄気動車を代表する存在のひとつといえるでしょう。
派生形式を含めるとおよそ1800両余りが量産され、北海道から九州までの全国各地で長年にわたり活躍しました。

今回セットのプロトタイプとなった急行「由布」(博多~由布院~大分・別府)ですが、1961(昭和36)年に運転を開始した同名の準急列車を1966(昭和41)年に急行に格上げして誕生した列車で、JR化後の1992(平成4)年に現在のキハ185系特急「ゆふ」に格上げされるまで運転されました。

模型の時代設定は、説明書の編成例によると1979(昭和54)年ごろとなっているようで、ちょうど模型が同時発売となったキハ66・67形気動車による急行「日田」との併結運転を再現できるのがアピールポイントのようです。
(なおキハ66・67形気動車セットは未購入)

さて、それではセットに含まれる車両を見ていきましょう。


キハ58形400番台
こちらが動力車となっています。
暖地である九州地区のイメージということで、タイフォンがスリットタイプになっています。
単品のキハ58形(スリット形タイフォン)はこれのトレーラー車仕様です。


キロ28形0番台(冷房改造車)
今回のセットの目玉的存在と思われる、キロ28形の初期タイプの冷改車。
屋根上の角型キセのAU13クーラーが目を引きます。


キハ65形0番台
キハ65形の暖地向け車でタイフォンはスリットタイプですが、これは単品発売のキハ65形も同様です。


キハ28形2300番台
こちらも上のキハ58形と同様に、タイフォンがスリットタイプになっています。

正直なところ上の写真では前面の細かい様子までは分からないので、
(自分で撮っておいてなんですが)

比較ついでに前面の拡大画像を。
左が今回生産品のタイフォンがスリットタイプのキハ58形、右が単品で発売されているタイフォンがシャッタータイプのキハ58形です。

タイフォン以外の造形上の違いとしては、テールライトが内はめ式か外はめ式か、その上にある標識掛けが逆T字形かI字形か、といったところでしょうか?
なお前面以外の部分、側面や屋根パーツなどの形状はどちらも差異はなさそうでした。


さらにキハ65形の暖地向け0番台(左)と寒地向け500番台(右)
キハ65形の場合、模型的な違いはタイフォン形状だけのようですね。

全体的には大体同じ形の中の割と細かい部分の違いなので、模型としてはスミ入れしないと違いが分かりづらいかもしれません・・・。

同じ暖地タイプつながりだと、2015(平成27)年ごろに白地に青帯のキハ58系九州色セットが発売になりましたが、おおよその車体形状的にはその国鉄色バージョンと見ることもできそうです。
(キロ28形を除く)

さて、このほかセットの付属品としては
説明書、車番などの転写シート、台車排障器、幌枠、種別部品パーツ(急行、白地無表示)
が含まれています。
今回は国鉄時代がプロトタイプのためか、列車無線アンテナのパーツは含まれていませんでした。

一方、単品のキハ58形(スリット形タイフォン)には
説明書、車番などの転写シート、台車排障器、幌枠、
種別部品パーツ(急行、紺地普通)、列車無線アンテナとその取り付け用穴あけ治具が含まれていました。

ただし不思議なことに、かつてTOMIXのキハ58系製品には必ず付属していたはずのライトのON/OFFスイッチを操作する棒はセット・単品ともに付属していません。
説明書にはつまようじなどの先の細いものを使って切り替えるよう指示があるので、封入忘れではなく、そもそも付属しなくなったようです。


セットに付属の転写シート(上)と単品に付属の転写シート(下)

セット名に「由布」の名前が入っている通り、セット付属の転写シートに収録されている車番は1979(昭和54)年ごろの大分運転所に配置されていた車両のものとなっていました。
少なくとも想定された時代設定で急行「由布」(あるいは同じく大分のキハ58系を使用の急行「火の山」など)として使うぶんにはあまり問題ないと思われます。

一方、単品に付属の転写シートに収録されている車番は、セットと同時期の大分配置車を基本に収録しつつも同じ九州内の竹下(キハ58 569,570)や人吉(613)、長崎(624)のほか、広島(649)、高松(654)といったように配置にはある程度のバリエーションを持たせているようでした。

なおキハ58 569は九州内のキハ58系のうち最末期まで活躍した1両で、国鉄色に復刻されキハ65 36とコンビを組み、2010(平成22)年ごろまでリバイバル列車などとして活躍しました。

以上の車番のほかには、キロ28形に使うグリーン車用等級帯(セットのみ)と付録としてJRマーク、シルバーシートマーク(セット・単品とも)が収録されています。

グリーン車用の等級帯は1978(昭和53)年に国鉄の塗装規定が改定され、等級帯が廃止される以前のキロ28形の姿を再現するためのものです。
この等級帯の有無は人により好みが分かれるポイントだと思うので、こうして選択の余地があるのはありがたいことです。

JRマークはセットは赤、単品は赤・白2色が収録されており、赤はJR九州用、白はJR西日本や四国など用となります。

特に赤いJRマークはこれまで車両付属の転写シートに収録された製品は(少なくとも気動車製品では)なかったと思われるので、人によっては実は結構欲しかった、という方もいらっしゃるかもしれません?

民営化後、まだ九州色や急行色に塗り替えられる前の過渡期の想定で単品のキハ65形やキハ58系パノラミックウインドウ車などに使うには好適でしょう。

シルバーシートマークは国鉄末期から民営化後にかけて、九州のキハ58系が普通列車運用にも進出した際に貼り付けられていたものと思われます。そのまま急行用として運用された車両にはついていなかったかもしれません。


・・・以上長々と語りましたが、セットの内容に関してはざっくりと解説してこんなところでしょうか。

記事が長くなったので続きます。


京都鉄博に行ってきて、さらに寄り道(その5・終)

2018年06月09日 | 日々の出来事

京都鉄博に行ってきて、さらに寄り道(その4)からの続きです。

近江鉄道彦根駅の構内には同社の車両工場や車庫が併設されており、
その一角にはかつて活躍した車両が展示されている「近江鉄道ミュージアム」があります。


ただし開館日が原則として月に1回土曜日のみということで
遠方からだとなかなか狙って行きにくい場所でしたが、
今回の京都鉄博の内覧会の翌日がちょうど開館日だったこともあり、
ちょうどよく訪問の機会を得ることが出来たのでした。

そんなに広くない構内には、さまざまな車両が展示というより押し込められていて、
ともするとやや窮屈にも思えるのですが・・・、


そんな中でも大正期から昭和戦前期に製造された古典電気機関車たちが
ずらっと並ぶ光景はまさに圧巻でした。
残っているだけでもすごいと思えるほどの貴重な産業遺産級の車両ばかりです。
(ED14形は大正時代製造の機関車ながら、このとき4両全車現存していました)


アメリカ製元国鉄のED14 1(左)と、元伊那電機鉄道デキ1形→国鉄のED31 4(右)


こちらのED14 4は国鉄在籍時代をイメージした茶色塗装となっていました。
上写真の1号機とは前面扉窓の形態やスノープロウの有無といった差異が目立ちます。


ED31 3(左)とED14 2(右)、そして中央の元阪和電鉄→南海→国鉄のロコ1101
これらの機関車は30年ほど前までは近江鉄道線内の貨物列車牽引用として活躍し、
貨物運用がなくなった後も保線用の貨車を牽くなどしていましたが、
その役目も電車に譲ってからは近江鉄道ミュージアム内で静態保存されてきました。

しかし近江鉄道の財政難により、2017(平成29)年には保有する機関車の順次解体が決定され、
12月の「近江鉄道電気機関車特別イベント」の公開を最後にED31形数両の解体が開始されたそうです。


残念なことではありますが、この訪問時であってもやや荒れた状態の車両が多く、
今後の維持にかかる手間や費用を考えると解体も致し方ないのかもしれません・・・。
希望者があれば譲渡も考慮中とのことなので、せめて1両でも多くの機関車が無事に残ることを願います。

さて、機関車のほかにも構内にいる車両を見てみると、


無番号(?)の怪しいフラットカー
あおり戸受けが残っているので元は無蓋車だったのでしょうか。
右に連結されている有蓋車には窓付きの貫通扉が見えます。


その黄帯を巻いた救援車風の有蓋車(ワ34形35号)
古いシュー式走り装置の貨車ですが、車体を載せ替えられたのか下回りの割に新しそうに見えます。
よく見ると車輪に当たっているはずのブレーキシューがありません。まさかのブレーキなし車?


構内のそこかしこに留置された電車
ミュージアムの展示品なのかどうか判然としないこれらの電車は、
敷地内の線路のすき間埋めといった感じで止まっていました(実際は留置場所が足りないから?)。
右のモハ220形は事業用以外では全車引退済のようなのでたぶん部品取り車、
左の元西武の101系は改造前提で未着手の近江鉄道名物「塩漬け」でしょうかね。
(加工しようとして積んだままの鉄道模型を思い出す・・・)

そんなこんなで近江鉄道ミュージアムの保存車両や資料館を見学したあと、
帰りの時間となったのでJR彦根駅から米原行きに乗車し、
米原からは新快速で豊橋へ、そこから新幹線に乗り新横浜へ帰りました。

(おわり)