「日本に行くことにしたんだ!色々教えてくれよ。」
統計の授業が終わると、クラスメートのメキシコ人、ラモンから思いがけない嬉しいメッセージが。彼はケネディスクールにやってくる以前は、メキシコ大統領府でフォックス大統領(当時)の直属のスタッフとして活躍してきた人物で、クラスのディスカッションではいつも存在感を発揮します。しかも、同じくメキシコ人のフィアンセは現在ハーバードビジネススクールで学んでいるという何ともすごいカップル。
そんな二人が6月の結婚式後に計画している新婚旅行の行き先が何と日本だということ。ならば、まずは日本食でも食べながら、じっくり日本について話そうじゃないか、ということで、このブログでも何度か登場している、ケネディスクールの正面にある韓国人経営の日本料理屋「竹村」へ。
「10日間ほど滞在するのだけど、東京以外にどこに行こうか迷っているんだ」との彼の発言に、
「まずは広島!東京から広島は新幹線で4時間。片道150ドルで行くよ。そして帰りに京都へ行くべし。」
と即答。ちょうどKorea Japan Tripを企画中であることもあり、彼がカバンから取り出した日本のガイドブックのページを一緒に繰りながらお勧めスポットをご説明。それにしても、一生で一番大事な旅行とも言える新婚旅行の行き先を何故日本に?との僕の疑問に彼はこう答えてくれました。
「アジア、特に日本は独特の文化があってすごく魅力的なんだ。それに、大統領府に勤めていた時に、メキシコ-日本のFTA(Free Trade Agreement:経済連携協定)交渉に関わっていたので身近に感じるんだよ。」
メキシコは日本にとってはシンガポールに続く二番目の自由貿易協定締結国。この中では、日本がはじめて農産物の市場開放に踏み切ったことが注目されました。日本の政治にも強い関心を持ってるラモンは、小泉前総理がどのようにして国内の“抵抗勢力”の反対を抑えて、農産物の市場開放に踏み切ることができたのかや、首相を支える官邸スタッフ、内閣府の構成についても次々と疑問を投げかけてきます。
ケネディスクールが始ってから早半年、日本の経済(トヨタ等の製造業)や文化、ポップカルチャーに興味を持つ友人には多く出会ったものの、日本政治に関心がある人には残念ながら殆ど出会わなかったため、新鮮な驚きと喜びを感じてしまいました。
ちなみに、彼が勤めていたメキシコ大統領府のスタッフはたった20名程度。しかも、各省庁からの出向ではなく、大統領あるいは大統領側近による直接の指名(いわゆるポリティカル・アポインティティー)を受けたスタッフで構成されるとのこと。それだけに、大統領の政治基盤やリーダーシップが強い場合には、縦割りの各省庁をうまく調整する機能を遺憾なく発揮することになりますが、その権限について特段の法的裏付けがないため、大統領の支持率が下がると、同時に大統領府の勢いも失われてしまうという難しさもあるそうです。
しかし、僕と同年代で大統領に直接指名されるようなポストで活躍しているとは何とも驚きですが彼に言わせると、
「いや、別に・・・大学でお世話になっていた教授が当時たまたま大統領の側近だったから。まぁ、コネってやつだよ。だから、去年の7月に大統領が変わっちゃったらあっという間にクビになって、ケネディスクールに来たんだよ(笑)」
と謙遜と冗談に満ちた答えでしたが、彼はきっと将来、メキシコを担うリーダーになるのでしょう。同じく将来のメキシコのビジネスリーダーとなるであろうビジネス・スクールのフィアンセとそろって日本を思う存分満喫してもらい、地球の裏側の頼もしい日本ファンとなってもらいたいものです。