ブッシュ大統領にとって“中間試験”の意味を持つビックイベントとしてこのブログでも紹介した「中間選挙」が行われてから約4ヶ月。次なる、そしてアメリカ政治最大のイベントである大統領選挙に向けた候補者たちの長いマラソンレースは既にスタートし、そして熱を帯びています。
次期大統領選挙は僕が留学を終え帰国した後、2008年11月に行われます。「何だ、まだ2年近くも先の話じゃないか!」と思ってしまいますが、アメリカの大統領選挙は予想以上の長期戦なのです。確かに、民主・共和両党の候補者の一騎打ちは、8月に行われる全国党員集会で正式な候補者が指名されてから11月までの約4ヶ月間ですが、その前に、両党が候補者を選出する長いプロセスがあるからです。
大統領候補者として名乗り出ようと考えている政治家は、まず自分の党から候補者として指名を受けるべく、中間選挙前後から活動を開始します。そして、大統領選挙が行われる年の1月(つまり、来年の1月)から各州で行われる予備選挙(あるいは党員集会)で同じ党所属の他の候補者を破り、夏の全国党大会で正式な候補者となって初めて他党の候補者と向き合う、というロングロードを走らなければなりません。
そして、ケネディスクールが誇る“無形資産”である「フォーラム」の今日のテーマは「Campaign 2008: Looking Ahead」。
自身の中間試験が目前に迫るのも気にすることなく会場を埋め尽くした学生達を前に舌戦を繰り広げたのは、候補者と二人三脚で長いマラソンレースを走り、時にその運命を左右するといっても過言でないほどの影響力を持つと言われる、共和党の3名の選挙戦略責任者たちでした。
ちなみに、現時点で、共和党からは以下の3名の人物が大統領候補として名乗りをあげています。
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☆ Giuliani(ジュリアーニ)前ニューヨーク市長:1994年から2001年まで長期にわたり市長を務め、市の犯罪発生率の半減を達成したほか、9.11テロという未曾有の危機を強い指導力で乗り切った人物。
☆ John McCain(マケイン)上院議員:2000年の共和党予備選挙でブッシュ現大統領と接戦を演じた人物。ベトナム戦争で捕虜として長期間拘束された経験を持ち、仮に大統領に選出されれば史上最高齢(71歳)となる。
☆ Mitt Romney(ロムニー)前マサチューセッツ州知事:パトリック現知事の前任者でマサチューセッツ州の危機的な財政状況を増税に頼らずに克服したことで知られる人物。
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今日登場したChris Henick氏(ジュリアーニ陣営)、Rick Davis氏(マケイン陣営)、Alex Castellanos氏(ラミー陣営)の3名の選挙戦略責任者の間で行われたパネルディスカッションでの最大の焦点はやはりイラク問題。国際社会の中で米国への信頼感が落ち、国内では厭戦気分が高まり、民主党がイラクからの撤退を明言するという状況の中、共和党の3陣営はイラク政策にどのようなスタンスを取るのか、という論点について、三者そろって異口同音に
「イラクに派遣する人員を増強し、イラクの民主化を成功に導くことが極めて重要。」
「対テロ戦争とイラク政策とを切り離して論じるのは矛盾に満ちている。」
と、コテコテの民主党支持者、イラク戦争大反対の人々が殆どのケネディスクールの雰囲気をものともせずに主張を展開。
僕自身、ケネディスクールの民主党的な雰囲気に知らず知らずのうちに染まったせいか、あるいは、冬休みのニューオリンズでの経験があまりにショッキングだったせいか、「アメリカも国外にリソースをつぎ込みすぎる前に、まずは国内の矛盾を解決するほうが先ではないか」との考えが強くなっていますが、一方で「イラクでまいた種はしっかり最後まで面倒を見るのが筋だろう」ということもあり結論がでないでいます。
議論はさらに、最初の戦いの場となるアイオワ州の予備選挙の見通しや(まだ一年近く先なのに!)、長い選挙戦を戦い抜くための資金集めのストラテジー等に及び、その後例のごとく30分近い質疑応答のコーナーが始りました。
フォーラムでは必ず質問することをモットーに毎回参加している僕ですが、今回は失敗しました!話を聞きながら
「共和党の地盤にも拘らず、忘れられた人々が多くいるニューオリンズをどう考えるのか?こうした国内の問題とイラク問題との優先順位について候補者とはどのような議論をしているのか?」
という質問を考えていたのですが、立ち上がったのが一瞬遅かった。4つある質問コーナーがたちまち埋まってしまいました。何とか自分まで順番がまわってくる事を祈りつつ列の後ろに並びましたが、悲しいかな、僕の一人前で、「じゃぁ、これが最後の質問ね」というモデレーターの声が。。。
今回は質問が出来ず残念でしたが、このようなフォーラムは毎週のように催され、様々な分野のリーダーのビジョンに直接触れることできます。大統領選挙との関係では、来月は民主党候補者の選挙戦略責任者同士のパネルディスカッションが企画されているとのこと。
色々やることが多く、睡眠や食事すら疎かになりがちな今日この頃ですが、日本に戻ったらどうしても手に入らないであろうこうした貴重な機会を、引き続き最大限、活用していきたいと思っています。