遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

大学院で学ぶこと

2008-02-28 23:11:15 | 大学生活
昨日と今日は修士課程修了者の発表会でした。うちの研究室はY学部の院生さんを一人受け持ってます。今日は彼の発表の日。Y学部の教授にあからさまに学生の発表をつぶしにかかる質問をする人がいてむかつきましたが、これも彼にとっていい経験になったかも知れません。世の中にはいろんな人がいるものです。修士は博士と違って何か達成したとかそういうことではなく、2年の期限が来てその結果を報告するものですから、途中経過であったり不完全であったり成果が無かったりするものです。もちろん、素晴らしい成果を発表する人もいるでしょうがむしろ少数です。誰にでもたった2年でそれができるなら、博士課程で誰も苦労したりしませんよ。

さて、大学院ってなんのためにあるんでしょう?僕も指導することがある・・・というか、九大時代に僕のせいで酵母遺伝学にとりつかれてしまった人材もいるので責任重大。それなりに答えを持ってないと一緒に研究した院生さん達に申し訳ありませんな。実は、大学院で『手に職をつける』ための教育はしていません。小学校であろうと大学院であろうと同じなんです。『人を育てる』ことが目的です。実はそれだけ。
くどいようですが、大学は職業訓練を目的とした組織ではありません。医学部を除いては!教育学部でさえも実戦は現場でやってちょうだいってことです。僕は醗酵工学科で10年間学びましたが、キリンやアサヒに負けないビールを造れるかっていうとそんなことないです。ぬか漬けのぬかから乳酸菌を分離してヨーグルトを作れる程度。博士でもそんなもんなんです。

今日発表を済ませた院生さんは4月から病院の薬局で薬剤師として働きます。そこでは我々の研究室で学んだことはなんの役にも立ちません。しかし、研究室で「習い」「覚え」「しかられ」「褒められ」「プレッシャーかけられ」「自分で休日返上してやり直し」「結果をだして」「ダメ出しされて」「人に見せるように表現して」「文章にまとめて」「発表し」「厳しい批判されて」「ご苦労さんっていわれて」「打ち上げで飲んで」「卒業していく」のです。その2年で得るものは『修士』という形がないお金にならない資格だけ。でも、修士になったのです。身に付けた技術は役に立ちません。ムダですか?そうじゃないでしょ。人が育つってそういうことじゃないですか?

おめでとう! GOOD LUCKや!!

本日のお酒:沖縄泡盛 古酒 琉球王朝
コメント (2)
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