滋賀県 建築家 / 建築設計事務所イデアルの小さな独り言

建築家・清水精二のブログ、何でもあり独り言集・・・。

蘆花浅水荘(ろかせんすいそう)を探訪

2009年04月16日 | 建築
01

昨日は、大津市中庄にある蘆花浅水荘を訪れて来ました・・・。蘆花浅水荘は、明治後半から昭和初期にかけての京都画壇の雄であった山元春挙(しゅんきょ)氏の別邸です。(後に、ここで暮らされたので新居と言うべきかも知れませんが・・。)
平成6年に近代和風建築の遺構として重要文化財に指定され、その後修復をして3年ほど前より、広く一般に公開されているそうです・・。
以前より、蘆花浅水荘の前は何度も通っているのですが、内部が拝観できるという事を最近になって知り、それなら是非見てみたいと思い、昨日少し時間に余裕が出来たので訪れて来た次第です。

実は、山元春挙氏と私が以前よりお付き合いさせて頂いている膳所焼(窯元の自宅や膳所焼美術館の建物を設計させてもらっています。)とは深いつながりがあります・・。膳所焼の再興に春挙氏が大きく係わられている事によるものなのですが、ゆえに膳所焼のお施主さんとの会話の中でも、よく春挙氏のお話が出てきていました。また、膳所焼には春挙氏ゆかりの品々もあったりするので、私は春挙氏や蘆花浅水荘をより身近に感じていました・・。

蘆花浅水荘は近代の数奇屋造りを基調にした建物(大正12年に完成)で、東側の離れ部分と西側の本屋部分から成り立っていて、この2つが四方竹の植え込みのある中庭を介してつながっています。東側の庭に面する離れの部分が、春挙氏が主に意匠を凝らしたところになっています・・。

04_2

特に竹の間と呼ばれる座敷では、竹を愛した春挙氏がいたるところに竹を使って、これでもかと言わんばかりに遊び尽くしています。琵琶床の位置に合わせて折れ曲がる竹の落掛、床脇の吹抜に奇抜な形の竹をあしらったり、床に相対する円窓に変わり竹を用いて飾り格子にしたり(上の画像)と・・、訪れる人を楽しませてくれる洒落た趣向が多くありました。(それにしても、あれだけ竹で埋め尽くしているのに、全体に品良くおさめているのは並の技ではありませんね・・。)

その他にも、床下に巧みに石組みが配され、まるで水上にあるかのような趣きに造られている莎香亭(さこうてい)、春挙氏が画想を練るための部屋として莎香亭の西側に取り付けられた一畳強の無尽蔵という空間、入側の棟に使われている五間半におよぶ一本物の北山丸太などなど・・、今日では、もう造る事が難しいであろう趣向の数々を目にして、古き良き時代に想いを馳せるひと時となりました。(とは言っても、私がこれから和風建築を設計するうえでの工夫やヒントは、たくさん見つけましたけどね・・。)

蘆花浅水荘が完成した当時は、庭先がすぐ琵琶湖に面し、建物のいたるところから近江富士(三上山)を望む閑雅な地であったようですが、今では琵琶湖は埋め立てられ湖岸道路が出来て車が走り、三上山も寄付の窓からだけ唯一見えていたのが、昨年出来た草津イオンモールで半分しか見えなくなったとか・・。
それでも、他の近代建築で残しておいてほしい建物が、何らかの理由で保存が困難になり消失していく事が少なくない現在において、蘆花浅水荘は重要文化財に指定されて存続している訳ですから、まずは幸せな建物だと言えるのではないでしょうか・・・。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 花、花、花・・春です | トップ | 450光年のかなたにダイヤの輪 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

建築」カテゴリの最新記事