保津川下りの船頭さん

うわさの船頭「はっちん」が保津川下りの最新情報や、京都・亀岡の観光案内など、とっておきの情報をお届けします。

保津川下り、最後の桜が散る姿に・・・

2010-04-15 09:18:45 | 船頭の目・・・雑感・雑記
保津川下りの乗船場を華やかに彩った桜も、いよいよ‘散る’ときを迎えたようです。

川沿いに連なる桜並木から舞い落ちた花びらが、辺りをピンク一色に染め、
歩みにあわせて舞い上がる姿は美しくもあり、寂しくもあります。

今年は近年にない、寒い日が多く、なんとなく桜の季節が短く感じられましたが、
乗船場の桜たちは今年もかわることなく、優美に咲き誇り、訪れる多くの
観光客の目を楽しませてくれました。

華やかで賑やかな‘宴のあと’のような寂しさは、桜が散っていく姿だけではありません。

長年、我々の春の象徴であった保津川下り乗船場の桜並木は、
今年を最後に切り倒される運命にあり、その寂しさが一層、哀愁を誘うのです。

京都府が推進する「桂川河川改修工事」計画により、現在の保津川遊船事務所が移転、
乗船場および堤防も新たに造り直され、その工事にともない桜並木も切り倒される
運命にあるというわけです。

保津川下り乗船場の桜並木は、乗船場事務所と待合室・売店の前・堤防沿い約20m間に
ソメイヨシノやしだれ桜など約10数本が植えてあります。
これらの桜並木は、今の「保津川遊船企業組合」が大手資本から独立し「自主運航」を
果たした昭和45年に、当時の先輩組合員達が記念に植えたもので、樹齢にして39歳ともいわれています。

毎年、満開時には可憐で優美な花をたくさん咲かせ、全国からお越し下さった観光客の人たちの目を癒し、楽しませてくれました。

桜たち船頭にとっても‘春’の訪れとともに観光シーズンの到来を教えてくれる象徴でもあり、
また時は、昼ごはんを食べたり、出航を待つ間の休憩場として。
また、桜木の股をテコにして船頭が使う竿の曲がりを直したり、
櫂の紐を作る時の作業台ともなり、いつも船頭とともにあった桜でした。


この桜並木に見送られ、この39年間、数え切れないほどの舟が嵐山へ向かって出航して行きました。

そんな桜たちと来年はもう、会うことができません・・・誠にさびしい気持ちでいっぱいです。

だいたい「桜の寿命は100年」といわれています。

ならば保津川下りの桜たちはまだ青年期といえます。本当に無念なことでありましょう。

桜が育つまで約40年という長い歳月を費やしました。
しかし切り倒すのはわずか10分もあれば終わることでしょう。
「桜守」16代目佐野藤右衛門さんの話によると「桜は人の心がわかる」とのこと。
懸命に咲き誇る保津川の桜たちは、自分の存在を、そしてその意義を‘いのち’を
かけて私たち人間に訴えかけているように感じました。

まぶしい春の日差しを幹や枝、花にいっぱい浴び、美しく輝いていた桜たち。
「美しい」その姿を私はしっかり記憶にとどめていたい。

最後の‘いのち’の灯火を燃やしながら、散りゆく保津川乗船場の‘桜’。

切り倒される最後の時は「ごくろうさま」とねぎらいの気持ちを込めて、見送ってやりたいと思っています。

《保津川下り乗船場の桜並木、最後の満開 動画》
       ↓
http://www.youtube.com/watch?v=gKxvb3Rfo68