忘備録の泉

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心が満たされない

2020-06-25 09:55:18 | 読書
私たちの心に忍び寄る“満たされなさ”の感覚は、ある程度経済的にも愛情的にも恵まれた状況で生ずる。
あるいは、なにかを成し遂げた後で生ずる。
傍から見れば満たされているはずなのだが、それなのに、なぜ、満たされないと感じてしまうのだろうか。

私にも覚えがあるが、若いときは目標に向かって無我夢中で生きている。
そのときは心のなかに隙間など生ずる暇もないが、一仕事終えて自由時間が増えてくると、ふとした瞬間に“満たされなさ”を感ずることがあった。
コロナ騒動で予定されていたものがすべてキャンセルされたときも同様であった。
どうすれば“心が満たされる”のであろうか?

心理学者マズローは、人間には5つの基本的欲求があるとした。
彼の理論の主柱は、第一に、これらの欲求はいずれも人間にとり基本的欲求だということである。
人間には他の動物にはみられない特殊性があり、自己実現など上位の欲求も本来的に組み込まれている。
そして、より高次の欲求を満足させることで、より深い幸福感、より平穏な心、精神的生活の豊かさなど、いっそう望ましい主観的体験が得られるという。

彼の理論の第二は、これらの欲求が階層をなしているということである。
下位の欲求がある程度満たされると、次のより上位の欲求が必然的に優勢になる。
このために、より上位の欲求を満たすように私たちが動いていかないと、早晩、空虚感や焦燥感にとらわれてしまうのである。
人生とは、心がしだいに高次の欲求へと向かう過程であるともいえる。
“満たされなさ”とは、この過程である程度必然的に体験せざるを得ない感覚なのだ。

さらにマズローは、人間にはいかなる欲求であっても、ある程度の期間満たされるとそれに慣れてしまい、当然と思ってしまう傾向があることを指摘する。
授かる幸福を忘れ、最高の喜びさえしだいに色あせてしまう。
このために、大部分の人間は永遠に満足しきることはないという。

(「満たされない心」の心理学より 根本橘夫著)

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