忘備録の泉

思いついたら吉日。O/PすることでI/Pできる。

労働組合の存在理由(2)

2017-05-31 08:46:17 | Library
悲しい現実
バブル崩壊後の景気の低迷を受けて、日本の企業は大きく変質した。
日本型の労使慣行とされた年功序列型賃金体系を廃止し、成果主義型賃金体系を導入したり、その過程で大幅な賃金切り下げを行うなどといったことも日常茶飯事になってきた。
さらに労働基準法で定められた残業代を支払わないケースも後を絶たない。
残業代未払などは「犯罪」とされる重大な法律違反だが、悲しいことに在職中に声を上げる労働者はごく稀だ。
残業代の支払を求める訴訟の大半は、退職したり解雇された労働者によるものだ。
なぜならば、ただひとり声を上げればリストラの対象になるという恐怖からである。
だから労働組合の存在が生きてくるはずだが、肝心の労働組合も声を上げなくなってしまった。

声を上げない労働組合
法律で保障された権利を実現するのにも、労働組合があるとないとでは、大きな違いが出る。
労働組合があってもいい指導者がいなければ権利は保障されない。
その現実を「ロッジデールの先駆者たち」(ヤコブ・ホリヨーク)から拾ってみた。
労働運動の創設時から今日に至るまでその現実は変わらない。

「労働者代表は、昔は産業界の決死隊のようなもので、戦争における決死隊よりもさらに割が悪かった。
なぜならば、戦争での決死隊志願者は、成功すれば名誉を得て安楽に暮らせるのが普通だが、労働組合の代表を志願したものは、しばしば争議の犠牲となるか、いつまでも注意人物としてマークされてしまうからである。
戦争では、敵も味方も「決死隊」を尊敬するが、労働争議の場合、先頭に立つものは雇主から称賛されず、かえって後日の報復を覚悟しなければならず、公平な立場から見てまったく悲しむべきことだが、その代表を送りだした労働者の気まぐれな不信にさらされることさえしばしばある。」

労働者を守るためには、法の整備とともに、真に信頼できる指導者の登場が必要である。
そのためには、「教育」に力を入れなければならない。

(つづく)

労働組合の存在理由(1)

2017-05-30 10:07:59 | Library
労働組合は何のためにあるのか
労働組合の組織率が年々低下している。
職場のなかにも非正規労働者という非人間的な呼ばれ方をする労働者が増えてきた。
なぜ、それなのに労働組合の組織率は低下傾向から脱することができないのだろうか。
労働組合は日本国憲法第28条で保障されている団体だ。
労働組合を結成することで、使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進している。
それなのになぜ、労働組合は活力を失ってしまったのか。

日本国憲法第28条
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する

労働組合法第1条
この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続きを助成することを目的とする。


これほど労働者にとって有益な労働組合である(はず)なのに、なぜ組織率は低下し続けるのか。
現実として日常的に見聞きする労働者の現実から考えてみるとよくわかる。
かつて「労使紛争」と言えば、会社と労働組合の争いだった。
その典型が「ストライキ」だが、昨今その言葉を聞くことは無くなった。
いつしか「労使対等」というフレーズは、「労使協調」という言葉に変わっていった。
それで労働者は理想の職場環境を手に入れたのだろうか。

15年12月、過労で自殺に追い込まれた「D社の女性社員」。
同社では過去にも過労自殺があり、たびたび労基署から長時間労働の是正勧告を受けていたという。
この会社にも労働組合は存在していた。
その他にも、労働組合のある会社の不祥事は数多い。


(つづく)



心の抵抗(3)

2017-05-29 13:22:13 | 心理
「抵抗は変容を妨げるちからから生まれる」、という見方ができる。
つまり、私たちの心には「苦しみ、傷つき、矛盾を解決してもっと楽に自由になろう」とする自己治癒力があるが、それに対抗して、「本当の感情を感ずるのは怖すぎるから、抑圧したままにしよう、変化しないようにしよう」とする強い衝動がある。
すなわち抵抗の源は後者の衝動である、という見方だ。
それは個人内に抵抗をみる見地だ。

一方で、「抵抗とはクライエントがカウンセラーに向けるものである」という、対人関係に抵抗の源を求める見地もある。
それはつまり、抵抗の源を「転移現象」に見るということだ。
人間関係が重荷や苦しみになるのは、自分ではそうとは気がついていないが、過去に負ったまま癒えていないこころの傷が原因になっている。
かつて親など重要な他者に対して感じた感情、欲求、考え、態度、行動、想像などを今の誰かに置き換える現象を、「転移」と呼ぶ。
転移はとても広く、かつ奥が深く、またわたしたちのこころの痛みや苦しみを理解するために、とても大切な考え方である。
その見方では、転移現象こそが抵抗の最も重要な源であり、カウンセリングの成否は転移抵抗をいかに扱うかによって、そのほとんどが決まると言える。

人間関係の苦しみについて、エックハルト・トールは次のように述べている。
『すべての依存症は、自分の痛みに直面し痛みを通り抜けることを拒むために生ずる。
すべての依存症は痛みに始まり痛みに終わる。
依存しているものが何であれ―アルコール、食べ物、合法的・違法的薬物、ほかの誰か―あなたはあなた自身の痛みを隠すために、誰か・何かを利用している。
だからこそ親密な関係には、はじめの高揚が終わると、大きな不幸と痛みが伴う。
親密な関係が不幸と痛みを生むのではなく、親密な関係があなたの内側にもともとあった痛みを表に出すのだ。
すべての依存症は内なる痛みを表面化させる。
だからこそ、ほとんどの人はいつも「いま」から逃げて、何かの助けを未来に求める。
「いま」に集中すると、最初に感ずるのが自分の内にある痛みかもしれない。
でもそれを恐れず、「いま」につながり、「いること」のちからにつながれば、過去も痛みも解け去るだろう。』


心の抵抗(2)

2017-05-27 12:53:15 | 心理
抵抗が働く目的は、もっとも簡潔に言うと、感じると苦しすぎて耐え難い感情を感じないようにするためだ。

・現在のことばかりを話し、過去の辛いことについては語らない
現在のことばかりを話すのは、過去の何かを思い出すことや、未来への不安を感じることを避けているから。

・過去のことばかりを話し、現在の苦しみや状況については語らない
過去のことばかり話すのは、現在の苦しさを感じることを無意識のうちに避けているから。

・自分のことばかりを話し、配偶者のことや親のことなど、重要な他者については語らない。または、語ってもごく短く表面的な話しかしない
自分のことばかりを話すのは、他の誰かについての怒りや憎しみ、依存的な甘え欲求など、何らかの感情を避けているから。

・他者のことばかりを話し、自分の感情や行動については語らない
他人のことばかりを話すのは、自分の感情をじっくり感じることを避けているから。

・自由な連想に沿って語るのではなく、順序良く正しい筋道で話そうとする。ときには、話すことを紙に書いて持参し、それに沿って話す
順序良く正しい道筋で話そうとするのは、「自由に話したらとんでもない感情、考え、空想などが出てくるかもしれない」という恐れのためかもしれない。

・沈黙がなく話し続ける
沈黙せず話し続けるのは、沈黙すると辛すぎる感情やファンタジーが湧いてきそうになるので、それを避けているため。その感情やファンタジーとはたとえば、怒り、悲しみ、または愛情を求める依存的な感情かもしれない。

・沈黙がやたらに多い
沈黙が多いのは、「カウンセラーから認められたり受け入れられたりするようなことだけを話さないといけない」という思いのために、話すことが思い浮かばないからかもしれない。

・出来事を説明するばかりで感情を表現しない
客観的な事実ばかりを話して感情を表現しないのは、感情を避ける目的のため。思考を、感情を避ける目的で使っている。

・感情が先走るばかりで、何が起きたか、誰が何を言ったかなど、具体的な事実について分かるように語らない
事実を具体的に語らないのは、何が起きたかを細かく具体的に思い出して語ると、その出来事にまつわる感情が湧きあがりそうになるので、それが怖いから。

・特定のことがらばかりにこだわって話し、話題が広がらない
特定のことがらばかりについて話すのは、話すことを避けている何か別のもっと辛いことがらがあるから。

・何に関しても詳しく話さないうちに話題が次々と変わるため、どのことがらについても詳しくは分からない
どのことがらについても詳しく話さないで内容が次々に変わるのも、深く詳しく話すと辛い感情や記憶が出てきそうになるので、それを避けているから。

心の抵抗(1)

2017-05-26 08:07:22 | 心理
カウンセリングにおいてクライエントの心にはいつも抵抗が働いている。
それがカウンセリングの進展を妨げたり、中断の原因になる。

抵抗の表れ方
・現在のことばかりを話し、過去の辛いことについては語らない
・過去のことばかりを話し、現在の苦しみや状況については語らない
・自分のことばかりを話し、配偶者のことや親のことなど、重要な他者については語らない。または、語ってもごく短く表面的な話しかしない
・他者のことばかりを話し、自分の感情や行動については語らない
・自由な連想に沿って語るのではなく、順序良く正しい筋道で話そうとする。ときには、話すことを紙に書いて持参し、それに沿って話す
・沈黙がなく話し続ける
・沈黙がやたらに多い
・出来事を説明するばかりで感情を表現しない
・感情が先走るばかりで、何が起きたか、誰が何を言ったかなど、具体的な事実について分かるように語らない
・特定のことがらばかりにこだわって話し、話題が広がらない
・何に関しても詳しく話さないうちに話題が次々と変わるため、どのことがらについても詳しくは分からない


(つづく)