忘備録の泉

思いついたら吉日。O/PすることでI/Pできる。

原爆を落とした男たち(おわり)

2016-06-29 08:34:53 | 読書
8月8日午前8時、2発目となる原爆投下命令書が出された。
第1目標は小倉、第2目標は長崎であった。
台風の影響で視界が悪く、小倉での爆撃は中止されたが、午前11時2分、長崎市街地上空で2発目の原爆が炸裂した。

8月10日金曜日午前2時30分、午前会議にてポツダム宣言受諾が決定した。
昭和天皇の詔勅(玉音放送)はただちに英文に翻訳され全世界に発信された。

8月15日以降、トルーマン大統領とスターリン間で交わされた電文6通がある。
そのなかから、スターリンからトルーマンに宛てた電文を紹介しておく。
「私はあなたが昨日15日に送ってくれた〈一般命令第1号〉拝読しました。
この命令書の骨子についてはすでに外相理事会で合意に達していたものであり、ソ連が主張していた通り、遼東半島と満州が不可分領域であることについて表現されていることも確認できました。
ところで、取るに足りないことではありますが、二つばかりご配慮願いたい件があります。
すでにヤルタ密約において米英ソ3国が署名した通り、南樺太がソ連に返還され、かつ、千島列島全域はソ連に譲渡されることが合意されています。
そこで、南樺太と千島列島全域における日本軍の武装解除後の、その地域における戦後処分はマッカーサー元帥の関与から外すよう願えないものか。
これが1点です。
もう一つは樺太から宗谷海峡ひとつ隔てた北海道についてです。
すでにテヘラン会議でルーズベルト大統領からは内々に賛意を示されており、ついてはその賛意のもと、北海道の釧路市から留萌市の間に境界線を引き、線の北側はソ連、南側はアメリカという分割占領を、ドイツの場合と同じように実施したい。
ご理解いただけると思いますが、北海道の半分を占領統治することはロシア人にとって特別な意味があるのです。
1919年から1921年にかけ、日本軍はソ連の極東領土を占領していました。
北樺太はもちろん、ウラジオストックから沿海州一帯にかけ、さらに鉄道に沿って満州を北上し、シベリア奥地のバイカル湖東部を占領し、最終的にバイカル湖西部のイルクーツクにまで侵攻したのです。
日本の降伏にあたり、もしも我々が北海道の半分ですら占領地域を獲得できないとなれば、ロシア人民はひどく腹を立てるでしょう。
私はそれが気がかりです」

これに対し、トルーマンはスターリンにこう答えている。
「一般命令第1号に変更を加え、南樺太と千島列島全域の戦後処分について、あなたが希望するようにマッカーサー元帥の関与から外すことは、やぶさかではありません。
ところで私は、このご要望を容れる代わりに、アメリカの空軍基地を千島列島のどこかに設営させていただきたいと考えるに至りました。
機能としては軍事目的と民間商業目的二つを併せ持つ航空センターであることが望ましく、飛行艇基地も併設できるような場所を、なるべくなら千島列島の真ん中あたりに置かせてもらえれば幸いです。
この提案を受け入れてもらえれば、米ソ両国にとって幸いなことと言えましょう。
本件、具体的な場所の選定など、米ソ二国間による特別代表者作業部会を発足させましょう。
二つ目の北海道に関するあなたの提言は、ロシア革命の際、日本がアメリカを含む連合国の一翼をになってシベリアに出兵したことへの報復を指すものだと理解しました。
さて、ソ連の軍隊が北海道の半分を占領統治する件ですが、以下は私の回答です。
アメリカは日本と戦争状態に入って3年8ヶ月であり、それに引き換え貴国は日本と交戦して6日しかたっていない。
数日前のことですが、貴国のモロトフ外相は『日本の占領にあたり連合国最高司令官がマッカーサー元帥一人というのは残念だ。我が国のワシレンスキー元帥と貴国のマッカーサー元帥という二人制で行きたい』とハリマン駐ソ大使に提案し、同大使からモロトフ外相は『ソ連はまだ二日しか戦っていない。なぜ二人制である必要があるのか?』と尋ねられ、結局、モロトフ外相はこの要求を引っ込めたという報告が届いています。
貴国と日本の交戦期間は2日。
長くて6日である以上、北海道についての回答はすでに出たようなものです。
私は日本をドイツのように分割統治しません」


冷戦構造という温室がなくなり、明らかに別の危機が芽生えつつある。
敗戦時の冷酷な現実を私たちは忘れてはならない。
ジャンル:
ウェブログ
コメント (2)   この記事についてブログを書く
« 原爆を落とした男たち(5) | トップ | 傾聴のすゝめ(1) »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御礼 (本多巍耀(ホンダ・タカアキ))
2017-04-29 15:38:21
《原爆を落とした男たち》の作者、本多巍耀です。
私の作品をご一読賜るのみならず、重要ポイントを貴ブログ《備忘録の泉》に記載していただき、ありがとうございました。
私は現在、この本の連作に相当する《ベルリン封鎖+スターリンの原爆+朝鮮戦争》というテーマに取り組んでいます。
以上、御礼まで/草々
恐れ入ります (管理人)
2017-04-29 22:19:20
本多様からのコメント、まことに恐れ入ります。勝手に掲載させていただき失礼いたしました。連作を楽しみにしております。ますますのご活躍を祈念いたします。

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事