こんにちは、室長です。
このところ「一票の格差」についての議論が喧しいですね。
ご存知のように、一票の格差とは、選出される議員1人あたりの人口(有権者)が選挙区によって異なるため、人口が少ない選挙区ほど有権者の投じる1票の価値は大きくなり、逆に人口が多い選挙区の1票の価値は小さくなるというものです。
先般からよく引き合いに出されているのが、前回(第22回)の参議院議員選挙の神奈川県(有権者7,183千人、定数6)と鳥取県(有権者492千人、定数2)の例で、格差が約5倍あったとされています。それをもって都市部の人にとっては地方優遇だと批判のマトになっているようですが、スタバが島根県に全国46県目の進出を果たしたことで取り残された感のある鳥取県にとっては既に十分すぎるほどの地域格差を負っているのではと同情の念を禁じえません。
それはさておき、「一票の格差=悪」という図式がすっかり定着しているようですが、先日来からどうも腑に落ちないところがあってうんうんと頭を抱えていました。新聞やニュースに触れていますと、民意は「一票の格差はイケナイ」という論調一色に塗りつくされており、議論のもとになっている条件をさほど斟酌せずに結論を出していそうな気がしてちょっと胡散臭い気がしてくるのです。
そこで、あえてマイノリティの立場に立ち、一票の格差があっても良いじゃないか、むしろ別の条件で一票の格差を考えてみても良いのでは、という視点で眺めてみることにしました(笑)
例えば、投票率という切り口から見てみます。と言うのも、政治に関心がなく投票行動をしない人の一票には、価値を認めがたいというのが人情だからです。(もちろん、投票行動を棄権する人や白票を投じる人が政治に関心がないと言いたい訳ではありません!)
第22回参院選(全国58.64%)では、神奈川県56.32%に対して鳥取県67.67%だったとのこと。投票していない人を数えてみますと、神奈川県3,137千人に対して鳥取県159千人と約19倍もの差がついているじゃありませんか!指標が異なるので一概に比較はできませんが、鳥取県の有権者数の約6倍もの票が神奈川選挙区において選挙に反映されていないということにもっと注目されてもよいのではないでしょうか。
そもそも全国では42,819千人の無投票者(もちろん、白票数も含まれているので極端な話になりますが)がいる計算になり、一票の格差云々よりもそちらの方の解消が喫緊の問題なのではないかと思うのは私だけでしょうか。。
ちなみに、ドイツでは小選挙区比例代表併用制(*参照)という、政党の得票数に応じて議席が配分される選挙制度が採用されており、上記のような不満に対応しようとする制度になっているようです。
*①比例代表で全ての政党別の議席配分を決めた上で、②各政党に配分された議席をその党の小選挙区での当選者に優先して割り当て、③それでも余りが生じた場合にのみ政党名簿に登載された候補者を補充して当選させる
日本で採用されているのは小選挙区比例代表並立制という似通った制度名ですが、ドイツの制度とは似て非なる制度です。
また、西部邁が『「世論」の逆がおおむね正しい』(産経新聞出版)でこんなことを述べています。
「国家のことを考えたとき、例えば山形県は人口少ないですが、歴史的に言うと、京都から北前船は通うし、大陸からの影響もあるし、あるいは、農業地域という意味でも、人口は少ないけれども、日本にとっては相当の重みがある。もちろん東京は重みがないというわけではないですが、3000万人いるからといって、その人たちの人口の圧力でもってこれから何十、何百年と続くはずの国家の命運を決するような、そんな投票数の割り振りをしていいのかという問題はあると思います。(中略)田舎に行くと、何代にもわたってその地域を支えてきた人がたくさんいる。そうであれば、本当に日本のこの社会を支えてきたのは、どなたなんだということになります。主権が与えられるのは、資格があるのはどなただと考えたときに、何代も住んで来たとかいうことも含めるべきなんです。そうすると、一票の格差の是正という形で、首都圏だけに議席がより多めに割り振られること自体がいかがなものかという素朴な疑問が起こります。(以下略)」
私の意見を見事に代弁してくれていまして、議席配分を決する重み付けは人口に限らず、例えば都道府県の土地面積や農林漁業出荷額、工業製品出荷額あるいは電力供給量といった国土や国力を維持していく上で重要な指標も勘案するのが筋なのではと言えます。首都圏に供給するエネルギーや食料を供給しているのは地方が大半を占めており、その土地を維持しているのは他ならぬその地方に住む人たちなのですからねぇ。
土地面積や農林漁業出荷額といった指標で一票の格差を論じたら現在の議論の様相は一変るすに違いない!と思って鳥取県のランキングデータを見ても有名なのは二十世紀梨とらっきょうのようで主要指標は軒並み全国平均以下にとどまっており、説得力のある議論のネタにはなりませんでした(笑)
とりあえず、がんばれ鳥取!