ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

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農業見本市でサルコジ大統領が提起したことは・・・?

2011-02-27 20:59:21 | 政治
毎年この季節になると行われる農業見本市(le Salon de l’agriculture)。パリ15区、ポルト・ド・ヴェルサイユ(Porte de Versailles)にある見本市会場(Parc des expositions)で開催されますが、会場内には多くの家畜がひしめき合い、農産品、加工品から農業従事者が喜びそうな日用品までが販売され、もちろん、試飲・試食、そして多くのカフェテリアが店開きをします。

フランスが農業大国であることを実感させてくれるイベントなのですが、ここで人気があるのが、シラク前大統領。農業従事者や畜産業者と気さくに話をし、歩きながら様々な食品を頬張る姿は、いかにも農業大国の家長的な雰囲気があります。今年も訪問しましたが、大きな花束を抱え、ジャック・シラクの到来を待ち構えている農民もいて、その人気、今だ衰えず、といったところです。

一方、逆に、農業見本市が鬼門のようになっているのが、サルコジ大統領。2008年に訪問した際には、見学者と握手をして愛嬌をふりまいていましたが、ある男性から「触るな」と拒否されてしまいました。何だと、俺を誰様だと心得る、共和国大統領だぞ、と一気に頭に血が上った大統領、「お前こそ、さっさと失せやがれ」(Casse toi alors pauvre con.)と大統領の品位もあらばこそ、絶叫してしまい、大問題になりました。高級住宅街・ヌイイー(Neuilly)育ちで、派手好きの大統領に、農業は合わないのかもしれません。

しかし、大統領たるもの、農業見本市に行かないわけにはいかない。今年も出向きましたが、そこで語ったことは、農業に直接関係のないこと・・・「イスラム」についてでした。どう語ったのでしょうか。19日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。

19日、農業見本市の開会式で、サルコジ大統領は、左派と右派の溝を深めるだけでなく、極右・国民戦線(le Front national)を喜ばせるようなテーマを喚起した。すなわち、フランスにおけるイスラム教の居場所だ。

人々を分断し、お互いに反目させようとする試みがよくなされるが、私はすべての人々を統合させようと努めている。開会式に押しかけた農業従事者や畜産業者を前に、サルコジ大統領は、こう語った。

国民を分断させて、いがみ合わせることは、間違っており、唾棄すべきことだ。誠実に、そして極端に走らないことが大切だ。私は「イスラム教」の問題と我々の同胞である「イスラム教徒」との間に橋をかけようと思っている。我らが同胞のイスラム教徒を問題視することには反対だが、同時に、共和国の価値観や政教分離と相容れないイスラム教にもまた反対する。大統領は、このように言葉を継いだ。

国民戦線のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen:現党首)が、イスラム教徒たちが街頭で礼拝を行ったのをナチの占領にたとえてから数週間、大統領は先週、イスラム教のいくつかの宗教行事はフランスにおいて明らかに問題になると述べた。しかし、イスラム教を中心とした宗教活動についての是非を大統領が語ることについては、与党内からも反対の声が上がった。

前国防相のエルヴェ・モラン(Hervé Morin)は、右派の議員たちに極右の領域に入り込まないようにと呼び掛けた。中道のリーダーであるモランは18日、嫌悪を掻きたてたり、スケープゴートを見つけたり、恐怖を弄んだりするようなことは慎むべきだ、とコミュニケで述べている。

また、12年の大統領選出馬をめざすエコロジストのエヴァ・ジョリー(Eva Joly)は、サルコジ大統領は、支持率回復を狙うあまり、フランス第2位の信者数を持つイスラム教を公然と批判してしまっていると述べている。欧州議会議員であるエヴァ・ジョリーは19日、テレビ番組で、すべては支持率回復のための議論であり、ヨーロッパの多くの国で勢力を拡大している人種差別主義者を喜ばすだけだと、大統領を批判している。

19日に発表になった二つの世論調査によると、極右・国民戦線は大統領選における投票先で、かつてない高い支持を集めた。マリーヌ・ルペンへ投票するという調査対象者の割合は、それぞれ17%と20%だった。

与党・UMP(国民運動連合)の2012年大統領選挙対策担当者でもあるブルーノ・ルメール農相(Bruno Le Maire)は18日、次のように述べている。イスラムを中心とした宗教の問題にわれわれ与党は取り組むべきだ。さもなければ、有権者は国民戦線の方を向いてしまうだろう。現在、共和国の原則を逸脱したいくつかの問題やイスラムに関する国民の不安感が指摘されている。その影響で、国民戦線への支持は拡大している。そして、もし失業や劣悪な住環境といった他の深刻な社会問題にわれわれがきちんとした解決を提示できなければ、人々はストレスを発散させるべく、次のような投票行動を取るだろう。現政権は俺たちの要求を聞き入れてくれなかったんだ。それなら、極右に投票しようぜ。

・・・ということで、イスラム教が大きな問題になっているようです。以前は、イスラム教徒という人々が問題の対象でしたが、今日では「人」ではなく「イスラム教」が批判の対象になっています。たぶん、「人」の問題にしてしまうと外国人排斥を訴える極右政党への支持に繋がってしまう。しかし、この問題に触れないと、街頭での礼拝、モスク建設、ブルカ、ニカブなど全身を覆う服の着用、一夫多妻の実行などで目立つ存在になってきているイスラム教に不安を抱く国民がそっぽを向いてしまう。フランスの現政権は、危ない綱渡りを強いられているようです。

そうした状況だけに、「アラブの春」に続く、津波のように押し寄せる北アフリカからの新たな渡航者たちの動向にメディアの関心が集まっています。チュニジアからイタリアのランペドゥーザ島(Lampedusa)に。そこからイタリアを列車で北上。そしてついに、フランスへ。チュニジアは旧フランス領だっただけに、フランスを目指す人が多いようです。列車内でも、新聞などで顔を隠してとにかく目立たないようにして、なんとか無事フランス領内へ。そうしたチュニジア人に同行取材したルポルタージュが、France2でも放送されていました。

「アラブの春」がモロッコにも広がると、チュニジア人どころではない数のイスラム教徒がフランスに逃れてくることになるものと思われます。イスラムの宗教行事を頑なに守りとおす人々への反感、嫌悪感がヨーロッパを覆うとしているタイミングで、急激に増えるイスラム教徒。「アラブの春」は思わぬ形で、西欧に重い課題を与えようとしています。
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