日本でもときどき物議を醸す、外国人への参政権の付与。フランスでも、思い出したように話題になるようです。フランスの現状は、EU加盟国出身者に限り、地方レベルでの選挙権と被選挙権を認めるというもの。ただし、6カ月以上の居住または5年以上にわたって直接地方税を納入していることという条件が付いています。
外国人の参政権についての最近の動きを、15日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
左派陣営が、地方選挙レベルにおいて外国人居住者へ選挙権、被選挙権を与えるべきだという提案を行っている。27市の市長たちが、ほとんどが社会党所属だが、15日、上院において、彼らの民主的な要請に対して行政、および国民の間での議論を喚起した。
運動をリードしたのはストラスブール市だ。ヨーロッパ議会(ストラスブールにあります)の支援を得て、昨年10月、外国人居住者による議員集会を行った。この動きは、パリ、トゥールーズ、ナント、リール、グルノーブル、メッツ、カーン、ブザンソンなど他の大都市や、サンドニ、オーベルヴィルなどパリ首都圏の都市に広がった。それらの都市では、居住外国人の議会や行政の垣根を越えた委員会などがつくられている。
ストラスブール市長のローラン・リ(Roland Ries)は、もう一段、新たなステップへ踏み出すべき時に来ていると述べている。市長は、また、地方参政権の付与により、居住外国人はその町での暮らしにいっそう溶け込むことができ、共生にともに参加することができるようになる。そしてそのことを地域住民の多くも理解していると考えている。
1992年のマーストリヒト条約の成立以降、地方レベルでの参政権がEU加盟国出身者に限り認められるようになった。27人の市長たちの提案は、地方選挙における参政権を出身国に関わらず、すべての居住外国人に拡大しようというものだ。
こうした提案は、実は1981年の大統領選挙において、フランソワ・ミッテラン(François Mitterrand)が掲げた101の提案(les 101 propositions)に含まれていたのだが、当選後、2期14年の間、何ら前進を見なかった。
また2000年5月、コアビタシオン(la cohabitation:所属勢力の異なる大統領と首相が共存する状態、2000年当時は右派のシラク大統領と社会党のジョスパン首相)の時代、同じ提案がいったんは下院で多数派を占める左派陣営(社会党・緑の党・共産党)の賛成で可決されたのだが、ジョスパン首相(Lionel Jospin)は上院へ送ることを拒んだ。
右派陣営はこうした提案に反対なのだが、その理由は、選挙権は市民権と密接に結びついているからだ、というもの。フィヨン現首相も2000年当時、社会党議員によって提案された法案について、市民権との結びつきを根拠に反対をしていた。
サルコジ大統領は、内相だった2005年当時、居住外国人への参政権付与について、厳格で思慮深い議論を始めるべきだと述べていたが、2007年に大統領選に立候補した際には、こうした考えはどこかに消えてしまっていた。
・・・ということで、政治的立場の違いを超えて、政治家の約束は、フランスにおいても、単なる口約束に終わることが多いようです。しかも、口約束をいかにも実現しそうに思わせる術、当選してしまえばすっかり忘れてしまえる技に長けた政治家ほど、権力の階段を上まで登っていけるようです。これもひとつの不条理、と言えばいいのでしょうか・・・
ところで、外国人に選挙権を与えている国はいくつくらいあるのでしょうか。自分の国ではどうすべきか、という事を自分の頭でしっかり熟慮する前に、すぐ外国の例を見ようとするのは、つねにキャッチアップをしてきた日本人の性で仕方がないこと、と自己批判、そして自己弁護しつつ、ウィキペディアで調べてみました。
以下は、いずれも滞在期間・在留資格・年収などの要件で一定の制限を課す。
・居住する外国人に対し、地方レベルの投票権を、国内の全域で、国籍を問わず、付与している国家の数は、24ヶ国。
・これらに超国家的グループ(スープラナショナリズム)の加盟国が相互に限って投票権を認めている国家を合わせると、39ヶ国。
・地方レベルに加え、国政レベルの投票権まで認める国家の数は、11ヶ国(その内の7ヶ国は、国籍を制限している)。
・地方レベルの投票権に加え、被選挙権まで認める国家の数は、26ヶ国(その内の12ヶ国は、国籍を制限している)。
・「先進国クラブ」と言われる経済協力開発機構(OECD)の加盟34ヶ国の内で外国人参政権を地方レベルで認めている国家の数は、30ヶ国で、国政レベルに限れば7カ国である。(以上、ウィキペディアの外国人参政権の項目より)
超国家的グループとは「EU」や旧英領の国々による「コモンウェルス・オブ・ネイションズ」などを指しています。OECD加盟34カ国中30カ国で地方選挙での参政権を居住外国人に認めている・・・日本は残された少数派。しかし、日本がこれで良いと心底思うのであれば、最後の1カ国になっても、方針を変える必要はないと思います。ただし、熟慮に熟慮を重ねた結果なのか、心情的な思い込みによるものかは、はっきりと検討すべきものだと思います。
因みに、お隣の韓国は、地方レベルでの選挙権のみ居住外国人に認めています(被選挙権は認めていません)。ただし、永住資格取得後3年以上経過した19歳以上の外国人、という条件をつけているそうです。華僑からの要求を受け入れての法整備だそうですが、永住外国人に選挙権を認めているのは事実です。
国際化に伴い、ヒト・モノ・カネが国境を越える、と言われ始めて20年、あるいはそれ以上になるのではないでしょうか。実際、貿易額や海外への投資も増え、海外に旅行に行く人はもちろん、駐在などで海外に暮らす日本人も増えています。当然日本に来る、あるいは暮らす外国人も増えています。そうした動きに、法整備や行政が機敏に対応できているのでしょうか。
ただし、ここで言う果断な対応とは、何が何でもすべてを他国に合わせればよいというものではなく、日本が直面している課題と日本の将来像をしっかりと認識し、十分に(ただし時間をかけずに)熟慮・議論をし、一度決められたものは間違いなく実行するということです。外国人への参政権も、そうした課題の一つなのかもしれません。政治家の大きな声に惑わされない、しっかりとした国民的検討が今一度、必要なのではないでしょうか。
外国人の参政権についての最近の動きを、15日の『ル・モンド』(電子版)が伝えています。
左派陣営が、地方選挙レベルにおいて外国人居住者へ選挙権、被選挙権を与えるべきだという提案を行っている。27市の市長たちが、ほとんどが社会党所属だが、15日、上院において、彼らの民主的な要請に対して行政、および国民の間での議論を喚起した。
運動をリードしたのはストラスブール市だ。ヨーロッパ議会(ストラスブールにあります)の支援を得て、昨年10月、外国人居住者による議員集会を行った。この動きは、パリ、トゥールーズ、ナント、リール、グルノーブル、メッツ、カーン、ブザンソンなど他の大都市や、サンドニ、オーベルヴィルなどパリ首都圏の都市に広がった。それらの都市では、居住外国人の議会や行政の垣根を越えた委員会などがつくられている。
ストラスブール市長のローラン・リ(Roland Ries)は、もう一段、新たなステップへ踏み出すべき時に来ていると述べている。市長は、また、地方参政権の付与により、居住外国人はその町での暮らしにいっそう溶け込むことができ、共生にともに参加することができるようになる。そしてそのことを地域住民の多くも理解していると考えている。
1992年のマーストリヒト条約の成立以降、地方レベルでの参政権がEU加盟国出身者に限り認められるようになった。27人の市長たちの提案は、地方選挙における参政権を出身国に関わらず、すべての居住外国人に拡大しようというものだ。
こうした提案は、実は1981年の大統領選挙において、フランソワ・ミッテラン(François Mitterrand)が掲げた101の提案(les 101 propositions)に含まれていたのだが、当選後、2期14年の間、何ら前進を見なかった。
また2000年5月、コアビタシオン(la cohabitation:所属勢力の異なる大統領と首相が共存する状態、2000年当時は右派のシラク大統領と社会党のジョスパン首相)の時代、同じ提案がいったんは下院で多数派を占める左派陣営(社会党・緑の党・共産党)の賛成で可決されたのだが、ジョスパン首相(Lionel Jospin)は上院へ送ることを拒んだ。
右派陣営はこうした提案に反対なのだが、その理由は、選挙権は市民権と密接に結びついているからだ、というもの。フィヨン現首相も2000年当時、社会党議員によって提案された法案について、市民権との結びつきを根拠に反対をしていた。
サルコジ大統領は、内相だった2005年当時、居住外国人への参政権付与について、厳格で思慮深い議論を始めるべきだと述べていたが、2007年に大統領選に立候補した際には、こうした考えはどこかに消えてしまっていた。
・・・ということで、政治的立場の違いを超えて、政治家の約束は、フランスにおいても、単なる口約束に終わることが多いようです。しかも、口約束をいかにも実現しそうに思わせる術、当選してしまえばすっかり忘れてしまえる技に長けた政治家ほど、権力の階段を上まで登っていけるようです。これもひとつの不条理、と言えばいいのでしょうか・・・
ところで、外国人に選挙権を与えている国はいくつくらいあるのでしょうか。自分の国ではどうすべきか、という事を自分の頭でしっかり熟慮する前に、すぐ外国の例を見ようとするのは、つねにキャッチアップをしてきた日本人の性で仕方がないこと、と自己批判、そして自己弁護しつつ、ウィキペディアで調べてみました。
以下は、いずれも滞在期間・在留資格・年収などの要件で一定の制限を課す。
・居住する外国人に対し、地方レベルの投票権を、国内の全域で、国籍を問わず、付与している国家の数は、24ヶ国。
・これらに超国家的グループ(スープラナショナリズム)の加盟国が相互に限って投票権を認めている国家を合わせると、39ヶ国。
・地方レベルに加え、国政レベルの投票権まで認める国家の数は、11ヶ国(その内の7ヶ国は、国籍を制限している)。
・地方レベルの投票権に加え、被選挙権まで認める国家の数は、26ヶ国(その内の12ヶ国は、国籍を制限している)。
・「先進国クラブ」と言われる経済協力開発機構(OECD)の加盟34ヶ国の内で外国人参政権を地方レベルで認めている国家の数は、30ヶ国で、国政レベルに限れば7カ国である。(以上、ウィキペディアの外国人参政権の項目より)
超国家的グループとは「EU」や旧英領の国々による「コモンウェルス・オブ・ネイションズ」などを指しています。OECD加盟34カ国中30カ国で地方選挙での参政権を居住外国人に認めている・・・日本は残された少数派。しかし、日本がこれで良いと心底思うのであれば、最後の1カ国になっても、方針を変える必要はないと思います。ただし、熟慮に熟慮を重ねた結果なのか、心情的な思い込みによるものかは、はっきりと検討すべきものだと思います。
因みに、お隣の韓国は、地方レベルでの選挙権のみ居住外国人に認めています(被選挙権は認めていません)。ただし、永住資格取得後3年以上経過した19歳以上の外国人、という条件をつけているそうです。華僑からの要求を受け入れての法整備だそうですが、永住外国人に選挙権を認めているのは事実です。
国際化に伴い、ヒト・モノ・カネが国境を越える、と言われ始めて20年、あるいはそれ以上になるのではないでしょうか。実際、貿易額や海外への投資も増え、海外に旅行に行く人はもちろん、駐在などで海外に暮らす日本人も増えています。当然日本に来る、あるいは暮らす外国人も増えています。そうした動きに、法整備や行政が機敏に対応できているのでしょうか。
ただし、ここで言う果断な対応とは、何が何でもすべてを他国に合わせればよいというものではなく、日本が直面している課題と日本の将来像をしっかりと認識し、十分に(ただし時間をかけずに)熟慮・議論をし、一度決められたものは間違いなく実行するということです。外国人への参政権も、そうした課題の一つなのかもしれません。政治家の大きな声に惑わされない、しっかりとした国民的検討が今一度、必要なのではないでしょうか。