ふりかえれば、フランス。

かつて住んでいたフランス。日本とは似ても似つかぬ国ですが、この国を鏡に日本を見ると、あら不思議、いろいろと見えてきます。

パリのDSK、メディアを走らす。

2011-02-24 21:01:26 | 政治
IFM(仏語ではFMI;le Fonds monétaire international)の専務理事を務めているドミニク・ストロス=カン(Dominique Strauss-Kahn)。フランスではよくDSKという略語で、ある種の愛着をもって呼ばれています。経済学博士号を持っており、母校のパリ政治学院で経済学の教授も務めていました。また、ENAやスタンフォードの客員教授も務め、社会党の国会議員としても経済・財政のエキスパートとして活躍してきました。下院の財務委員長をはじめ、産業・通商大臣、経済・財政・産業大臣などの役職もこなしてきました。

そして、3年少し前、サルコジ大統領の推挙でIMFの専務理事に。社会党員でありながら、右派・UMP(国民運動連合)のサルコジ大統領の誘いに乗ったと、一部では非難されましたが、IMF専務理事としての活躍で、今や社会党のみならず、多くのフランス国民にとって、次の大統領選へ向けての期待の星になっています。世論調査では、次期大統領にふさわしい政治家のトップに推されています。

IMFの本部はワシントンにありますので、DSKは妻のアンヌ・サンクレア(Anne Sinclair:ジャーナリスト、元TF1の看板キャスター、特に1984~97年に担当した政治番組“Sept sur sept”で好評を博しました)とともにアメリカ暮らしを続けていますが、G20がパリで開催されたため、先週後半、パリに戻ってきました。そこで待ち構えているフランス・メディアが聞き出そうとしたのは、IMF専務理事としての世界経済の舵取りではなく、12年の大統領選に立候補する意思があるのかどうか。

『パリのアメリカ人』ならぬパリのDSK、仲達ならぬメディアをどう走らせたのでしょうか。20日(日)の『ル・モンド』(電子版:午後3時公開)が伝えています。

DSKは先週末、明らかに12年大統領選の仮想候補だった。パリに滞在した3日間、多くのメディアが彼の大統領選出馬に関する言質を取ろうと必死に食い下がったが、いずれも巧みにかわした。

日曜日、France2の夜8時のニュースが今回のフランス滞在、最後のメディアへ登場となる。そこで、IMF専務理事の2期目は続投しないという大統領選出馬へ向けたシグナルをフランス国民へ送ることができるはずだ、と日曜紙“Journal du Dimanche”はパリ滞在の有終の美を飾る発言を期待している。

DSKのIMF専務理事としての任期は、2012年11月までであり、もし大統領選に立候補するのであれば、任期途中で辞任する必要がある。IMF専務理事はヨーロッパ人、世界銀行総裁はアメリカ人という、ワシントンの妥協(le compromis de Washington)があるが、最近、DSKはいく度となく将来、IMF専務理事のポストには新興国出身者が就くべきだと、あたかも自分の後継者を暗示しているかのような発言をしており、いよいよ早期辞任かという憶測を呼んでいた。

しかし、IMF専務理事のポストは、加盟国の内政に口をはさむことを禁じられており、DSKもその周辺もこの3年半で、いかにメディアの質問を巧みにはぐらかすかということを体得している。妻のアンヌ・サンクレアは、早いフランスへの帰国を望んでいるという発言で、2期目は望んでいないというニュアンスを伝えている。そこで、France2の番組で妻の望みをかなえるような発言があるのではないかと、“Journal du Dimanche”は期待しているわけだ。そこで、紙面で「2012年は、始まった」と言う見出しを掲げたのだが、同じ見出しを掲げたのが週刊誌の“Nouvel Observateur”で、DSKはついに決断を下した、彼は候補になる、という記事を載せている。

日刊紙“le Parisien”とのインタビューでは、多くの海外居住者と同じようにフランスが懐かしい、というコメントを発している(メディアの憶測が確信に近づく根拠の一つになっているのかもしれません)。

CNNとのインタビューでは、遠く離れていると、人々からまるでサンタクロースのように見られるが、自分はけっしてサンタクロースではないと、発言している(プレゼント、つまり大統領選出馬をお土産に戻ってくることはない、という意味なのでしょうか?)。

19日、G20閉会後の記者会見では、国際機関らしい穏健な言い回しで、自分の将来に関する質問を巧みにかわし、発展の遅れた国々へより積極的な支援を行いたいという新たなIMFの役割を擁護するにとどめた。食い下がるメディアに対しても、今念頭にあるのはIMFだけだと答えている。

一方、立候補するのかしないのか、はっきりさせないDSKの態度にいら立つ政治家は多い。中道“MoDem”党首のフランソワ・バイルー(François Bayrou)はこうした騒ぎをばかげていると批判し、政治家もメディアも情報に振り回されず、もう少し賢さとユーモアを持つべきだと発言している。緑の党(le Vert)のノエル・マメール(Noël Mamère)は、DSK周辺は騒ぎを作り出すのがうまいが、表面的なものにすぎないと語っている。社会党の議員たちは、France2での発言を待つとしている。社会党報道官のブノワ・アモン(Benoît Hamon)も、DSKが2012年への立候補を表明することはないと確信しているとは言いながらも、ブルターニュ地方での休暇を一時中断して、France2のニュース番組を見ることにすると述べている。

・・・ということなのですが、この記事は、冒頭に記しておいたように午後3時に公開されたもので、いかに多くの人が夜8時からのFrance2のニュース番組を待っていたかがよく分かります。いよいよ、あのDSKが大統領選出馬を表明する・・・実際730万人とも言われる人々がこの番組を視聴し、20分ほどのDSKのライブ・インタビューにくぎ付けになったようです。しかし、実際には、明確な出馬表明はありませんでした。のらりくらりと実にうまく言い逃れをしていましたが、自分の基盤が社会党にあることや、失業や低賃金労働により電気代も払えず困窮しているフランス人が増えている中で、派手な人気取りに終始しているサルコジ大統領への批判に言及するなど、やはりフランス政治への関心は薄れていない、きっと近いうちに・・・という期待を十分に与えるようなインタビューでした。

はたして、DSKは出馬するのでしょうか。社会党だけでも、DSK、マルチーヌ・オブリー第一書記、フランソワ・オランド前第一書記、セゴレーヌ・ロワイヤル2007年大統領選社会党候補と4人も有力候補がおり、このうちの誰が社会党候補になったとしてもサルコジ大統領に勝てるという世論調査も出ています。また、与野党の間隙を縫うように、極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首の人気が急上昇してきています。2012年、し烈な戦いになりそうです。

そして、2012年は、アメリカ大統領選挙の年でもあります。オバマ再選なるか。熱い政治の年になりそうですが、2012年を前に今、日本の政治は混乱の最中にあります。日本再生への胎動であってほしいと思っています。
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