老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

お互いポックリ死にたい

2022-02-07 15:51:00 | 老いの光影 第7章 「老人のねがい」



犬を形どった壁 那須高原

1798 お互いポックリ死にたいものだ

85歳の脳梗塞後遺症の爺様
軽くすみ、歩行器で室内外を歩いている

妻は83歳、物忘れが始まった、というけれど
「何を忘れたか 数分後に思い出す。まだ呆けてはいない」、と笑いながら話す婆様

病気する前は酒飲んべで、その上煙草も吸ってた
脳梗塞になってからは 酒煙草はやめた

昔は見合い結婚ならまだしも
親の知り合いの口利きで
いまの爺様と一緒になった

爺様と結婚して「当たり」「外れ」、どっちか、と尋ねると
婆様は躊躇することなく「外れた~」と答える
傍に居た爺様は「俺は当たりだった」

婆様は こんな山奥
狸か猪しか棲まないところに
嫁ぎたくなかった
親が決めた結婚だから
反対もできない、親の考えに従うしかなった

携帯電話のアンテナが立たず 黒電話しか通じない
陽があたらない山里に棲む

爺様 婆様 今年で結婚60年を迎えた
「おめでとう」、と祝福する

婆様 煮魚の骨を1本1本 箸でとり除き
骨抜きの魚を爺様にあげている
「魚だけでなく爺様も骨抜きだ」、と婆様は笑う

お互いポックリ死にたいものだ
婆様は爺様に話しかける

抱かれる

2022-02-07 08:38:17 | 阿呆者
1797 抱かれる



昨日の日曜日、片田舎にあるラーメン屋で評判の塩ラーメンを頂いた

コブシの花のように
両手指はしっかりと握り
母親の胸に抱かれている赤子
一抹の不安もなく
まどろみの心地にある

老いゆくあたしは
すがるものはなく
一抹の不安を感じながら
ともに老いゆく愛犬を抱きしめ
癒され気持ちを静める