老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

「救心」が意味するもの

2022-02-01 05:59:38 | 老いの光影 第2章
1791 老人の好きなドリンク



余が関わり知っている老人
在宅訪問をすると
お茶代わり或は帰り際に
よく出されたりするドリンク
リポビタンD
チオビタ
オロナミンC

認知症を患う老人のなかには
体に「いい(良い)」と思い込み
1日に3、4本飲んだりしてしまう
トイレに通うこと頻回

頭痛や腹痛などすると
家庭薬である置き薬箱から
せきどめ
ケロリン
救心
などを手軽に服用してしまう
置き薬の人が
これは体調が悪いときに
よく効く薬だよ、と置いていく高価な薬

何でも効くと誤解される救心

救って欲しいのは
老人の心(気持ち)

そう「痛く」なくとも
「痛い」と訴えることで
あなたの傍に「居たい」
または
「生きたい」とも聞こえて来る



※再掲 2018/07/07

882;行ってみたいなよその県(くに)

2018-08-11 11:11:07 | 老いの光影 第2章
行ってみたいなよその県(くに)

今年もお盆がやって来た。
ご先祖様が帰って来る。

11日から16日までお盆休みがある人もいる。
羨ましい限り。
要介護老人の出かけ先は
デイサービスと月1回の通院。
デイサービスの車窓からは、
遠い県(くに)のナンバープレートを目にする。
行ってみたいな~よその県(くに)。
要介護老人にとっても家族介護者にとっても
お盆休みはない。

878;人間の息づかい

2018-08-10 11:21:05 | 老いの光影 第2章
人間の息づかい 

暑い夏
蒸し暑く気怠さを感じる
喉が渇くと
気が滅入ってしまう
喉が渇いても
水を飲むこともわからずにいる
認知症を抱えた老人
だれも冷たい麦茶を淹れてくれる人はなく
居間にじっとしている一人暮らし老人

家族から気にされなくなると
食べることにも事欠く
食の飢えは
愛情の飢えでもあるのか
夏の空腹は
気怠さを覚え生きる気力させ失せてしまう

民家を借りた
小さなデイサービスは
愛情に飢えた老人にとり
オアシスのような居場所
乾いた喉を潤し
飢えた腹を満たす
忘れかけた言葉を取り戻し
人間の息づかいを感じる


再掲blog272

867;ふかし釜(蒸し器)

2018-08-06 13:39:17 | 老いの光影 第2章
ふかし釜(蒸し器)

自信がないときは聞くに限る。
「聞くは一時の恥」という言葉がある。
恥を忍んで聞くことは大切なこと。
「聞かぬは一生の恥」

ある55才の介護福祉士の資格を有している介護員の話である。
彼女は、ヘルパー業の他に主婦業も為している。

「冷蔵庫(冷凍庫)にサランラップで包んだおにぎりがあるので、それをふかし釜で温めてくれる」
と主任介護員から頼まれた。

55才のヘルパーは
「サランラップを剥がさずに包まれたままでふかし釜に入れ蒸した」

主任介護員は、ふかし釜の蓋をあけ「・・・・・・・???」

〔さくらデイサービスでの出来事〕

861;星になった彼女

2018-08-04 04:38:19 | 老いの光影 第2章
星になった彼女☆彡

昨日13時10分 
82才の芦野世津さんが永眠された。
(ご冥福をお祈りいたします)
彼女とは5年前に知り合った。
昔宿場町だった飼料店を
代々先祖から受け継ぎ
店の切り盛りをしてきた。
彼女はそこに生れ育ち
婿をとった。
それだけに、我儘で頑固な性格。
他者を見下す様なところを
感じることもあった。
糖尿病、心不全を患い車いす生活になってからは
長男夫婦の人生のことを
気に掛け
家に帰りたい気持ちをぐっと抑え
最後の1年間は
「ロング」ショートを使い、
介護施設そして病院で過ごされた。
糖尿病もあり
右足指や右脚の脛にできた褥瘡はなかなか完治しなかった。
食べ物が趣味で
糖尿病であるだけに食制限はあったけれど
長男夫婦には
いま入院で血糖値は安定しているから
固形物は飲み込みができないので無理だが
好きな果実はジュースにして
飲ませて下さい、と。

長かった彼女とのかかわりだっただけに
この世を去り星になったことは
寂しい。
また一つ星が輝いた。

856;猛暑いつまで続く・・・

2018-08-02 04:26:43 | 老いの光影 第2章

枯れた紫陽花

猛暑いつまで続く・・・

4時18分目が覚めた。
薄明かりの空
雲は無く、
今日も猛暑・・・。
黒い羽の烏一羽
朝から鳴いている。

風通しの悪い寝たきり老人の家、
水を飲めと言われても
暑すぎるため
水をそう飲む気にもなれない。
ジッと暑さ苦しさに耐え忍ぶ。

この暑さ続きで
老いた介護者もぐったり
「もう介護は限界だ」と呟くも
すぐには入れる介護施設もなく
金も無い。

熱中症で入院した脳梗塞後遺症、慢性腎不全症の爺様
退院できるまでに回復した
自宅にエアコンが設置される日は8月23日
その日まで入院が延びた

この猛暑を乗り越える。
厳しい登り坂
汗が目に滲み
先が見えないだけに
大変
気持ちが折れそうになる。
寝たきりで
動くもこともままならぬ
ジッとしているだけ。




850;来年の事を言えば鬼が笑う

2018-07-29 21:23:41 | 老いの光影 第2章
まだススキの季節ではないが、暑いので団扇の代わり

来年の事を言えば鬼が笑う

来年の事を言えば鬼が笑う
何故だろう

艶婆さんは
夏になると
商店街に繰り出される
提灯祭り〔注〕
夫は長期入院しているため
今年は
一人で観るのも侘しい、と思っていたら
デイサービスの仲間が
一緒に観てくれることになった

昨年の夏
脱水症から寝たきりになった
91才の智恵子婆さん
いまは杖なしで歩けるようになった
迷惑をかけるから・・・・・
誰かが「来年は生きているとは限らないよ」
桜の花同様
最後の提灯祭りになるかもしれない
来年提灯祭りが観れるとは限らない
死は突然訪れるかもしれない
老若男女問わず

だから
来年の事を言えば鬼が笑う
と言うのは
来年まで生きているかどうかわからない
来年の話をしても・・・・・


〔注〕鹿嶋神社祭礼渡御祭 白河提灯祭り

日本三大提灯祭りの一つにかぞえられている白河提灯祭り。
白河地方の総鎮守として、
古くから人々の尊崇を集め、
400年に渡り継承されてきた。
白河の人々の精神文化の歴史であり、
心の拠りどころとして伝えられてきた。

隔年行われている神輿の町内渡御・提灯行列・屋台・山車の引き廻し等、
別名「儀式まつり」といわれる程、
武家社会の格式を導入した独特の祭りで、
伝統文化として白河の地に受け継がれている。

粛々とすり足で進む行列、
宵闇に揺れる数千の提灯は幻想的で、
多くの見物客を魅了してきた。



847;人は、自分のおもうようにならない

2018-07-28 04:15:10 | 老いの光影 第2章
朝の散歩路 阿武隈川の岸辺


人は、自分のおもうようにならない

ときには
自分の心さえ
思うようにならないことさえあるのに
認知症を患った妻は
どうしたらいいのか。

言葉で言ってもわからず、
つい手が出てしまい
叩いたり
手首を強く握り絞めたりしてしまう。
体のあちこちは
内出血痕が垣間見える。
「どうしたの」と尋ねると
婆様は「転んだ」「ぶつけた」と
笑いながら誤魔化す。

自分が思うように
人は行動しない。
思うようにらないから
話してもわからないから
「叩いたり」「蹴ったり」しても
人は思うようにはいかないどころか
逆に怯え体を身構えてしまう。

認知症老人に限らず
子どもも
部下も
上司も
自分の思うようにはならない

他人(ひと)は
自分の分身ではない
自分と同じく
個性を持った唯一無二の存在であることを・・・・



842;夏空

2018-07-25 08:10:55 | 老いの光影 第2章
鳥になり空を飛びたい
夏空

夏の青い空に
何を感じ
何を想う

鳥たちは
日陰の森で
羽休み哉

風も通らぬ部屋
カーテンを閉め
ベッド上で
ジッと寝ている婆様
訪問すると
顔を傾ける前に
目がジッと動いた
生きている

828;暑さに負けるな

2018-07-20 08:35:53 | 老いの光影 第2章
 暑さに負けるな

地上の温度は
何度あるのであろうか
草花は萎れることなく
しぶとく生きている

暑すぎて
歌を忘れたカナリア
体が水を欲しても
水を飲むことがわからない
認知症老人
オシッコが出るからと気にし
水を摂らない老人
クーラーもなく
扇風機も回さず
ベッド上に臥せている老人
紙おむつの暑さと蒸れにも耐え忍ぶ

室内犬は
クーラーの下でまるくなり寝ている
隣りの要介護老人は
熱中症にかかり
救急車で搬送され7日間の入院となった
病室を訪れ見舞う
点滴で元気になりホッと胸をなでおろす

なぜ暑いのに
向こう岸の草を目指そうとしたのか
アスファルトの路上は
干からびたミミズ
蛙の鳴き声は聞こえず
風鈴の音も鳴らない

ブ~ンブンと蚊の音だけが聞こえ
煩わしく首の周りを飛び交う
止まった瞬間に叩くが
逃げられてしまう
蚊はまた攻めてくる
何とも嫌な奴

明け方 虫の鳴き声が聞こえる
虫の鳴き声に一時涼しさを感じる












826;お前は誰だ

2018-07-18 04:43:40 | 老いの光影 第2章
 お前は誰だ

深夜起き出し
トイレに行く。
用足しを終えたあと
洗面所に映る自分の顔
見たことのない顔
知らない顔
鏡に向かって
「お前は誰だ」と話しかけても
うんともすんとも言葉が返って来ない。
鏡映った婆様の顔は
以前黙ったままでいるので、
鏡を見ている婆様は、不機嫌になり
再び大きな声で「お前は誰だ!」と叫ぶ。

葬式等でしばらくぶりにあうと
他人の顔を見てしみじみ思うことがある。
「老けたな・・・・」
自分の顔は、鏡を見ない限りわからない。
葬式から帰り、
自分の顔を鏡で見てみた。
「お前は誰だ」と呟いた。
自分の顔は予期もせぬほど老けていた・・・・・。


824;半端じゃねえ暑さ

2018-07-17 22:03:47 | 老いの光影 第2章
猪苗代湖

 半端じゃなえ暑さ

ひとり暮らしのお婆さんの家を訪問したところ
「半端じゃなえ暑さ」と話しかけられた。

10年前の秋
夫は脳梗塞が因で認知症を患った。
夜 雨の中
家から外に出て、夫は先に歩き始めた。
私は後ろから追いかけてゆくのがやっとだった。
「雨に濡れ 泣きたかった。辛かった。死にたかった。
走っている自動車に飛び込もうと思ったが、
運転手や残された子ども夫婦に迷惑がかかるので止めた」。

冷たい麦茶を頂き、暑い夏をしのいだ。、

823;「万引家族」 とんでもない家族だ

2018-07-16 11:07:54 | 老いの光影 第2章
 「万引家族」 とんでもない家族だ
今日も在宅訪問
旦那は、脳梗塞後遺症で右半身不全マヒ
家の中は杖を使いどうにか歩いている
妻は、歩くことはできるが物忘れが増え、
アルツハイマー型認知症の診断を受けた。

妻の名前は美代さん
私に「昨日長女はわざわざ東京まで行って『万引家族』の映画を観てきた」。
彼女は続けざまに話す。
「題名が良くない。映画で最高の賞をとったというが、へんな話しだ。
『万引映画』を見て、家族で万引きを真似をしたらどうする。
家族の万引きを奨励する映画ではないか。
とんでもない。へんな映画だ」
と憤慨していた。

私はまだ映画も本も目にしていない。
「犯罪(万引)}でしか、つながれなかった家族。