宮坂昌之はある著書(下記参照)でこう書いている──「私はこのようなことから、新型コロナウイルス感染症ワクチンの認可の際には、慌てずに、しっかりと第三相試験の結果を見極めたうえで判定がなされることが必要と考えています。」と。
記者は宮坂昌之の本も読んではいないのだろう。読んでいれば彼の発言は矛盾だらけだ。
■宮坂昌之『新型コロナ 7つの謎』ブルーバックス、2020年頁225──
最後は第三相試験です。数千人の被験者が参加して大規模な安全性試験、有効性試験が行われます。予防効果、重症化阻止効果だけでなく、ワクチン接種の感染に対する影響(特にワクチン接種により病状が悪化することはないか)などを調べるので、通常、2年はかかります。この第三相試験は、いわば、最終的な安全確認試験であり、予防効果確認試験でもあります。この試験で確認すべきことは、次の4つです。
① ワクチンが単に抗体を作るかではなく、中和抗体(=善玉抗体)を作る
② ワクチンが十分な感染予防効果を持つ
③ ワクチンが重症化予防効果を持つ(十分な感染予防効果があれば、この点は問題ではありませんが、感染予防効果が低ければ、重症化予防ができるかが非常に重要な点となります。ちなみにインフルエンザワクチンは、感染予防効果は必ずしも高くありませんが、一定程度の重症化予防効果を持つので、よく使われています)
④ ワクチン接種者が感染したときにADEが起こらない
このうち、①は第二相試験でもある程度は確認できます。しかし、②と③は第三相試験でないと確認できず、④は第三相試験終了時まで確認することはできません。つまり、通常は第三相試験だけで2年程度の時間が必要です。このようなことから、これらの臨床試験を全部終えるためには、最低でも、数年の時間と数百億円を超える費用がかかります。
頁244──
・・・
しかし日本の場合、これまでに海外の第三相試験の結果だけを基に新薬の認可をして、痛い目にあった経験があります。抗リウマチ薬のアラバは2003年、日本では海外の
第三相試験のデータを基にスピード認可されたのですが、その後、日本では投与された患者に間質性肺炎が多発し(約5000名の患者中、25名が間質性肺炎で死亡)、このために一般使用が一時中止されたという例があるのです。一方、海外の第3相試験では間質性肺炎はほとんど見られていませんでした。その後、日本では第4相試験(市販後臨床試験)が行われ、投与量を下げれば安全ということがわかりました。このようなことが、民族差なのか、それともより単純なからだの大きさの違いなのか、どのような原因によって起こったのかははっきりしていませんが、いずれの場合であれ、海外の第3相試験の結果をそのまま信じるのは気を付けたほうが良いことがわかります。
私はこのようなことから、新型コロナウイルス感染症ワクチンの認可の際には、慌てずに、しっかりと第3相試験の結果を見極めたうえで判定がなされることが必要と考えています。
コロナワクチン、「フィリピンの悲劇」再来はないのか?
2021/02/10
谷口 恭(太融寺町谷口医院)
感染症
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コロナワクチン、「フィリピンの悲劇」再来はないのか?:日経メディカル (nikkeibp.co.jp)
まず、誤解のないように「事実」を述べると、僕は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを接種する予定だ。集団免疫を獲得するためには接種者を増やさねばならない。だが、患者から「うった方がいいんでしょうか」と尋ねられたときには「現時点では有効で安全性も高いとされてはいますが、中長期的には分かりません」と答えている。
ファイザー社、モデルナ社ともにワクチンの有効率は約95%とされていて、これは素晴らしい数字だが個人的には有効率が少々低くても安全性の方が大切だと考えている。一部の非医療者の人たちから誤解されているようだが、有効なワクチンが市場に出回ったとしても我々は元の世界に戻れるわけではない。やはり「3密」を避けてマスクを着用するという新しいルールは守らねばならない。だからワクチンは有効率がここまで高くなくても有益だと思う。より重要なのは安全性の方だ。
アナフィラキシーの頻度が他のワクチンよりもわずかに高いようだが、この程度の数字であれば大半の人が受け入れるだろう。過去に幾つかのワクチンで問題となったギラン・バレー症候群のような神経症状も現時点では報告がなさそうだ。だが、そういった副反応よりも検証に時間がかかるものはどうだろう。既にいろんなところで可能性が指摘されている「抗体依存性感染増強(関連記事:新型コロナのワクチン開発、専門家が気にする“ある副作用”)」だ。
コロナワクチン、「フィリピンの悲劇」再来はないのか?
2021/02/10 日経メディカル 谷口 恭(太融寺町谷口医院)
まず、誤解のないように「事実」を述べると、僕は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンを接種する予定だ。集団免疫を獲得するためには接種者を増やさねばならない。
だが、患者から「うった方がいいんでしょうか」と尋ねられたときには「現時点では有効で安全性も高いとされてはいますが、中長期的には分かりません」と答えている。
アナフィラキシーの頻度が他のワクチンより若干高いようだが、過去に幾つかのワクチンで問題となったギラン・バレー症候群のような神経症状も現時点では報告がなさそうだ。だが、そういった副反応よりも既にいろんなところで可能性が指摘されている「抗体依存性感染増強(関連記事:新型コロナのワクチン開発、専門家が気にする“ある副作用”)」だ。
フィリピンで5年前に起きたワクチンの“ギニーピッグ”
3年前フィリピン人の知人が「フィリピン人はギニーピッグ(guinea pig)にされた」と憤っていた。『ギニーピッグ』とは連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤)で有名となったスプラッター映画で、モルモット、すなわち人体実験だ。
「ギニーピッグ」の“加害者”はフランスの製薬会社サノフィ社。デング熱ウイルスのワクチンは他国では使用されていないがフィリピンだけで開始され「フィリピンで“人体実験”をすることが目的だった」と大勢のフィリピン人が思っている。
2016年4月、フィリピン保健省は公立学校約80万人の子どもに対し、サノフィ社製のデング熱ワクチン「Dengvaxia」の接種を開始した。
時期尚早ではないかとする反対意見が多く、この時点ではWHOもこのワクチンを推奨していなかった。7月、WHOはこのワクチンを条件付きで推奨することにしたが、その頃からワクチンを接種した小児がデング熱に感染すると重症化し、死に至るケースが相次いだ。
ワクチンとの因果関係が否定できず、2017年11月29日、サノフィ社は「Dengvaxiaをデング熱ウイルスに感染歴のない子どもに投与すべきでない」と発表。フィリピン保健省は直ちにこのワクチンの予防接種プログラムを停止し、ワクチンの販売を中止した。12月5日、WHOワクチン中止のフィリピン政府支持。2018年、ワクチンはデング熱の既往が確認された者(抗体陽性者, またはデング熱が検査診断された既往のある者)のみにワクチン接種を行うと変えている(感染研の関連サイト)。
2019年4月時点でフィリピンの約600人の小児が、ワクチンが原因となり死亡した可能性がある。
ところで、Dengvaxiaのプログラムはブラジルではうまくいっている。フィリピンでは失敗しブラジルでは成功しているのはなぜなのか。それは「年齢」だ。ブラジルでは15~27歳が対象なのに対し、フィリピンでは小学生がプログラムの対象だった。
なぜ年齢で差がでるのか
ブラジルではワクチン対象者の多くが幼少時にデング熱に感染しているのに対し、小児が対象となったフィリピンではそうではなかった。つまり、未感染の小学生にワクチンを接種したが故に接種後デング熱ウイルスに感染、抗体依存性感染増強現象が生じた。
以前から、デング熱は2回目の感染時に1回目とは異なるタイプに感染すると抗体依存性感染増強現象が生じ重症化することが知られている。一方、新型コロナにそのような報告は(恐らく)なく、再感染するかも不明だ。
デング熱と同じようにSARS-CoV-2も2回感染することがあるからという理由だけで抗体依存性感染増強現象が生じワクチンがフィリピンのDengvaxiaと同じ運命をたどるといえば論理の飛躍だが、絶対に起こらないと証明することもまた困難なのではあるまいか。
フィリピンのギニーピッグ(人体実験)が起こったのはわずか5年前
しかもDengvaxiaは20年かけて開発されたワクチンなのだ。
それだけの時間をかけ安全性も担保されたはずだったワクチンが市場に登場し、600人以上の子どもが犠牲になった可能性が高く、フィリピン政府は2019年2月に「Dengvaxiaを永久に禁止する」と発表した。
分子生物学は飛躍的に進化しておりファイザー社が販売することになったmRNAワクチンを開発したのはドイツのBioNTech社というバイオテック企業。2008年にUgur Sahin教授と妻のOzlem Tureci教授が夫婦2人で立ち上げた小さな企業だ。
1月武漢で新型コロナが発生した時点でmRNAワクチン開発に取り掛かり、1年足らずで実用化させた恐るべきスピードだ。BioNTech社は、個人的には応援したいが、日ごろ診ている患者に現時点でこのワクチンを勧められるかとなると話は別だ。
アナフィラキシーを除いたファイザー社/BioNTech社製ワクチンの重篤な副作用として、米国の医師に生じた特発性血小板減少性紫斑病(ITP)での死亡、さらにノルウェーの複数の高齢者に起こった死亡事例はあるが、ファイザー社によるといずれもワクチンとの因果関係を示したエビデンスはないとのことだ。
WHOのワクチン安全性諮問委員会は1月22日、ワクチンを推奨するが各国はワクチンの安全性を引き続き監視することも求めている(WHOの関連サイト)。今後、ファイザー社/BioNTech社のみならず、全てのワクチン製造・販売会社は副反応の詳細を可及的速やかに報告してもらいたい。
ちなみに、以前当院にやってきたサノフィ社のMRは「Dengvaxiaでフィリピンに何が起こったか」について全く何も知らなかった。
(抜粋)
2月10日 日経メディカル