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職場の性暴力被害の実態を分かっているのか…私の体験から法制審に問う 元ライター・池田鮎美さん

2022-07-13 02:53:03 | 性暴力
職場の性暴力被害の実態を分かっているのか…私の体験から法制審に問う 元ライター・池田鮎美さん
2021年6月10日 06時46分




https://www.tokyo-np.co.jp/article/109741
◆「成人している被害者は弱くない」「合意あることも…」
 9年前、フリーライターとして働いていた時に、取材先から性暴力を受けた。警察に届けたが不起訴になった。刑法の性犯罪規定を、現実に即したものへと見直す必要があると思う。
法務省


 2017年の刑法改正で残された課題について、さらなる改正の要否を議論する法制審議会が、秋から始まる見通しだ。気がかりなのは、その前段となる法務省の検討会で、職業上の地位関係性を利用した性暴力についての議論が深まらなかったことだ。検討会では、「成人している被害者は弱くない」「合意がある場合もある」「社内規則で対応すべきだ」という意見が出た。被害の実態を何もわかっていないと思う。
 上司や取引先から「ちょっと仕事の話をしたい」と言われて2人きりになり、性暴力を受けた場合、被害者にはもうその時点で打つ手がなくなる。現行法では、加害者が「合意があったと思った」と言えば、その思い込みが優先されるからだ。しかも、そう思い込んだことの立証責任は加害者にはない。
◆けがをしないと不同意とは見なされず
 明確な不同意と認定するために、被害者には「けがをすること」が求められている。わたしの場合も、けがをする程度の抵抗をしなかった理由について厳しく問いただされた。「仕事相手だから」という説明に、検察官は納得しなかった。専門家が「危機的状況では抵抗できないということは一般的なこと」と証言しても、検察官は事件を起訴しなかった。
 「失礼のないように」と気を付けているうちに、とんでもないことに巻き込まれていたーーそんな時、こちらも相手も負傷する程度の抵抗なんて、できるだろうか。職業上の地位関係性は、被害者の立場を確実に弱くする。どんなに屈強な人物でも、上司や取引先からの性暴力に驚かない人はいない。相手は信頼する取引先や、尊敬する先輩かもしれない。機嫌を損ねれば降格されたりクビになったりする可能性もある。社内規則でなど対応しきれない。非正規雇用やフリーランス、就活生のような弱い立場にいる人ほど、諸法令に保護されず、刑法に頼るしかないという現実がある。
◆台無しになった人生
 被害の後、わたしの人生はめちゃくちゃになった。残酷なフラッシュバック。仕事を続けられなくなった。精神病棟への入院を余儀なくされ、何十万円もの請求書が届いた。無収入になっていたので、貯金はすぐに底をついた。生涯にわたって治療はつづくのに、補償はない。夢も消えた。障がい者になってしまった。社会の仕打ちにおびえ、外出できなくなった。9年経たった今日も、家族は、わたしが事件のせいで死なないようにと心配している。加害者のほとんどは、こうした被害の実態を知らない。
 これが日本の労働の現実だ。刑法は守ってくれない。こうしたことは小学校で教えてほしかった。真摯しんしに働く人が人生を棒に振らざるを得ない社会の入り口で、将来の夢を作文に書かせるなんて無責任すぎる。
◆加害者の言い逃れ許さず、立証責任を
 法制審のみなさんに伝えたいことがある。職業上の上下関係や利害関係を言い逃れに使う加害者は後を絶たない。わたしの場合も、加害者は「彼女も仕事で得をしたからギブ&テイクだ」と主張した。しかし、そもそも性暴力は命にかかわる暴力である。いくら仕事のためとはいえ、そんな取引に応じたい人などいるわけがない。ギブにもテイクにも含まれないし、含んではいけない。命がなくなれば仕事を続けられないからだ。
 刑法は、加害者のこうした非合理的な言い逃れを許してきた。社会は許さないでほしい。少なくとも今回の改正では、こうした荒唐無稽な主張の立証責任は加害者自身にあるということを、刑法に規定するべきだ。(いけだ・あゆみ=元ライター・会社員)




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「芸能界の性加害」水原希子のコメント全文

2022-04-21 03:30:13 | 性暴力
「芸能界の性加害」水原希子のコメント全文

「週刊文春」編集部
https://bunshun.jp/articles/-/53498
2022/04/13



13

3267
505


コピー

水原希子 ©gettyこの記事の画像(6枚)
 昨今の芸能界、映画界の性被害を聞いて感じている事は、元々芸能界はこういう側面がずっと存在していて、ようやく変革の時期を迎えているんだとポジティブに捉えています。
 この業界に入ってから自分に起きたハラスメントは、以前自分のインスタグラムなどでもお伝えしてきましたが、それ以外にも男性監督から言葉のセクハラにあたるような事や、指導されている中で嫌な思いをした事は数え切れないぐらいあります。相手はもしかすると無意識に言っていたのかもしれませんが、私の中ではずっと無念の気持ちが残っています。
 それ以外にも芸能界の知人や役者の方から現場で嫌な思いをした話を聞く事があります。
今、名前があがっている園子温監督のお話も以前からよく耳にしており、いろんな役者さんの方が実際に警戒をしていました。
 私も以前、作品のオファーがあった際には、友人の役者さんから園氏はそういう噂があるから気をつけた方が良いと言われた事がありました。
 また、役者同士でもインティマシーシーン(編集部注 性的なシーン)がある作品の撮影の際に、共演の年上の役者さんが前貼りを拒否して、実際には下半身が硬直した状態で撮影に入り、友人の女優さんがとても理不尽な気持ちで撮影をしなくてはいけなかったというようなお話もありました。






どこか当たり前に我慢しないといけないような雰囲気になっている
 今までインティマシーコーディネーターがいない中でも、インティマシーシーンの撮影はある程度現場ではスタッフの皆様が配慮して下さり、撮影しやすい環境作りはして頂いてきたと思いますが、ただ、その中でも必ず誰かは自分の立場やポジションを利用して、必要ない中で、中に入ってきたりするなどという事は沢山あります。
 私以外にも周りの役者さんからはこう言った話は沢山聞くので、そういった事が起きていたことは頻繁にあったかと思います。
 どこか当たり前に我慢しないといけないような雰囲気になっているのだと思います。


 そして業界の中で俳優とは脱ぐと決めたら細かい事を気にせず、脱いで演じ切る。その様なある種の美徳があり、役者魂で乗り切り、体当たりで演じ切る事が立派な俳優だ、みたいな歪んだ捉え方、精神、概念を押し付けてくる暗黙の了解のような空気が存在していると感じていますし、実際にそういう事を言われた事もあります。
 実際に自分がこのような苦い経験をして分かったのは、苦しいのに無理をして緊張状態で頑張って撮影すると、その気持ちが作品にも映り、また、自分の心にもずっと苦い思いやトラウマが残ってしまうという事。一生懸命頑張ったその作品を自分自身が誇れない事の無念さ。
 私はこの経験を経て、これからは監督やプロデューサー、スタッフ、役者との対等なコミュニケーションと信頼し合える関係がある中で、お芝居やその他の仕事をしていきたいという事。そして自分が安心できる環境でお芝居をする事がより良い作品作りに繋がるんだなと実感しています。

 
新しい事を受け入れていかなくてはならないタイミングなのではないか
 アメリカでも今大きなスタジオでは、インティマシーシーンの撮影の際にはインティマシーコーディネーターがいて、演者が守られている中、たくさん素晴らしい作品が生まれているなと観ていて感じています。
 アクションシーンにはアクション監督がいるように、インティマシーシーンにはインティマシーシーンのコーチを付ける事で、作品に関わっているすべての方にとって結果的にはプラスになると感じています。
 やはり、今までのやり方をしていた中で、何か新たな事、変化をしていく時には戸惑いを感じ大変だと感じる事もあるかと思いますが、今までのやり方によってこんなにも被害を受けた方がいるという事が今明るみに出て、ここで今までの現状を理解し、新しい事を受け入れていかなくてはならないタイミングなのではないかと感じています。


 
どこか当たり前に我慢しないといけないような雰囲気になっている
 今までインティマシーコーディネーターがいない中でも、インティマシーシーンの撮影はある程度現場ではスタッフの皆様が配慮して下さり、撮影しやすい環境作りはして頂いてきたと思いますが、ただ、その中でも必ず誰かは自分の立場やポジションを利用して、必要ない中で、中に入ってきたりするなどという事は沢山あります。
 私以外にも周りの役者さんからはこう言った話は沢山聞くので、そういった事が起きていたことは頻繁にあったかと思います。
 どこか当たり前に我慢しないといけないような雰囲気になっているのだと思います。


 そして業界の中で俳優とは脱ぐと決めたら細かい事を気にせず、脱いで演じ切る。その様なある種の美徳があり、役者魂で乗り切り、体当たりで演じ切る事が立派な俳優だ、みたいな歪んだ捉え方、精神、概念を押し付けてくる暗黙の了解のような空気が存在していると感じていますし、実際にそういう事を言われた事もあります。
 実際に自分がこのような苦い経験をして分かったのは、苦しいのに無理をして緊張状態で頑張って撮影すると、その気持ちが作品にも映り、また、自分の心にもずっと苦い思いやトラウマが残ってしまうという事。一生懸命頑張ったその作品を自分自身が誇れない事の無念さ。
 私はこの経験を経て、これからは監督やプロデューサー、スタッフ、役者との対等なコミュニケーションと信頼し合える関係がある中で、お芝居やその他の仕事をしていきたいという事。そして自分が安心できる環境でお芝居をする事がより良い作品作りに繋がるんだなと実感しています。
 これから、こういう被害が起きないようにする為にも、インティマシーシーンの撮影の際には、積極的にインティマシーコーディネーターを採用して頂き、制作側も演者側もその存在を理解していく事で、よりアップデートされた健全な作品づくりをして頂けたらと感じており、私自身もそういった取組みをしている作品にどんどん関わっていけたらと思っております。その環境の中で自分の力が発揮できたらどのような素晴らしい作品に仕上がっていくかとても楽しみです。
 今後そのような事が受け入れられる世の中に変わっていく事を強く願っております。
 最後に、今回コメントを出した経緯として、もしかしたら今後どこかで役者を夢見る女の子に、製作者側が私の名前をネームドロッピング(編集部注 繋がりのある有名人の名を会話に入れ込むこと)をして、映画に出すよ、などと言い、被害に巻き込まれるという事態は絶対に起きてほしくないと願っています。なのでその様な事を言ってくる人がいたら騙されて欲しくないし、逃げてください。日本の芸能界、映画界には真っ直ぐな思いで作品を作ってる方が沢山います。
その他の写真はこちらよりご覧ください。

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映画『無聲』オフィシャルサイト

2022-01-25 07:38:31 | 性暴力
映画『無聲』オフィシャルサイト
https://thesilentforest-jp.com


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戦争にはレイプはつきものだ② ~起きなかったレイプ~

2021-01-11 07:16:28 | 性暴力
戦争にはレイプはつきものだ② ~起きなかったレイプ~




▼S・ブラウンミラー『レイプ 踏みにじられた意思』幾島幸子訳、勁草書房、2000年


頁116──


 ピーター・アーネットは、政治的に客観的な立場から、サイゴン(引用者注:現ホーチミン市)駐在のジャーナリストの間では、ヴェトコン(引用者注:南ベトナム解放民族戦線)や北ヴェトナム軍がレイプ事件を起こすことはまずないというのが常識だったと話した。「ヴェトコンにとっての日常的武器は恐怖だった。村のリーダーを一列に並べて端から首をはねることなど朝飯前だったが、彼らの処罰システムに強姦は含まれていなかった。略奪と食糧を盗むこと、レイプは禁止されており、もし行われれば驚きだった。実際、ヴェトコンによるレイプ事件はほとんど聞いたことがない」とアーネットは言う。
 ヴェトコンの間の強姦禁止は、単なる道徳的勧告以上のものだった。米陸軍情報部はヴェトコンの死体から入手した文書を記者たちに公開していたが、アーネットはそうした文書の中に、レイプを犯したために懲戒や後送の処分を受けたり、さらに射殺された兵士に関する書類を何回か見たことがあるという。「ヴェトコンは強姦の罪による処刑を公表していた。強姦は彼らにとって重罪であり、強姦と略奪が起きるのは重大な政治的失策と見なされた。現実にレイプはほとんど行われず、敵側にレイプされた女性はヒロイン扱いされた。敵の残虐行為のあかしというわけだ※」


※注:革命的な農民ゲリラ軍は強姦はしないという概念は、1928年、かの偉大な中国の朱徳将軍が「人民から針1本、糸1本でも取ってはならない」というモットーを明らかにしたことに由来する。朱徳の定めた規律は敵である中国国民党の慣習とは著しく異なっていた。いわく、「宿泊した家を発つ前には、敷いて寝た藁はすべて返すこと。人民には礼儀正しく話しかけ、いつでも可能なかぎり手助けすること。借りたものはすべて返すこと。壊したものは皆弁償すること。取り引きは正直に。清潔であれ──用を足すときは家から十分離れたところに掘り、土でよく埋めてから立ち去ること。女性にけっしてみだらな行いをしないこと。捕虜を虐待しないこと」。


 ヴェトコンが強姦を犯さなかった理由は、こうした厳罰制度以外にもあるとアーネットは分析する。ヴェトコンの女性は軍事行動でも重要な役割を演じており、男性に混じって少しもひけをとらずに戦う女性の存在が、他の女性に対する性的凌辱を防止するブレーキになっていたというのだ。またゲリラ勢力にとって、男女を問わず人民から好意を抱かれるかどうかは、自らの存在を左右するきわめて重要な要素だともいう。さらにアーネットは、ヴェトコンが革命遂行という使命に「身を捧げていた」ことも見逃せないという。彼はこう分析する。「ヴェトナム駐留中に1度も慰安所を利用しなかった米軍将校を知っているが、彼らは勝利のために全身全霊を捧げており、セックスの必要などなかったのだ。下士官兵についてはそのかぎりでないのはいうまでもない。ヴェトコンが性欲を抑えることができたのも、同様の理由によると考えられる」
 アーネット記者との数回の会見で、どうしても意見が一致しなかった点がある。それは戦争におけるレイプ、あるいは軍慰安所の利用という問題が、男性の「性欲」と関係しているのかという点である。この点に関する彼の分析に私は同意しかねるのだが、彼の見解は努めて公正に引用していくつもりだ。ヴェトナムに派遣された外国人ジャーナリスト(99.9%までが男性)たちは、ヴェトコンが犯したレイプ事件の数の少なさ──彼らがレイプについて考えをめぐらせば、の話だが──に一様に驚きを表明している。UPI通信カンボジア支局長のケイト・ウェブの経験もこのことを裏書きしている。アーネットと同じニュージーランド出身のウェブは、ヴェトコンに捕らえられて23日間拘禁された。釈放後何ヶ月もたってから、彼女はこう語っている。「誰もが私がレイプされたかどうかを知りたがる。されなかったと答えると、ほとんどの人は失望したような顔をする。皆、ヴェトナム軍の軍律がいかに厳しいかを知らないのだ」
 1967年から69年までヴェトナムの民間医療リハビリセンターに勤務し、テト攻勢の際に別のアメリカ人女性とともにユエでヴェトコンに捕らえられたアメリカ人医師マージョリー・ネルソン博士も釈放後、自分の純潔が守られたことを声を大にして言わなければならなかった。ネルソンは言う。「これはヴェトナム戦争に従軍したアメリカ兵ばかりでなく、多くの人びとの頭に浮かぶ疑問だと思う。たしかにレイプが起こったとしても不思議はなかったし、何度か、そうならなかったのは運が良かっただけという状況にも遭遇した。とはいえ私たちがキャンプにいる間、幹部の人たちがそのことについて懸念していたのは明らかで、私たちのプライバシーが侵されないよう入念な注意を払ってくれた」










▼侵略強かん軍においては絶対起こらないことが正義の戦いでは起きる






 利他的行為と聞いてすぐ三浦綾子『塩狩峠』を思い出すひとは多分いい人だ。だって多少とも利他的行為について考えた人であることは確かだからだ。私の場合、例えばソウル・フラワー・ユニオン 『平和に生きる権利』を聞いて涙が止まらないのは、それがすぐさま「しかし、キエンの戦争の記憶の中で、最も悲惨なのはホアのことだ。」の記述で始まる道案内ホアが仲間の負傷兵を助けるために、【強かんされるために、(そしてしかる後に射殺される・・・)】米兵たちをおびき寄せる話をすぐさま連想してしまうからだ。






 「正義の戦争などない」という馬鹿げた言説を得意げに言う人間もいる。
 しかし・・・皇軍が中国を侵略しなければ戦争は起こらない。米兵がベトナム国土に侵攻せねば戦争は起こらない。米軍が大嘘をこいてイラクを侵略しなければ戦争は起こらない。侵略された側が抵抗の戦いを始めれば、それは正義の戦争なのである。他国を戦場にしないため、自国を戦場ににしないために、私たちには多分やるべき事が多すぎるほどあるのだが・・・。


  ・・・
 
 アメリカはベトナムに負けたのか?ベトナムの小説家バオ・ニンは「惨勝」と表現した。ベトナムが負ければどうなっていたのだろう?例えば現在のハイチのようになったかもしれない。アリステッド大統領は米兵に拉致されて出国したという。まったくハイチの中南米の最貧国から脱却は難しい。テロ国家アメリカの近くに位置したばかりに・・・。


 チョムスキーもウィリアム・ブルムも言うのだが、アメリカは目的を達成したのだから勝った。目的?ベトナムは戦争の傷跡の修復に50年以上を要し、第三世界の見本となるべき革命的実験は放棄させられた。チリの選挙で選ばれた社会主義政権、あんなことが起こるなんて・・・、あれこそはテロ国家アメリカにとって絶対あってはならないこと。それならばやることはきまっている。つぶせ!


 ・・・


 ベトナム「惨勝」のベトナム戦争で想起してほしい。アメリカ人の女性がベトナム兵に強かん・輪かんされることは絶対起こり得ない。戦場になるということは、すべてのものが破壊されるということ。戦場になれば、女は幼女から老女まで強かんされるだろう。


 よって侵略強盗強かん軍においては絶対起こらないことが正義の戦いでは起きる。・・・


 以下『戦争の悲しみ』バオ・ニン著/井川一久訳(めくるまーる)より―─


([*]は筆者:注釈)


[* 傷病兵15人と搬送班員とキエンの部下達は、ホア(女性ガイド)道案内で米軍の攻撃から逃走していた]




 キエンは
「俺たち、迷ってるんじゃないか」と女性ガイドのホアに言った。
 ホアは「大丈夫です」と自信たっぷりに答えた。


 (中略)


「君はこんな泥臭い湖へ俺たちを連れてきたんぜ。立派なガイドさんだね」
「あたし、間違ったみたい」と、ホアは自分を怨むような口調でつぶやいた。
「間違いじゃすまんよ。こりゃ相当な罪だぜ。君なんかアメリカ兵に撃たれちまえ。何発ぶち込まれたって文句は言えないかもな」
 ホアの両目は涙に濡れ、唇は震えていた。


[*キエン(手榴弾のみ)とホア(拳銃のみ)は、傷病兵と搬送班員を残し、逃走の道を捜している最中に米海兵隊パトロール隊4人と軍用犬シェパードと遭遇。
 彼ら(傷病兵など)はまもなくパトロール隊に見つかるだろう。
 ホアはキエンと離れて・・・]






 ホアは跳びかかろうとする犬の体に弾丸を2発続けざまに送り込んだ。弾丸はそれで尽きた。犬が倒れると、彼女はいったん右腕を下ろし、拳銃を米兵たちの方へ下手投げで放り出した。
 
 米兵たちはなぜかホアを撃たなかった。相手は拳銃一挺しか持たぬ若い女性で、しかも彼女は犬だけ狙っていた。だから撃つ必要がなかった。いや、この美しい獲物を撃たずに生きたまま捕まえたかった、というのがおそらく事態の真相だろう。
 
一人のパトロール隊員がホアに襲いかかった。ホアは身をひるがえし、道から全速力で遠ざかろうとした。米兵たちはいっせいに追いかけた。


(中略)


 ホア。哀れな娘。だが天女のように限りなく美しい魂の持ち主。君は多くの他者のために、進んでおのれを犠牲に捧げた。あの捜索犬を殺し、さらに自分の体に米兵たちを誘いよせて、味方の傷病兵15人と搬送班員たちを、また俺と俺の部下たちを救おうとしたのだ。俺は君のその気高いこころざしを無にすることができない。米兵らと闘って死ぬことは許されない。キエンは手榴弾の安全レバーを静かに元に戻した。彼は結局、苦悩に凍りついた目で、なすすべもなく残酷場面を見つづけたのだった。


 米兵たちは、後方に立っていた数人を除いて、次々にホアを犯したようだった。彼らはこの日のパトロール活動を集団レイプで終えようとしていた。




★【他人を生かすために自分が死ぬ話はそこらじゅうに転がっていた。】


(注:【 】部、バオ・ニン『愛は戦いの彼方へ(原題:戦争の悲しみ)』大川均訳/遊タイム出版より引用、原本に対して日本語翻訳本2冊がある。)
【しかし、キエンの戦争の記憶の中で、最も悲惨なのはホアのことだ。】
・・・
【しかし、あなたや私が生き残り、その代わりに優秀で素晴らしい、この世に生きる資格を人より多く持った人々が死んだという事、血みどろの戦争の機械に噛み砕かれて微塵になり、暗黒の暴力に辱めを受けて殺され、葬り去られ、跡形も無く消えたというのは、今の平穏無事な日常から見ると、とんでもない皮肉だ。正義は勝った。仁愛の心は勝った。しかし、同時に、大量虐殺、非人道的暴力、つまり悪も勝ったのだ。・・・】


以上引用終わり
 
******
 
 悪は勝った。テロ国家アメリカは勝ったのだ。だから反省もせず、借金を返させ、戦後補償もせず、復興支援の約束も果たさず、枯れ葉剤被害者を無視して、・・・そしてアフガニスタンをイラクを侵略する。


・・・


 本当の仲間のために命を投げ出す「この世に生きる資格を人より多く持った人々が死んだという事」が正義の戦争の実相なのだ。毎日がテロ国家アメリカがまともな戦争映画を作り得ないのは当たり前のことなのだ。どう仲間のために戦おうとも、殺し屋として他国へ来ているという愚劣な本質を隠すことはできないからだ。


 多くの人間は利己的の程度はともかく利己的に生きている。それは本能として組み込まれているし、そうでないと生命を保持できないのかもしれない。だから問題はその程度なのかもしれない。地位・金・権力のためなら他人を蹴落としてもいい(あるいは最終的には死んでも構わない)と思う人は確実存在する。たぶんその利己的欲望を肥大化した最悪の集団がテロ国家アメリカの支配層なのだろう。


 ベトナム戦争とは、最悪の利己的集団と最良の利他的集団の戦いでもあったのだろう。そして結局、無傷で生き残ったのが最悪の利己的集団なのだから、勝者はもはや明白だろう。






*****************






追記1:戦争にはレイプはつきものだ①の追加とソウル・フラワー・ユニオン 『平和に生きる権利』






▼鶴彬の川柳
初恋を残して村を売り出され
ざん濠で読む妹を売る手紙
修身にない孝行で淫売婦
村中の娘売られて女学校へゆける地主のお嬢さん
休めない月経痛で不妊症






▼南京事件:兵士たちの遺言・陣中日記検証


http://www.dailymotion.com/video/x395ckc






▼石川逸子『日本軍「慰安婦」にされた少女たち』岩波ジュニア新書


頁107――


 1868年4月、「錦の御旗」をかかげて江戸入りした新政府軍は、江戸の婦女子に乱暴をきわめたという。会津を攻めたさいの乱暴もはなはだしく、「城下にありし百姓、町人、何の科なきにもかかわらず家を焼かれ、財を奪われ、強殺・強姦の憂目をみたること、痛恨の極み」(石光真人編『ある明治人の記録』)というありさまであった。
 また、会津を攻めるさいの軍用金をひねりだすために、新政府は、5万両を献納させるという約束のもとに、築地に外国人相手の遊郭の新設を許可している。
 そのような政府が1872年、「娼妓解放令」をとつぜん発布する。しかしこれは国際世論の非難をかわすための方便、いつわりの処置でしかなかった。遊郭は「貸座敷」に、身代金は「前借金」というあらたな言葉にすりかえただけで、公娼制度は生きのび、かえってさかんとなる。






▼ソウル・フラワー・ユニオン 『平和に生きる権利』
http://www.youtube.com/watch?v=jTPD6cPym_M






*******************






追記2:被害者が被害者のままでいる難しさについて――対照例二つ。






▼韓洪九(ハンホング)『韓国現代史Ⅱ』(高崎宗司監訳、平凡社)より―─


私たちが平和歴史記念館を建てなければならないと考えるようになったのは、日
本軍により性奴隷として連れて行かれた文明今(ムンミョングム)、金玉珠(キ
ムオクジュ)という二人のハルモニが、生前に私たちに数千ウォン[数百万円]
という大金を残して亡くなられたからです。二人のハルモニは、ベトナムで韓国
軍による不幸な出来事に見舞われた人々の話を聞かれてから、政府から受け取っ
た生活補助金と民間団体から受け取った大切なお金を、「戦争によって苦痛を受
けた他の人々に使ってもらえれば」と私たちに送ってくださいました。誰よりも
痛い戦争の傷で苦しんでおられた二人のハルモニが、同じように戦争による傷で
苦しんでいるベトナムにいる名も知らない人のために、全財産を残してくださっ
たのです。痛みの連帯、痛みに苦しむ者たちが、お互いに痛みを分かち合い、力
を合わせれば、その痛みは軽くなり、再び他の人々が痛めつけられることを予防
することもできるのです。 (引用終わり)






▼『イスラエルとは何か』(ヤコブ・M・ラブキン 菅野賢治・訳 平凡社新書 
2012年) 


頁201――


ワルシャワ・ゲットー蜂起の際に闘士であった父親を殺害されたあるユダヤ人の
娘は、のちに以下のような胸の痛む問いを投げかけています。


たとえパスティナ人たちが、〔かつてナチス時代にユダヤ人がそうされたよう
に〕 一 列に並ばされて一斉に射殺されているわけではなく、一日に一人ずつ
イスラエル軍に殺されているだけであるからといって、私たちユダヤ人は、道義
性や正義について思い煩う必要がないということになるでしょうか。ナチズムな
るものがユダヤ人にとって悪を裁定する際の唯一の基準になったからといって、
いかなる行為も、それが完全なまでにナチズムの複製でない限りにおいて道義的
に許容される、という意味になるのでしょうか。ホロコーストは、ユダヤ人の道
徳的感性にその程度のものしかもたらさなかったのでしょうか(イレナ・クレプ
フィシュ『不眠症患者の夢』、1990年)。 (引用終わり)


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山口敬之・高畑裕太は私の辞書にはレイプ犯として登録されている。

2020-12-10 03:46:46 | 性暴力
山口敬之・高畑裕太は私の辞書にはレイプ犯として登録されている。


レイプ犯である教師の事件の裁判を2度ほど傍聴したが、加害者側の関係者(妻・母など)も傍聴席にいる。証人で発言することも当然ある。ただ傍聴席から彼女ら彼らの表情を読み取れない。よって髙畑淳子が記者にどういう表情で接したかは興味はあるが、この記事では「……まず、あの事件に対して、あなたはどう考えていらっしゃいますか? 本当に息子が、あんなことをしたと思われているのですか?」と答えているから、レイプ犯の息子の無実を信じているのだろう。もちろん懲役刑を受けているレイプ犯の無実を信じている家族がいてもいいのだが、高畑裕太の場合は刑事罰さえ免れているから、大分事情が違ってくる。だって社会はこうなっている──
 大阪高等検察庁・田中嘉寿子検察官によると、「懲役10年程度の重罰を科し得る性犯罪の未検挙者は、強盗犯の未検挙者の約50倍の約7万人、性犯罪には常習犯が多いことを考慮しても、膨大な性犯罪者が野放しにされている」。私から見れば、山口敬之・高畑裕太も野放しにされているレイプ犯の一人でしかない。この種のレイプ犯は辺境に住む私の知人にいるから、この社会にはどこでもいるわけだ。


 どうしてそうなるかというと、この社会が男の特権社会だからだ。日本低国は男女同権でも世界で後ろの方を走っているから、なかなか法律からして事態が改善されない。髙畑淳子はこんな社会のおかげであんな発言ができてしまうわけなのだ。もちろん母は息子が刑務所にいても苦しむが、刑務所にはいないから無実だと信じながら苦しんでいるのだろう。ただし刑務所にいないレイプ犯の息子が苦しんでいるのかどうかは私には分からない。しかし、もちろん言うまでもなく、今後レイプ犯が映像で被害者の目に触れるような事態が起これば、被害者が想像を絶する苦しみに襲われることだけは確実だ。




みじめな女性の裁判だというのに・・・、司法関係者(弁護士、裁判官、検察官、警察官、刑事法研究者を含む)の圧倒的多数が男性 - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



なぜ(日本では)レイプ犯は野放しにされるのか? - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



性暴力の実相・第2部 田中嘉寿子・大阪高検検事に聞く - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



性暴力 男性被害者の場合、被害申告率、PTSD、立証・・・ - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



田中嘉寿子検事 「性犯罪被害者の心理」講演全文  - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



大阪高等検察庁 田中嘉寿子検事:性被害者に起こっていること  凍り付き症候群 - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



なぜ(日本では)レイプ犯は野放しにされるのか? - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)



今日,帰りがけにレイプされ怪我もしました,すぐに110番通報しますか? - 日本版「黒は美しい(ブラック・イズ・ビューティフル)」運動、2013年末始動 (fc2.com)







■高畑裕太「レイプ事件」被害者女性が明かしたあの夜の全真相
「合意なんてまったくなかった」


週刊現代


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/50023




示談の後、高畑側が一方的に「あれは和姦だった」と公表したことで、私は二度レイプされた気持ちです。合意なんてまったくなかった。いまでも、あの恐ろしい目を思い出すと身体が震えます。
取材・文/齋藤剛(週刊現代記者)


「私は被害者なのに……」。あまりに事実と違う報道を目の当たりにして彼女は愕然とした。衝撃の逮捕から50日あまり。被害者の女性が沈黙を破り、「あの夜」のすべてを語る。
悔しくて涙が止まらなかった
「相手方の弁護士のFAXのコメント内容を知ったとき、全身から血の気が引くのを感じました。
まるで私がウソをついたかのようなことが書かれていました。私が悪かったというのでしょうか。なぜ加害者のように扱われるのでしょうか……。二度目のレイプをされたような気持ちです。悔しくて悔しくて涙が止まりませんでした。
示談後、加害者側の弁護士は一方的に『強姦ではなかった。合意があった』というような主張をしていますが、事実ではありません。真実を知ってほしいと思いました」


震える声でこう話す女性こそ、8月23日未明、俳優の高畑裕太(23歳)にホテルの部屋に連れ込まれ、レイプされた被害者Aさんだ。彼女はあれからどんな思いで日々を過ごしてきたのか。
彼女の代理人を務める弁護士の同席のもと、後にも先にも1回きりという条件で、3時間にわたって本誌のインタビューに応じてくれた。
群馬・前橋市内のビジネスホテルのフロント係として勤務していたAさんは、映画の撮影のためホテルに宿泊していた高畑に性的暴行を受けた。Aさんは右手首と指にけがを負い、知人男性の協力を得て群馬県警前橋署に被害届を提出。高畑は容疑を認めて、同日午後に逮捕された。
高畑にかけられた容疑は強姦致傷。執行猶予はつかず、相当長期(24ヵ月以上)の実刑判決が下ると予想された。ところが、事件は予期せぬ結末を迎える。
事件から17日後の9月9日、示談成立を受けて高畑は不起訴になり、同日に釈放されて、埼玉県内の病院に入院した。
状況が一変したのは、この同日だった。高畑の代理人を務めた「法律事務所ヒロナカ」(弘中惇一郎代表)が声明文を発表し、こう主張したのだ。
〈高畑裕太さんのほうでは合意があるものと思っていた可能性が高く〉
〈呼びつけていきなり引きずり込んだ、などという事実はなかった〉
〈違法性の顕著な悪質な事件ではなかったし、仮に、起訴されて裁判になっていれば、無罪主張をしたと思われた事件〉
これを受け、ネット上では「最初から金目当てだったのか」などと被害者であるAさんを中傷する意見が飛び交った。


さらに追い打ちをかけたのは、その後の報道だ。不起訴となり釈放されるや否や、無責任な憶測や、高畑サイドの言い分に乗るような推測が次々に報じられた。
Aさんがとりわけショックを受けたのが、9月21日発売の『週刊文春』の特集記事だ。関係者の証言や捜査資料を元にしたとして、大略、以下のような内容であった。
〈被害女性は高畑の誘いに乗って部屋に行き、行為の求めに応じた〉
暗に強姦の事実を否定する内容だったのだ。
一方的な報道に…
示談後、Aさんの代理人を務めることになった入江源太弁護士が言う。
「今回私は、検察、警察に内容証明を送付したうえで、責任者と面談しました。その結果、週刊文春の記事の内容に強い疑問を持ちました。
同誌の記事は、高畑氏の供述に一方的に依存してつくられた感が否めません。高畑氏の話がそのまま断定的に掲載されており、被害者の話とはまるで食い違っています。
また法律家として、高畑氏の供述内容を誰がリークしたのかという点も問題視しています。面談した検察と警察の責任者は『一切情報の流出はない』と全面否定をしていました。
では、誰が情報を流出させたのでしょうか。流出元が明らかでない情報によって被害者が一方的に傷ついていますが、このようなことがあって良いのでしょうか」
あの夜、いったい何があったのか。Aさん本人が振り返る。


歯ブラシを届けた経緯
部屋に歯ブラシを届けた経緯
加害者(編集部註・Aさんは高畑のことをこう呼ぶ)と最初に会話したのは事件が起きる数時間前のことです。
「近くに飲食店はないですか?」
と声をかけてきた加害者に飲食店が掲載された冊子を渡しました。
当日の私の服装について、週刊文春には黒いTシャツに、ジーパン、エプロン姿でフロントに立っていたと書かれていましたが、まったく事実とは異なります。
私は他の従業員同様、制服を着用していました。上は白いブラウスに制服のベスト、夜だったのでジャケットをはおらず、その上に黒のVネックセーターを着ていました。下は、黒のスラックス。勤務中にジーパンをはくことはありえませんし、Tシャツも同様です。エプロンをつけてフロントに立つこともありません。


ホテルを出た加害者が一人で戻ってきたのは、深夜の1時40分頃だと思います。そのとき、フロントにいたのは私だけです。深夜の時間帯は交代制で、一人がフロントに立ち、もう一人が仮眠をとる形でした。
加害者が他愛もないことを話しかけてきましたが、明日も朝早くから撮影ということだったので、
「早く寝たほうがいいんじゃないですか」
と応じた記憶があります。ただ、なかなかフロントから離れようとせず、
「この後、休憩は何時なの?」
と絡んできました。


「かわいいね」
などと結局、5分くらい一方的に話しかけられ、その際、
「あとで部屋にマッサージに来てもいいよ」
と言われたことは覚えています。これについてははっきりと、
「行きません」
と答えました。このことは警察にも話しています。この時点では、加害者に対しては芸能人というより、よくいる酔っぱらったお客様という程度の印象でした。


しばらくすると、エレベーターで4階の部屋に戻ったと思っていた加害者が1階から階段を上ってきて、また2階にあるフロントに現れたので、
「あれ、まだ休んでないんですか」
と声をかけました。
「歯ブラシを取りに来た。悪いけど、5分後くらいに部屋に持ってきて」
そう加害者が言うので、私は仕方なく、
「では、あとでお持ちします」
と答えました。それを聞いた加害者は、やっとエレベーターで部屋に上がっていきました。これが1時55分頃のやりとりです。
なぜ歯ブラシを直接部屋に持っていくと伝えたのか、不思議に思われるかもしれません。もちろん私が職場を放棄して、加害者の部屋に向かったわけではありません。
午前2時からちょうど休憩時間だったので、歯ブラシを持っていって、そのまま休憩に入ろうと考えていたんです。加害者は有名人ですから、世間体もありますし、まさか危ない目に遭うなどとは、まったく考えませんでした。たんに酔っぱらったお客様にこれ以上絡まれるのがイヤだったんです。
ただ、そのことで加害者に「自分から部屋に来てくれた」と主張する口実を与えてしまったことが、悔やまれてなりません。
このとき、私に代わってフロントに立つ別のスタッフがまだ来ていなかったので、〈いまフロントを空けています〉というメモを残し、深夜2時に歯ブラシを持って、一人で加害者が泊まっている405号室に向かいました。


避妊具もつけずに……
部屋をノックしたところ、ドアが開いて、加害者が現れました。
その次の瞬間です。加害者の手が私の右手に伸びてきて凄い力で掴まれたかと思うと、部屋の中に引きずり込まれ、そのままドアのすぐ左側にあったベッドに突き倒されました。
ベッドに押し倒されると、すぐ耳元で、
「脱げ」


と低く凄みのある声で言われました。フロントでは、単なる酔客の悪ふざけという雰囲気でしたが、目つきといい声色といい、まるで別人のようでした。とにかく、恐ろしかった。
私を押し倒した加害者は無理やりキスしてきました。お酒臭かったことを覚えています。あの日、加害者は白いTシャツにハーフパンツという格好でしたが、気づくと全裸になっていました。


加害者はしつこく私の服を脱がせようとしましたが、必死に抵抗しました。それでもブラウスや下着の下に手を入れて、身体を触ってきました。
なんとか上半身は脱がされませんでしたが、ふとした瞬間にズボンを下ろされてしまいました。とっさに私は、
「生理中だから」
とウソを口にしました。そう言えば、あきらめてくれると思ったからです。しかし、加害者は、避妊具もつけずに性行為に及んで……。私は、
「やめてください」
と訴え続けましたが、
「いいから黙れ」
と脅すように言われました。
いま思えば、大声を出せばよかったと思います。検事さんにも「なぜ大声を出さなかったのか」「なぜ壁を叩かなかったのか」などと訊かれました。でも、私にはそれができなかった。
まずホテル従業員として自分のことで騒ぎが起きて、他のお客様やホテルに迷惑をかけてしまうことを恐れたということがあります。


そしてなにより加害者の目つきが怖かったのです。
釈放された加害者は、警察署の前で迎えの車に乗り込む際、睨むような異様な目つきをしていたと思います。あの夜の目つきは、それ以上に怖いものでした。いまでも突然、あの目がフラッシュバックして、私を苦しめます。
しかも、加害者は背が高く(181cm)、力も凄く強かった。
頭も押さえつけられて、髪はグチャグチャになっていました。もし声をあげたら、もっとひどいことをされるし、大ケガをしてしまうと思ってしまいました。
大きな声を出すことによって何をされるかわからないという恐怖心は性犯罪の被害者にしかわからないと思います。自分の身を守るためには嫌でも相手の言いなりになるしかなかったのです。


どの段階で右手にケガをしたのか、正直わかりません。ただ、フロントに戻ったとき、親指の付け根に強い痛みがあることに気づきました。いまでも腱鞘炎のような痛みが残っています。
週刊文春に書かれた加害者の言い分には、「性行為の最中に右手を動かしていた」とありますが、これも事実ではありません。加害者は私の右手を無理やり局部に持っていったのです。このとき、正確な言葉は覚えていませんが、
「動かせ」
というようなことを言われました。
「咥えろ」
と言われたこともはっきりと覚えています。頭をつかまれて、局部のほうに持っていかれ、
「いいから舐めろ」
とも言われました。


あまりに食い違う証言
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「出していいだろ」
性行為が何分続いたのか覚えていません。ただ、無理やりだったので痛かったことだけは覚えています。加害者は、
「(精液を)出していいだろ」
と言ってきましたが、
「やめてください」
私は必死に訴えました。しかし、加害者はこう言ったんです。
「生理だったら大丈夫だろう」
そのまま、中に出されてしまいました。そのときの怒りを通り越した絶望もまた、性犯罪の被害者にしかわからないことだと思います。
性行為が終わると、加害者は「すっきりした」という様子で私から離れました。ようやく解放された私は逃げるように部屋を出て2階にあるトイレに駆け込みました。


トイレの中では震えが止まりませんでした。もう、仕事ができる状態ではなかったので、トイレから出ると、もう一人のスタッフに、
「悪いけど、帰ってもいい?」
と伝え、私はホテルを出たんです。
* * *
以上がAさんの証言である。Aさんには合意の感情はまったくなく、高畑の行為は完全にレイプ、罪名にするなら文字通り「強姦致傷」である。
入江弁護士が指摘する通り、高畑の供述をベースにした週刊文春などの報道は、Aさんの証言とあまりに食い違っている。
なかでも決定的なのは、フロントを離れたAさんが、高畑の部屋に向かう経緯だろう。
高畑の言い分に依拠した週刊文春の記事(9月29日号)ではこうなっている(以下、引用は週刊文春の同記事)。
〈意地になっていた高畑は叫んだ。
「歯ブラシが欲しいんじゃなくて、部屋に来て欲しいんです!」
粘りに根負けしたのか、吉田さん(編集部註・Aさんの仮名)はフロントを出た〉
〈そして二人を乗せたエレベーターのドアが閉まるや否や、高畑は吉田さんに唇を押し付けた。
「一瞬、僕の両肩を抑えたり、口をつぐむなどはありましたが、すぐに舌が絡まり合う感触を感じました。激しい抵抗感を感じなかったので、僕はいけるみたいなことを思いました」〉
これを読めば、まるでAさんが高畑を受け入れたかのように思えてしまう。エレベーター内の出来事は、強姦か和姦かを分ける重要なポイントだ。
Aさんはあきれながらもこう反論する。
「キスをしたなんて絶対にない。そもそも私はエレベーターに一緒に乗っていません。
ホテルのエレベーターにはカメラがついていないから、そんな適当な話をするのでしょうか。ビジネスホテルの従業員がお客様と二人でエレベーターに乗ることはありません。もし乗るとするならば、お客様が部屋の中に鍵を置き忘れて外出してしまったときくらいです」
食い違いはこれだけではない。高畑側の主張によれば、エレベーターを出ると、二人はスタッフの目を気にして時間差で部屋に入ったという。
〈彼女は閉まりそうなドアを手で開けて、部屋に入ってきました〉
さらに部屋での性行為について、高畑はこう供述している。
〈少なくとも女性が泣き叫び助けを呼ぶような事はありませんでした。押さえつけたり、脅迫もしていない。ベッドに倒れ込んだとき、頬に手を当てられ『生理中だからダメ』と言われたが、拒否している感じではないと思いました。彼女は決して受身ばかりだったわけでもないし、逃げようと思えば逃げられたはず〉
〈彼女は右手の手首や親指を打撲したと主張していますが、行為の最中に、彼女が右手を動かしていたことをはっきりと覚えていますし、少し疑問です〉
Aさんが性行為に対して積極的だったと言わんばかりである。
言うまでもなく、これら高畑の主張はすべてAさんの告白とは正反対だ。


さらなる苦しみ
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取り返しのつかない傷
どちらが真実か、それを知るための、重大な物的証拠が一つある。それは、警察に提出した後、最近になって戻ってきた事件当日にAさんが着ていた衣服の一部だ(雑誌上では写真を公開)。
週刊文春の記事にあるTシャツとジーパンにエプロンという衣装でないことは明らかである。服装すら間違えている、高畑の主張に拠った一連の報道は疑わしいと言わざるをえない。
高畑の行為が、Aさんに取り返しのつかない深い傷を負わせたことは言うまでもない。
Aさんが語る。
「加害者がお酒を飲んで性的欲求が高まって、たまたまフロントにいた私が手っ取り早くターゲットにされてしまったんでしょうか。
加害者からしてみたら、客であり、タレントである立場で、私のこともたかがホテルの従業員として見下していたんでしょうね。ただ単純に性的欲求の道具に使われたとしか考えられません。本当に、思い出すと怖くていまも身体が震えます」


さらに、苦しみはこれだけで終わらなかった。Aさんは性犯罪の被害者にもかかわらず、その後、日本中から「美人局」というあらぬ疑惑を抱かれることになる。
なぜAさんは示談したのか。そして警察に通報したとされる知人男性は、どのような役割を果たしたのか—。
(告白の続きはこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/50077)





■週刊女性PRIME
高畑裕太が復帰! 母・淳子が語った事件当時の不満「家族の4年間の苦しみを考えて」
週刊女性PRIME [シュージョプライム] 2020/12/09 21:00
https://www.msn.com/ja-jp/entertainment/celebrity/%E9%AB%98%E7%95%91%E8%A3%95%E5%A4%AA%E3%81%8C%E5%BE%A9%E5%B8%B0-%E6%AF%8D-%E6%B7%B3%E5%AD%90%E3%81%8C%E8%AA%9E%E3%81%A3%E3%81%9F%E4%BA%8B%E4%BB%B6%E5%BD%93%E6%99%82%E3%81%AE%E4%B8%8D%E6%BA%80-%E5%AE%B6%E6%97%8F%E3%81%AE4%E5%B9%B4%E9%96%93%E3%81%AE%E8%8B%A6%E3%81%97%E3%81%BF%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%81%A6/ar-BB1bM0cL?ocid=msedgntp
高畑淳子を直撃('20年)© 週刊女性PRIME 高畑淳子を直撃('20年)


「11月28日、高畑裕太さんがツイッターで撮影現場への復帰を宣言しました。今年8月には自身の公式サイトを立ち上げていますし、芸能活動を本格的に再開するようです」(スポーツ紙記者)


 彼は女優の高畑淳子の長男で“2世タレント”として活躍していた。


「'15年の朝ドラ『まれ』で主人公の幼なじみ役でブレイクし、持ち前の体格のよさと天然キャラで人気を得ました。彼は淳子さんと事実婚状態だった俳優の大谷亮介さんとの間の子。姉の高畑こと美さんも女優ですから、役者一家ですね」(芸能プロ関係者)


 デビュー早々、順風満帆だった俳優人生が一転したのは、'16年8月のことだった。


「強姦致傷容疑で逮捕されました。映画『青の帰り道』の撮影で宿泊していたホテルで、深夜に女性従業員へ歯ブラシを部屋に届けるよう要望。客室へ届けに来たところで無理やり部屋に連れ込み、性的暴行を加えたと警察が発表しました」(前出・スポーツ紙記者)


 後日、被害者との間で示談が成立。同日には不起訴処分となったが、“歯ブラシ騒動”の影響は大きかった。


「事件の4日後には日本テレビ系の『24時間テレビ』で生放送の番組パーソナリティーを務める予定でしたが、急きょ降板になるなど多くの番組や映画が対応に追われました」(テレビ局関係者)


かつて母・敦子は芸能界復帰を否定していたが
 芸能活動を自粛した彼は、後に遺品整理のアルバイトをしていることが報じられた。


 '18年6月に、週刊女性が裕太を直撃取材した際は、劇団の裏方として働いていることを認めつつも、芸能界復帰については言葉を濁していた。とはいえ、やはり夢は諦められなかったようだ。


「'19年8月に、芸能活動を再開しました。脇役でしたが、下北沢の小劇場で舞台に出演したんです」(舞台関係者)


 今回の復帰宣言も、家族のバックアップで実現できた。


「姉のこと美さんも彼にふさわしい仕事のオーディションを紹介していたようです。SNSに投稿していた撮影というのもその中のひとつでしょう」(前出・芸能プロ関係者)


 芸能関係者との縁も、まだ切れてはいない。


「裕太さんは事件後にダンサーの菅原小春さんと交際するなど芸能人たちとの交流は続いています。彼のホームページに掲載されている写真も、菅原さんと親しいカメラマンが撮影したものです」(同・芸能プロ関係者)


 夢に向かって1歩ずつ前進しているようにも思えるが、かつて淳子は裕太の芸能界復帰を否定していた。


「事件後の記者会見で、“いつか芸能界に戻してあげたいという気持ちはあるか”という記者からの質問に対して“してはいけないことだと思っています”と答えていました。とはいえ、女手ひとつで育てた裕太さんを可愛がり、芸能界デビューのときは多くの関係者に働きかけていました。本心では俳優に戻ってほしいと思っているはずです」(前出・スポーツ紙記者)


家族4年間の苦しみを考えてほしいです
“現場復帰宣言”をした息子のことを、今はどう考えているのか。


 12月上旬、自宅から自転車で出かける淳子を直撃した。


─息子さんの現場復帰おめでとうございます。今回の宣言をどう思っていますか?


「……まず、あの事件に対して、あなたはどう考えていらっしゃいますか? 本当に息子が、あんなことをしたと思われているのですか?」


 質問に応じず、記者に向けて見解を問い返す彼女は、事件に関する報道に不満を持っている様子だった。


─確かに事件の情報は、各社で交錯していましたが……。


「だったら、管轄の警察にお聞きになればいいじゃないですか? あのとき、私たちはメディアに追いかけられて、事実を正すよりも平穏が欲しかったんです」


 事件当時、謝罪したのはバッシングを鎮めるためだったと語る彼女は、被害者側にも不信感を抱いている。


「相手は被害届を出してすぐに“いくら出すんだ”と示談金を要求してくるなど、非常識なところがありました。それで警察は彼らの言い分がおかしいと判断して、不起訴処分にしたんです」


 事件を仕組まれたものと訴えながら、息子の現状を葛藤と苦悩を交えて語る。


「私も親バカかもしれませんが……。逃げてばかりじゃいけないなと思っています。私たち家族の4年間の苦しみを考えてほしいです」


 そう言い残すと、自転車に乗って去っていった。


 裕太にも公式サイトを通して復帰宣言についての質問を送ったところ、


「これまでもいっさい取材はお受けしておらず、現況その予定は立っておりません。恐縮ですが、ご期待に応えるのは難しいかと思います」


 と、返信が返ってきた。


「将来的には映画に出たいという思いがあるようで、今は舞台や動画配信などで活動の場を広げていきたいと周囲に語っているそうです」(前出・芸能プロ関係者)


 彼の姿が画面で見られる日も、そう遠くないのかもしれない。


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