新型コロナ大騒動下では差別語「ブラック」問題はあまり扱っていないが、寺島隆吉の著書で差別語「ブラック」を発見した時は、かなりショックだった。以下に引用する──。以下は、一部反「ワクチン」派のいう新型コロナ大騒動の究極目的は「世界の共産化」という主張への反論の記事の一部です。
■寺島隆吉『コロナ騒ぎ謎解き物語 コロナウイルスよりもコロナ政策で殺される』あすなろ社、2021年8月15日、第1刷発行
頁153──
ですから、今の日本あるいは今の世界は、社会主義・共産主義思想とは真逆の方向に突き進んでいるように、私には思われます。つまり次のような流れがいっそう加速しているのです。
※ 生産手段の資本家による独占所有がいっそう強化され、労働者への搾取と奴隷労働はますます深刻化している。
※ 富の分配は「労働に応じて」おこなわれるごころか、ブラック企業がはびこり残業や首切りはやりたいほうだい。まして富の分配が国民の「必要に応じて」おこなわれるというのは、まったくの「絵に描いた餅」。
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寺島隆吉といえば英語帝国主義にも反対する知識人でもあるし、ハワード・ジンの翻訳もしている。その彼が差別語「ブラック」を使っているのだ。だって「ブラック・イズ・ビューティフル(黒は美しい)」運動を熟知しているはずなのだ。マルコムXについても詳しいと思うのだが・・・。
というわけで、差別語「ブラック」問題をやっていると、このような信じられない事件に遭遇することもある。差別語「ブラック」の大氾濫は、英語に堪能な寺島隆吉までにも「ブラック企業」という差別語を使わせてしまう場合があるのだ。この文脈では、鳥井一平(「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」)の記事で私が安心する理由は明白だろう。
■気がつけば「移民大国」
世界が「奴隷労働」とみる技能実習制度の虚構 「移民大国」日本・私の提言⑤
World Now
2020.12.20
鳥井一平氏=東京都台東区、織田一撮影
日本で働く外国人技能実習生は40万人を超え、外国人労働者の「主軸」となっている。長年にわたって「技能実習制度は人権侵害を生む」と廃止を訴えてきたNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表(67)は、「新型コロナウイルスで実習制度の虚構があらわになった」と指摘する。外国人労働者の受け入れはどうあるべきか、聞いた。
とりい・いっぺい 1953年大阪府生まれ。93年に「外国人春闘」を組織化。2005年、外国人技能実習生が時給300円で働かされている実態を告発し、支援活動を本格化。13年、アメリカ国務省より「奴隷労働根絶、人身売買と闘うヒーロー」に選ばれる。近著に「国家と移民 外国人労働者と日本の未来」。
――ここ数年急増していた技能実習生は昨年末に41万人971人に達しました。「地域に住む外国人で技能実習生が最も多い」という自治体は38道府県でした。
人手不足が続いているためだ。農業や水産業など一次産業の人手不足の背景には、産地の地方の過疎化や後継者不在といった構造的問題がある。景気が冷え込みでも技能実習生は減らないだろう。
――政府は昨春、外国人労働者の受け入れ拡大を目指して、新しい在留資格「特定技能」をつくりました。「人手不足対策」として打ち出したのに、受け入れ人数は約9000人にとどまっています。
特定技能の労働者を雇用する企業は、膨大な書類を用意しないといけない。中小零細企業はベトナムや中国で直接リクルートできるノウハウも力もない。「それなら、慣れた技能実習生でいいや」となっている。技能実習生として3年働いた外国人は、基本的には特定技能の在留資格が取得可能なので、企業側は「まずは実習生で受け入れよう」と考えている。いまの特定技能の労働者の8割が元実習生ということからも分かる。
――企業が積極的に活用している技能実習制度の何が問題なのでしょう?
技能実習制度の始まりは1990年に新設された在留資格「研修」。93年に1年間は研修生、1年間は技能実習生として日本に滞在できるように拡充され、その後、実習を2年に延長した。2009年の入管法改正で「技能実習」という独立した在留資格になり、本格的に技能実習生の受け入れにかじが切られ、飛躍的に増大した。
初めから「途上国の人材育成」という名目を使い労働者として働かせる狙いだった。多くの技能実習生は来日のために多額の借金を背負う。日本では原則、仕事場を替えることはできないので、どんなに劣悪な労働環境でも働き続けるしかない。そのうち善良な雇用主も「実習生には何をやってもいい」と変貌(へんぼう)し、賃金の未払い、パワハラ、セクハラ、といった悪質な事例が後を絶たなくなる。国際社会からも「奴隷労働」と批判される始末だ。
記者会見で過酷な労働環境を訴える外国人実習生たち=2019年、名古屋市
――「技能実習制度は日本産業を腐らせる」とも指摘されています。
技能実習生のなかには、単純作業を積み重ねるなかで、先輩の仕事をみてスキルアップする者もいる。会社にとっては手放したくない精鋭になるわけだが、多くは3年、長くても5年後には帰国する。そして、新人の技能実習生と入れ替わる。そのうち現場で技能を教える人がいなくなる。
技能実習制度は、事業を一時的に活性化させる「特効薬」にはなるが、産業の担い手づくりにはならない。
――新型コロナウイルスの感染拡大で人の移動が制限され、技能実習生が来日できない状態が続いています。
コロナ禍で技能実習制度の虚構がはっきりした。いま政府は実習生の職種の変更を認めている。「実習制度の目的は途上国への技術移転。それには、職場を固定し、職種も限定したほうが効率的だ」と主張してきたのにだ。帰国しようにもできない技能実習生の救済措置と言っているが、結果的に新たな実習生が来ずに困っている産業に移動してもらい、働いてもらっている。
こうなると、「技能実習生ってなんだろう?」となる。初めから、労働者として受け入れると明確にしている特定技能への試用期間、と言ったほうがまだ正直だ。
鳥井一平氏=東京都台東区、織田一撮影
――どのようにすべきでしょう?
日本のこれまでの外国人受け入れ政策は「場当たり」だった。1980年代の好景気の人手がほしいとき、正規の在留資格がない外国人の在留を容認。非正規在留者が約30万人まで増えると、「これはまずい」と、89年に入管法を改正して日系人が労働者として在留できるようにした。大勢の日系ブラジル人らか来日したが、リーマンショックで帰国させることにし、社会問題化した。そこで政府がひねり出したのが技能実習制度拡大だった。
早く技能実習制度をやめて、国が外国人の受け入れに責任を持つ「雇用許可制」に替えるべきだ。政府がハローワークを活用し、国内で労働者を求める企業と、送り出し国の政府機関を通じてマッチングし、外国人労働者の雇用を許可することになれば、人の移動の間に介在する中間搾取者を排除できる。実習生が多額の借金をするのも、送り出し機関や送り出し機関への紹介者など、多くの中間搾取者への支払いがあるからだ。
――人手不足でなければ外国人労働者を受け入れる必要はないんでしょうか。
私たちは「日本は外国人労働者を受け入れている国」と思っている。実は海外に永住したり長期滞在したりしている邦人は18年時点で140万人もいる。加えて、短期で海外に滞在する人がたくさんいる。当然、私たちが海外にいるとき、人権が守られ、労働環境が整っていることを望むだろう。同じ事を、この日本社会でも、国際的な人権、労働基準を担保しよう、ということだ。受け入れる、受け入れない、の議論に終始するのではなく、この社会を一緒に担う仲間をどうつくっていくのか、という発想に立った移民政策を練り上げる必要がある。外国人を労働力としか見ないで「共生」というのはごまかしだ。労働者と生活者を分けて考えるのは間違っている。
織田一
朝日新聞機動特派員