言の葉

気の赴くままに、ひたすら詩を綴っています。

σηπία

2020年06月11日 | Weblog

綺麗なものほど遠ざかる
だから いっそう美しくなる

物理的な破壊なんて
何の問題にもならないわ

夏が来るたびに思い出せるなら
ちっとも色褪せてなんかいない



笑う月

2020年03月04日 | Weblog

消え入りそうに 細い 月
夜空へと溶けちゃいそうね

そんな果敢ない気持ちを
あなたは笑って吹き飛ばした

「だって、ほら、月も笑ってるみたいだよ」



出さない手紙の行方

2020年02月02日 | Weblog

パスワードが要ると言いながら
本当は別の方法で解けるんだ

選択肢はひとつじゃない

昨夜したためた手紙を読み返し
泣く私の気持ちが分かるかしら



afterglow

2019年12月19日 | Weblog

心に溢れる愛の情に触れる

この幸せを知っている
ずっと前から知っていた

包容力のある あなたが
素直なあの子を愛さないわけがない

感受性の強い あの子が
繊細なあなたを愛さないわけがない

いつだって純粋無垢なまま
泣きそうなほど 直向きに
そこに愛は泳いでいたの

ただ優しいだけの愛の情が
存在することを教えてくれた



出流

2019年11月10日 | Weblog

こほこほと 細い背中が 小さく揺れる
あの日 あなたは限界を迎えていた

傷痕は遺らないと宣った彼は何処へ
癒えぬまま こほこほと零れる痛み

忘れられないものは忘れられない
叫べども届かずとも忘れられない

いずれ消えると言われても 今は静かに
こほこほと零れる痛みから漏れ出る



death of love

2019年10月17日 | Weblog

同じ単語でも
順序が違うと
センテンスの意味が変わる

あなたの伝えたいことを
正確に汲み取れているのかな

不意に不思議と怖くなった



徐々に消える

2019年10月14日 | Weblog

とろとろと流れていく 液体を見送って
何処から発せられたものかと 想いを寄せる

いつか来た道 いずれ行く道
泣き声も弱さも ちゃんと あるよ

徐々に消える 爪痕に
明日を迎える約束を
無理やりにでも口にする



dukkha

2019年09月19日 | Weblog

知らないものを知る 喜び
知りたくないものを知る 悲しみ
共存しつつ排他的な 不思議な世界

いつだって心は自由なはずなのに
この身あるが故 地上に縛られ
この世は思い通りにならないことだらけだ
いつしか心さえをも制圧されていく

目を開けているだけで飛び込んでくる
日々アップデート中の情報の波が
否が応にも脳内を旋回していくんだ

掻き乱された後に残るものは結局むなしい



臍を噬む

2019年08月26日 | Weblog

あなたを私だけのものにしたくて
吐いた嘘は 数知れず

幾重にも積んで 重ねて
いつか真実になることを夢見て
ぐらぐらと揺れて 崩れて
壊れた破片を拾い集めて
パズルみたいにピースあわせて

元に還ることはないと分かっていても
いつか真実になることを夢見て

あなたからすれば私は
ひどく滑稽だったことでしょう



雑音

2019年07月24日 | Weblog

遠ざかる雨の音 おいかけて
雲が真っ青な海を走っていくよ
とうに大気は変わっちゃっているのに

待って待って おいて いかないで

知らないことはなくならないよ
知りたくないことが増えていくよ
とうにキャパシティは超えているのに

待って待って なにも いわないで


今日は眠ったほうが いいのかな
そうしたら何も考えずに いられるね