一段と厳しい状況に突入した韓国経済「それでも大統領に打つ手なし」                

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韓国経済が一段と厳しい状況に突入している。

1~3月期の実質GDP成長率は前期比でマイナス0.3%だった。

韓国銀行(中央銀行)は本年のGDP成長率を2.5%と予想しているが、達成はかなり難しいだろう。

特に、韓国の経済成長を支えてきた財閥企業の経営が限界に直面していることは見逃せない。

韓国経済の停滞懸念の上昇は、政治にとっても大きな問題だ。

社会心理学的にみると、韓国では様々なことに対する“怨み”のような感情が非常に強い。

文大統領は世論に配慮して、耳触りの良い主張を続けてきたが、それも限界だ。

韓国の政治と経済の不安定感が高まることは、国際社会にとっても無視できないリスク要因である。

 急速に勢いを失う韓国経済

韓国経済は、急速に成長の勢いを失ってしまった。

イメージとしては、推進力を失ったグライダーが、地上に向かって急降下する状況が思い当たる。

1~3月期の成長率が前期比でマイナスに陥った理由には、中国経済の減速の影響が大きいとの見方が多い。

最大の輸出先である中国の景気減速が、韓国経済の成長率を直撃したことは明らかだ。

加えて、韓国国内でも大きな問題が顕在化した。

経済を支えてきた財閥企業の“世襲経営”が限界を迎えたのである。

大韓航空を運営する韓進、アシアナ航空を持つ錦湖アシアナは、創業家の利得を追求しすぎ、経営が悪化した。

錦湖グループは資金繰りが行き詰り、中核のエアラインビジネス売却を決定した。

事実上、錦湖グループは崩壊に向かっている。

世襲経営の下、韓国の財閥企業は資本家や、消費者、地域社会などの利害関係者と良好な関係を、長期の目線で築くことができなかった。

製品開発などに関しても、創業家出身の経営者の意向がかなり影響してきたようだ。

サムスン電子が発表した折り畳み型スマートフォン、“ギャラクシー・フォールド”、の不具合が頻発したのは、その一端の表れだろう。

加えて、かつて現代財閥に属していた現代自動車は、環境の変化に適応できていない。

同社は、過去の成功体験に浸り、電動(EV)化などへの対応が遅れた。

同社では、労組によるストライキや賃上げ要求も経営を圧迫している。

輸出競争力を高め創業家の利得拡大を重視してきた財閥企業の経営風土は、韓国経済にとってマイナスの要因と化しつつある。

漂流する韓国の政治と経済

本来であれば、韓国は、財閥企業の経営にメスを入れ、コーポレートガバナンスの改革を進めなければならなかった。

表向き、文大統領もその認識を示してはいる。

しかし、実際に韓国が財閥改革に着手することは困難だ。

なぜなら、韓国経済は財閥企業による寡占状態にある。

財閥改革が進めば、雇用や所得が減少するなど、一時的な“痛み”は避けられない。

実際にそうした状況が発生すると、自動車産業界を中心に労働組合が政府と経営者を批判し、さらなる賃上げなどを求める可能性が高い。

同時に、財閥企業に属していない就業者は、経済格差の拡大を不安し、政権批判を強める。

景気減速は世論の“怨み”の感情に波及し、政治不安が更に高まるだろう。

文政権がこの状況に耐えられるとは思えない。

文政権は緊急の経済対策を発動しようとしている。

ただ、経済成長のエンジンである財閥企業の経営が限界を迎える中、対策が持続的な景気の持ち直しにつながるとは考えづらい。

文大統領にとって重要な支持基盤である労組も、大統領への信頼を失っている。

文政権はますます“レームダック化”する恐れが高まっている。

韓国の政治と経済は、まさに漂流しつつあるというにふさわしい。

韓国の政治・経済の不安定化は、国際社会にとって無視できないリスク要因だ。

北朝鮮との融和を重視する文大統領の政治運営が行き詰まる中、北朝鮮は我が物顔で体制維持のための時間稼ぎに取り組んでいる。

米朝の交渉は一段と難航するだろう。