さすらいの青春(442)
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
———————【442】————————————
Elle pronoçait chaque mot d'un ton uni-
forme, en appuyant de la même façon sur
chacun, mais en disant plus doucement le
dernier... Ensuite elle reprenait son visage .
immobile, sa bouche un peu mordue, et
ses yeux bleus regardaient fixement au loin.
« Je ne sais pas non plus votre nom » ,
répondit Meaulnes,
..————————(訳)—————————————
彼女は1つ1つの語を、どれにも同じように
力を入れて一本調子で発音していたが、最後の
語、「どちら様?」だけは和らげた.それから
彼女はまた無表情の不動の顔に戻っていた.わ
ずかに唇を噛んで、青い目でじっと遠くを見つ
めていた.
モーヌは、「ぼくもあなたの名前は知らないの
です.」と返答した.
————————《語句》————————————
pronoçait:(直半過/3単) < prononcer (他) 発音する
chaque mot:それぞれの語を
d'un ton ~: ~の口調で、~の調子で
uniforme:(形) ❶同じ形の、そろいの、
❷変化のない、単調な.
d'un ton uniforme:一本調子で
en appuyant sur ~:~を強調しながら;
appuyer:(自/他) もたせかける;【ここでは(自】
appuyer sur ~ / ~を強調する
de la même façon:同じやりかたで
sur chacun:どれにも
en disant ~:~と言いながら
plus doucement:より静かに
le dernier:le dernier mot のこと、つまり前回の段落
qui vous êtes (どなたなの?)を静かに言った.
試験問題ではないので、四角四面に解釈せず、
彼女は会話の終わりの頃には静かな柔らかい
口調になっていたとしてもいいと思います.
reprenait:(直半過/3単)
reprendre:(他) 取り戻す、回復する
visage:(m) 顔 .
immobile:[イモビル](形) 動かない、不動の
visage immobile:不動の顔
reprendre visage immobile:もとの不動の顔に戻る
sa bouche un peu mordue:唇を少し噛んで
直訳すると「口が少し噛まれる状態で」
sa bouche という名詞が文中遊離しているが
使役動詞の現在分詞を補って読みます.
ごてごてしたものは削ぎ落すのが仏文学の
ようです.
ses yeux bleus:彼女の青い2つの目が
regardaient:見つめた (直半過/3複) < regarder
fixement:(副) じっと;regarder qc/qn fixement
qc/qn をじっと見つめる.
au loin:遠くに; partir au loin / 遠くへ行く
de loin:遠くから:Ce clocher s'aperçoit de loin.
この鐘楼は遠くから見える.
Je ne sais pas non plus votre nom:
「ぼくだってあなたの名前を知りません.」
non plus は「~もまた…でない」で、non は
plus que vous ne savez pas mon nom のこと.
これ全体をnon と言っています.
répondit Meaulnes: (倒置形) 引用句のあとは
倒置形にするのが普通.なぜ倒置する
のか?—おそらく引用句全体を「みな
し主語」と考え、
< 引用句 + 倒置引導文 >
( S + V + 主題文末遊離 )
で1つの文的なものを仕立て上げている
のでしょう.