源氏物語と共に

源氏物語関連

女三宮

2008-05-17 11:08:11 | 登場人物

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先日、源氏講座で鈴虫が終わりました。


柏木・横笛・鈴虫と、若菜の後の「あはれ衛門のかみ」の終焉でした。


この3巻は、結構良かった♪いうのが感想です。


原文は全部は理解できないし、まだ読解もちゃんと出来ませんが、
やはり口語訳や今までのイメージとはかなり違った解釈を感じました。


というのは、原文はご存知の通り紫式部の伏線が沢山散りばめられています。


今回私がはじめて知った事は、若菜の女楽の頃から
琴(きん)の琴をひく女三宮と紫の上の立場が逆転した、
つまり光源氏の愛情が若い女三宮へ移ったという事です。


この事は先日の寂聴さんもTVで言っておられました。
私は、紫の上に対する愛情は絶対!と思っていましたので、
これは原文を読んでわかるショックな事でした。


だから若菜の女楽の後に、
女三宮の所へ琴のご褒美をと行き、源氏は泊まってしまう場面で
一人残された紫の上の独白「あぢきなきもの」が更に身に沁むように思います。


幼いとばかり思っていた女三宮も次第に若い盛りの美しさになっていく。
それだけに、光源氏は裏切られた事に対してよけいに怒ったのかもしれません。


漫画「あさきゆめみし」の女三宮なんて何となく感情も持たず、ただぼ~として
柏木もあまり好きじゃない人かと思っていたのですが、
実際には、いやいやながら柏木に返歌した和歌は激しい愛を感じるものでした。


<柏木> 今はとて燃えむ煙(けぶり)もむすぼほれ
          絶えぬ思ひのなほや残らむ
 


(小侍従)「なほこの御返り。まことにこれをとじめにもこそはべれ」
                           (最後)


(女三宮)「われもけふ(今日)かあす(明日)かのここちして、もの心細ければ、
   おほかたのあはればかりは思ひ知らるれど、いと心浮ことと思ひ懲りにしかば、
   いみじうなむつつましき」とて、さらに書いたまはず。


  御心本性の強くづしやかなるにはあらねど、はづかしげなる人の御けしきの、
  をりをりにまほならぬが、いと恐ろしうわびしきなるべし。

されど御硯などまかなひて責めきこゆれば、しぶしぶに書いたまふ。


<女三宮> 心苦しう聞きながら、いかでかは。ただおしはかり。残らむとあるは、
  
     立ち添ひて消えやなまし憂きことを
       思ひ乱るる煙(けぶり)くらべに    後れるべうやは   (柏木)


小侍従が柏木の最後の歌になるかもしれないというのに、
女三宮は返歌をしぶります。
自分も死んでしまいそうで心細い。
あはれは思うけれど、柏木の件で懲りたので返歌はつつしみたいと。
それは、あの光源氏を恐れてのことです。
小侍従に責められてしぶしぶ書いた和歌は、
私も一緒に消えてしまいたい。あなたに後れるものですか!と
強い意志を感じさせるものでした。


この歌をどう解釈するかで女三宮の印象は違ってきます。


実は女三宮の心理は昔からよく判りませんでした。


まずこの人の登場は若菜の巻で朱雀院の娘として語られ、
その後光源氏に降嫁するも、ただ幼すぎて光源氏は失望。
紫の上への愛情は安泰。



悲劇は桜の時の蹴鞠で猫が御簾を引き上げて
柏木に姿を見られた所からはじまります。


紫式部は夕暮れだからはっきりと見えない所が
かえって気高くみえてと、女三宮の欠点を隠し
柏木を狂ったように虜にしてしまうのでした。


そして紫の上が病気になり、六条院は人の気配が少なくなった折に
柏木との出来事が起こってしまいます。


ここでも女三宮は
やはやはとしていう表現でただ会うだけだった柏木の心を乱して手折られました。


そして妊娠。


後に冷静になった柏木が、女三宮は夕霧のいうようにしっとりとしたたしなみがないと
感じさせるのですが、あくまでも柏木は女三宮を愛します。


逢瀬もいやいやながら逢っていた女三宮が一体いつから柏木を好きになったのでしょう?


私はこの心理がちょっとわかりにくいのです。


でも、送られた返歌は柏木にとって嬉しい言葉でした。


もったいないお言葉と思い、いよいよ最後に鳥の足跡のような字で休み休み歌を詠みます
  <柏木> 行方なき空の煙となりぬとも
           思ふあたりを立ちはなれじ


この2人のやりとりは、
後に「橋姫」で弁という女房が持っていた袋によって
宇治で薫はその事実を知ることになります。


紫式部の構想がちゃんとあったのですね。


事実を知ってその事を問いただそうと薫が母の所へ行くと
女三宮は若やかな様子で経をよんでおり、恥らった。
その無心な様子にとても聞けないと薫は思ったとありました。


光源氏亡き後も相変わらず若い女三宮です。


鈴虫の巻では、女三宮の持仏供養で大勢の女房達に圧倒され、
うつぶせになっているところが、大変小さくて可愛いとありました。


それでも、女三宮は成長していきます。
未練たっぷりの源氏に対して、同じ蓮の台にはたてませんと拒否してみたり、
逆に光源氏に飽きられたが、里近くに住む鈴虫に少し未練があるといってみたり、
光源氏の援助に感謝をしながら、生きていきます。


朱雀院の皇女として生まれ、光源氏に降嫁しながらも柏木の子供を生み
若くして出家した女三宮。


子供薫の成長を楽しみにしたかどうかは乳母がいた時代ゆえにわかりませんが、
光源氏からの自立で自分なりに居場所を見つけた事と思います。


余談ながら、在原業平の母も業平を生んだ時は出家していたと教えてもらいました。


そうすると、薫は業平なのでしょうか。


十五夜の鈴虫の宴で管弦の上手だった亡き柏木を思い涙する光源氏と
御簾のうちにいてその様子を聞く女三宮。


趣深いものがあります。


「あはれ衛門のかみ」
柏木・横笛・鈴虫と、
新しい世代の匂宮や薫の子供時代をさりげなく描きながら、
いよいよ光源氏の世界が終わりに近づくような感じもさせながら
鈴虫の鳴くしみじみした秋でこの一連の話が終わりました♪


コメント
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