(割り込み)
今日、久しぶりに故郷に帰ってきた。
たいした理由ではない。他の地域に遅れること一週間、わが故郷で行われる成人式に出席するためだ。
子供と大人を分けるイニシエーションとはいえ昨日と明日でなにが変わるわけでもなく、わざわざ長い時間をかけ帰省してまで参加する必要はなかったのだが、なんというか、気まぐれを起したのだ。
正月に帰省しなかったこともある。
兎にも角にも、久しぶりの故郷である。
ただ、金、土、日の三日での強行軍でほとほと疲れていたため、目の前の人ごみに割って入るだけの元気があるわけもなく。
少しはなれたガードレールに寄りかかり、なんともなしに人の群れを眺めていた。
小学校6年生時分に引越し、中高と他県の私立だったため、地元に知り合いはほとんどいない。
仲の良かった友達がいるにはいるが、高校のとき携帯を持っていなかったため高校を卒業した後は連絡を取り合うこともなくなっていた。
というわけで、ひとり寂しくたそがれていたのだが。
不意に、肩がたたかれた。
驚いて振り返ると、そこにはその数少ないはずの友達がいた。
どうやらその友達も似たようなもので、ひとりだったらしい。で、私は幸運にも見つけてもらえたようだ。
話は盛り上がり、一時間半のつつましい式が終わった後も場所をファーストフードの店に移して駄弁ることになった。
自分の現状や、相手の現状。
高校を卒業してから今までを互いに話し合った。
そして。
話がひと段落してそろそろ帰ろうかとなったとき、店の外に流れる川の水面がきらりと光るのが見えた。
そこでふと、この前の夜の探検を思い出した。
あの約束を。
だけどなんだか気恥ずかしかったから、まるでたった今思いついたように言ってみた。
今夜、星を見に行こう。
・
・
・
あれが、ベテルギウス、シリウス、プロキオン。
そういって指差した先は冬の大三角。
地面にシートを引き寝転がって、星を見上げる。
高校のときから星座が大好きだった友達は得意げに説明してくれた。
その顔はとても楽しそうで、その声はとても懐かしく。
満天の星空に抱かれて、ゆっくりと目を閉じる。
我が故郷にもこんな素晴らしい空があったなんて。
私のすぐそばには私の知らない、気付かない世界が存在している。
そして思った。
ああ。悪くない。
こんな世界も、悪くない。
(この物語は半分ほどフィクションです)
今日、久しぶりに故郷に帰ってきた。
たいした理由ではない。他の地域に遅れること一週間、わが故郷で行われる成人式に出席するためだ。
子供と大人を分けるイニシエーションとはいえ昨日と明日でなにが変わるわけでもなく、わざわざ長い時間をかけ帰省してまで参加する必要はなかったのだが、なんというか、気まぐれを起したのだ。
正月に帰省しなかったこともある。
兎にも角にも、久しぶりの故郷である。
ただ、金、土、日の三日での強行軍でほとほと疲れていたため、目の前の人ごみに割って入るだけの元気があるわけもなく。
少しはなれたガードレールに寄りかかり、なんともなしに人の群れを眺めていた。
小学校6年生時分に引越し、中高と他県の私立だったため、地元に知り合いはほとんどいない。
仲の良かった友達がいるにはいるが、高校のとき携帯を持っていなかったため高校を卒業した後は連絡を取り合うこともなくなっていた。
というわけで、ひとり寂しくたそがれていたのだが。
不意に、肩がたたかれた。
驚いて振り返ると、そこにはその数少ないはずの友達がいた。
どうやらその友達も似たようなもので、ひとりだったらしい。で、私は幸運にも見つけてもらえたようだ。
話は盛り上がり、一時間半のつつましい式が終わった後も場所をファーストフードの店に移して駄弁ることになった。
自分の現状や、相手の現状。
高校を卒業してから今までを互いに話し合った。
そして。
話がひと段落してそろそろ帰ろうかとなったとき、店の外に流れる川の水面がきらりと光るのが見えた。
そこでふと、この前の夜の探検を思い出した。
あの約束を。
だけどなんだか気恥ずかしかったから、まるでたった今思いついたように言ってみた。
今夜、星を見に行こう。
・
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あれが、ベテルギウス、シリウス、プロキオン。
そういって指差した先は冬の大三角。
地面にシートを引き寝転がって、星を見上げる。
高校のときから星座が大好きだった友達は得意げに説明してくれた。
その顔はとても楽しそうで、その声はとても懐かしく。
満天の星空に抱かれて、ゆっくりと目を閉じる。
我が故郷にもこんな素晴らしい空があったなんて。
私のすぐそばには私の知らない、気付かない世界が存在している。
そして思った。
ああ。悪くない。
こんな世界も、悪くない。
(この物語は半分ほどフィクションです)