芥川龍之介全集第10巻は、書簡である。学生時代から海軍機関学校の英語教員になっている頃までを読んでいる。
芥川が出した書簡がたくさん残っているが、後世いろいろな人に読まれてしまうことになるとは、芥川も予想していなかっただろう。
芥川は政治や社会について考えることはなかった人である。書簡にそうしたことが全くと言ってよいほど書かれていない。小説などの作品にもそれは表れている。
岩波文庫の『芥川追想』のなかには海軍機関学校の教員時代の戦争観を、芥川の教えを受けた元軍人が書いている。政治社会についての芥川の考えはそれくらいだ。
書簡で興味深いのは、いずれ奥さんとなる文さん宛のものだ。芥川の純粋な気持ちがあふれている。芥川は、こころのきれいな人であったことがよくわかる。
芥川を、芥川の生きた時代のなかに捉えることはできるだろうか。なかなか難しい。「芥川龍之介とその時代」というテーマで語ることはムリではないかと思わざるを得ない。
とにかく、全巻読みとおすつもりだ。
今日、ジョン・ダワーの『アメリカ 暴力の世紀』(岩波書店)を読み終えた。その感想はいずれ書く。
芥川と並行して、雑多な本を読んでいる。すべてについて感想を書くことはしないが、本を読むことはみずからの思考を鍛える。