いくつかの仕事を完成して送った。しばらく自由な時間がある。忙しいと日常が乱される。昨日から、ゆるりとした日々だ。
ボクはチャイコフスキーの曲が好きだ。しかし、ロシアのウクライナ侵攻から、どうも聴く気になれなかった。
今日から、奈倉有里の『夕暮れに夜明けの歌を』(イースト・プレス)を読みはじめた。すでに買ってあった本で、次に読む本としていつも机の上にあった。しかし、次々と定期購読している雑誌が届き、それを読むのでなかなか読む順番が来なかった。
奈倉さんはロシア文学者といえばよいのか。この本には、彼女がロシア留学した頃のことが書かれている。
よい本だと感じる。行間がひろくゆったりしている。字を追っていくという読み方ではなく、文章を味わいながら読み進むという本。おそらくその背後には、ロシア文学の世界があるのだろう。ドストエフスキーは、ボクがもっとも影響を受けた作家だ。ロシア文学の世界は、ひろく深く、そして複雑だ。一筋縄では理解できない人生が書き込まれている。人間ひとりひとりの生だって、一筋縄ではいかないし、複雑で、単純で、難解だ。
54頁に、ロシアのロック歌手の歌詞があった。
幾百年の世紀をまたぎ 悪がはびころうとも
空がふたたび 煙で覆われようとも
それでもこの世界の生は 死より少しだけ多い
そしてこの世界の光は 闇より少しだけ多い・・・
ボクは、この詞にいたく感動した。
最近、政治や社会に絶望的になっているが、光が闇より少しだけ多い、ということばに、なぜか希望を感じた。
ことばは、ちからを持っているんだ。