全教員にデジタル指導力 政府目標、専門家9000人派遣
政府はデジタル活用の能力を備えた小中高校の教員育成に乗り出す。授業でのICT(情報通信技術)活用法を各教科で示すとともに、来年度からICT関連企業OBらを学校に最大9千人派遣。将来は全教員が遠隔授業などを実施できるようにする。新型コロナウイルスの感染拡大も視野に入れ、世界的にみて大きく出遅れている指導力の底上げを急ぐ。
この政策笑ってしまう。すでにずっと前から、学校では「情報」という科目があるが、しかしどの学校にも情報を教えられる教員は配置されていない。文科省や自治体は公務員を増やしたくないので、文科省が「情報」という科目を設置せよと言われても、その対応はきわめておざなりだ。「やっています」というフリをするだけだ。
そしてこの記事に書かれていることは、経団連が提言していることである。要するに、就職したら即戦力として即座に労働力になるように学校で育成しなさい、ということだ。学校を職業訓練所にしたいという経済界の要求がストレートに教育政策に反映される。
人間の生活は労働生活だけではないのに、人間を労働力としてしかみない経済界の視野の狭さが日本の教育を破壊してきた。新自由主義が蔓延する中で、それがさらに強化されている。一貫して経済界の要求に従って教育政策を展開してきた文科省は、その要求に応えようとする。しかし子どもたちの教育にカネをつかいたくない政府は、かたちだけの対応で終わることだろう。
第一に学校現場には余裕はない。どこの学校をみても正教員は減らされ、一学級あたりの子どもの数は多く、コロナ禍の下で、ただでさえ多忙化が指摘されているのに教員の仕事は増えている。私学では非正規の教員によって多くの授業が担われている。教員はすでにブラック職業とみなされ、教員志望者は減っている。カネも出さず、教員も増やさず、次から次へとこうした経済界の要求をストレートに学校に接続させていれば、学校教育は崩壊していくことだろう。
この施策も、教員をより多忙化させるだけで終わることだろう。経済界は、教育現場の惨状を先ず見つめることからはじめるべきだ。とにかく教員を増やし、正教員を増やせ。そこからしか、教育の質の改善は始まらない。