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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

祈り

2015-05-08 21:27:45 | 日記
 「検査したら癌だったの」と、Kさんはいう、「肝臓にも転移したみたい」と畳みかけるように語る。Kさんの夫はまだ50代だ。

 Kさんの夫は、東日本大震災の直後、仮設住宅建設のために宮城県に行っていた。数ヶ月間そこで過ごしたが、帰ってきたときにおかしな灼け方をしていたという。その後、顔の皮膚がボロボロと落ちてきた、と。

 ボクは、被曝したのではないかと思い、そう伝えた。
 Kさんは「そうかもしれない」と言う。Kさんの夫の家系には、癌で亡くなった人はいないそうだ。

 福島原発事故により放射能がまき散らされ、今もなお放射能は出続けているというが、もはや事故は過去のことであるかのようだ。しかし、ひょっとしたら、じわじわと人々の体を蝕んでいるのではないか。

 東日本大震災では特に津波により多くの人が亡くなられた。突然いなくなった人々だからこそ、遺族は今も忘れられずに、祈り続けている。

 しかし、原発がまき散らす放射能が、人々の健康を蝕み、癌を発症させているかもしれない。福島県の子どもたちに甲状腺癌やその異常が増えていることが伝えられるが、それとて「因果関係はない」と、「識者」はいう。

 ボクたちは、そうではないことを、そうならないことを、祈り続けることしかできないのだろうか。

 Kさんの夫の手術は、来週だ。

2015-05-08 09:04:48 | その他
 何ものをも映さない眼から、涙があふれる。生まれてから長い間、彼はどのくらいの涙を流してきたことだろう。

 彼は、沖縄で生まれた。

 沖縄、強い太陽の光がさんさんと降り注ぐ、透き通った碧い海が続く、そして風がサトウキビ畑を自由に飛び回る、そこで彼は生まれた。

 沖縄、そこは激しい戦闘が行われ、たくさんの血が流され、沖縄の大地はそれを吸った。その後、たくさんの雨が降り、血を洗い流した。また太陽の光と、海と、風が自由に交錯する場となると誰もが思った。

 だが、そこは耳をつんざく爆音が響きわたる場となった。人を殺すことをなりわいとする異国の人々がそこで訓練を始めた。

 その中の一人が、沖縄の一人の女性と結ばれ、彼が生まれた。幸せがおそらく包んだ。だが彼は助産婦の不注意から失明してしまう。そして両親の離婚と母の再婚。彼は祖母の家で育った。貧しい生活だった。祖母は、しかし病気で亡くなってしまう。彼は置き去りにされた。

 孤独が彼を襲った。彼を孤独に追いやった両親、助産婦、そして異国の父をこの地に運んできた戦争を憎んだ。

 ある日彼は、ラジオで賛美歌を聴く。その賛美歌にうながされるままに、教会に。そこで彼は牧師に語った、「大人になったら、アメリカへ行って父を殺すのだ」。

 牧師は、無言で彼を抱きしめ、涙を流す。「ボクのために泣いてくれる人がいる」。
 牧師は彼を引き取り、東京の大学の神学部に進学。大学を卒業後、彼は歌手の道を歩むことになる。27歳の時だった。

 そして今は、平和を歌う。新垣勉さんだ。

 今日の『中日新聞』の特報欄は、新垣勉さんのこと。「憎しみを感謝に変えて 平和の思い歌い続ける」である。

 ボクらは、彼の人生からいろいろなことを学ぶことができる。そして彼がどれほどの涙を流し続けたか、それを想像する。

 同時に、その涙を受け止めた人々の存在。牧師さん、あるいは「あなたの声は、ラテン系、神様からの贈り物ですよ」とおしえてくれた人・・・・・

 https://www.youtube.com/watch?v=7W2TqngdoQ8

 彼の生き方を知るとき、ボクらの目にも涙が湧き上がる。人間の善意、人間の努力に感動し、そして平和を希求する涙だ。